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ファンタシースター計画07

 やつの部屋の時計は、少々特殊で、なんでも『乾電池』ってのじゃないと駄目らしい。
 古典力学、量子力学、そして現代のフォトン理論からすれば、概ね古典力学の世界の概念で設計された蓄電池をさすらしい。そんなもんを使わないといけないなんて、信仰心ってのは日々試されるもんなんだな。アタシはめんどくさくてやってられないよ。

 で、仕方なくアタシは夜道を買ったバイクで走り出してるわけ。19の夜に。
 わざわざ電池やらを買うために、古物店に行くわけさ。
 後ろには、これまた信仰上の理由でバイクに乗るときに着なければならないとかいう古臭い革ジャケットをきた魔女っ子が、アタシにぎゅっとひっついてる。

「――ねぇ、あんたの戒律集とか見せてくれない?」

 ヘルメットのマイクで話しかける。少々風の音で聞こえにくいだろうけれど、まあ、それがいいんだよ、バイクってのはさ。

「それはできない。奥義書だから」

 奥義? なんぞそれ? ほんとこいつわけわかんねーな。結構一緒にいるけど、ぜんぜん理解できません。

「あんたも大変だね。お布施とかあるの?」
「ある。貧困をなくす、病気を治す、平和に生きて、燃えるように愛して、電話の料金をさげるために、わたしはお金を使う」

 電話ってのは分からないけど、それ以外はまぁ、なんとなく分からないでもない。
 でもアンタ、燃えるように愛してってなに?

「じゃ、燃えるように愛さないとね」
「もう愛してる」

 アタシはヘルメットの中で噴出す。ないない。それだけは、ないって。

「マジ? 誰を?」
「この宇宙を。わたしは、宇宙を分かってあげたい」

 ……まぁ、アタシは信仰についてとやかく言わないよ。アンタがそれで心の平安だかなんだかを得られてるなら、それでいいよ。

2 
 目当てのモノを買って、夕焼けの空の下を駆け抜け……夕焼け?
 それ、おかしいだろ。
 アタシらさっきまで夜中の峠道を走ってたんだけど?

――ARKS各員は至急救援に向かってください

 そういう通知があちこちの電子掲示板に流れてる。どういうことだ?
 やたら街中が赤いのはエマージェンシ・レッドってことか?
 くそっ。こんな山間の峠道じゃ、どのくらい危険なのかわかんないじゃないか。避難勧告とかそういうのはどうなってんだ?

 とりあえず、アタシはバイクを止める。それから携帯端末で情報を確認する。
 居住艦が襲われてる?
 それかなりまずいだろ。っていうか、防空艦隊は何を……そうか、訊けばいいだけだ。
 アタシは思い付きのままに、キァハ准将にダイレクトコールする。
 しばらく呼び出し音がなった後、通信は途絶した。

「どうなってんの?」

 端末が壊れたのかとおもって、自分のをまじまじとみる。

「船団間の連絡が緊急遮断されただけ」

 魔女っ子が革ジャンを脱ぎながら説明してくれた。

「遮断? なんでだよ? このままじゃアタシらだって、テレポータで飛べないじゃないか」
「逆のほうが重要。侵入者がテレポータを用いて拡散するほうが脅威」

 そうか。そういう考え方もあるよな。

「じゃ、どうやったら救援にいけるんだよ?」
「いくの?」

 ……たしかに行かなきゃいけないってわけじゃない。これすら自由裁量だ。そういうのがARKSだし、べつに市民が死のうと眉一つ動かさず、別の任務をこなしたり昼寝したりだってできる。

「いく。ダーカーの襲撃なら、アタシは暴れたい」

 言っちまった。
 アタシはほんとにそう思ってるのか?
 今までのアタシの記憶なんてウソなんだから、アタシがアタシとして判断してるなんてとても信じられない。
 だけど。
 戦ってれば、とりあえず余計なことは考えなくていいはずだ。

「そう。でも、シャトル発進口は遠いけど」

 そういやぁ、そうだった。

「船内のテレポーターは使えるのか?」
「問題ない。船外リンクが途絶しただけ」

 冷静な分析ありがとよ、魔女っ子。
 ってことは、バイクをここにおいて、テレパイプ経由で市街地に行くべきなのか?
 だとしたら、このバイクどうすんの。
 へたしたら盗まれる……もしくは通りすがりのダーカーなんかに壊されるかも。
 ダーカーに壊されたら保険おりるのか?
 いや、戦争、大規模災害なんかだと保険屋は支払わないぞと訊いたことが……
 なんてこった!
 アタシはどっかの誰かが死にかけてるのに、高い金だして買ったバイクのほうが心配だ。
 いよいよ筋金入りのARKSになっちまったよ。
 じゃ、今回はごめんなさいってことで……
 ?
 アタシは異様にでかい昆虫の影が走った気がした。
 いや、気のせいじゃない。
 あれは、ダガンじゃないか?

「おい、魔女っ子、あれ」

 どうこう言う前に、魔女っ子が素手でゾンデをぶっ放す。雷光が、ダガンを焼いた。
 アタシもコードを送信し、もらい物のブラオレットを転送し、固くにぎる。

「おいおいおい。どうなって――」

 そして、耳を押さえたくなるようなサイレンがドーム一杯に響く。

――緊急警報。本艦はダーカーに侵入されました。速やかにお近くのシェルターに退避してください

 そんなような適当すぎる勧告が繰り返される。
 実際、この艦の自治政府はこういう事態を予想していなかったんだろう。とってつけたような対応で、正直悪寒がする。
 おいおい、ってことは同時襲撃か? これはまずいぞ。
 するとどうだろう。ふもとの街並みから黒煙が上がってる。
 もう市街地で戦闘が始まったのか? 市街地で遊んでたARKSが交戦開始したのか、ダーカーのくそどもが適当に暴れてるのか……。

「魔女っ子。あんたの判断は?」
「人助けはしなくていいの?」

 魔女っ子が、山間から見える都市のきらめきに生じた火柱や煙を見ていった。
 オーケー。そういう判断か。
 いいだろう。理由もなく人助けしてやろうじゃないか。

「よし、市街地救援に向かう」
「バイク壊れるかも」
 言うなよ。諦めきれるか自信ないんだから。


 市街地というより、元市街地といったさまにアタシは唖然とする。
 人の死体は見慣れたもんだけど、今回は無抵抗の民間人だ。心が凍る。
 そして、そんな死体をオモチャにするかのようにバラしてるダガンの群れ。
 最高じゃん。

「殺すために生きる。殺すために生きる。殺すために生きる」

 アタシは生きる意味を自分に言い聞かせる。
 よし。落着いた。これでアタシはダーカーをいたぶって殺せる。
 ビルの向こうやら、どっか反対の通りから散発的な戦闘音が聞こえる。
 アタシは、ブラオレットを射撃モードにして早速、撃たせてもらう。

「とりあえず、敵を殺す。それでいい?」

 アタシはさっさと駆け出して、群れの中につっこんでぶった切る感触を確かめる。
 よし、アタシはいける。

「あなたがそういうなら」と魔女っ子が同意してくれる。

 いいじゃんいいじゃん。じゃ、遠慮なくいく。
 踊るように自然体で殺す。
 考えるな、殺せ。
 これがアタシの鉄則だ。
 数を数えるのではなく、確実に斬り殺したか、撃ち殺したかをしっかりと確認する。
 アタシの記憶に焼き付けるんだ。戦い、そして勝っているという実感を。
 汗が、全身を濡らす。
 素敵。たぶん、アタシぬれてる。いろんな意味で。
 

 アタシらがちょっとした大物のブリアーダとやり合ってると、どっかのハンターが手を貸してくれた。
 男。真っ赤な服を着た先輩風吹かせてそうなやつ。

「よぉ。お前さんたち精が出るね」

 赤服が爽やかに声をかけてくる。そういう状況じゃないっての。

「ちょっと、ゼノ。おいていかないでよ!」

 よく分からんツンツンした女が文句を言ってる。
 なんじゃこのコンビは? ここはデートするには少々危険だけど。

「挨拶はいい! さっさと手を貸せ!」

 アタシは友だち以上恋人未満オーラをだしてるペアにいらだつ。
 なぜなら、アタシは結構派手に切り付けられたり殴られたりで……。
 つまり血まみれなんだよ! 遊びじゃねえんだこの野郎!
 そう心の中で叫びつつ、ブリアーダのデカブツの急所である、背部に深く刀身を刺す。
 いいぞ、いいぞ、いいぞ! そうやって悶える姿はキュートだ!

「やっべ。猫目の姉ちゃんがぶち切れてるぜ?」
「ゼノがなんか言ったんでしょ? あたし知らないわよ!」

 そしてやっとこさ赤服の兄ちゃんが大剣を大振りして、ブリアーダの胴体を潰してくれる。
 つんつん娘のほうは、ありがたいことにアタシにレスタをかけてくれる。おかげで失血死しそうだった傷口が急速に活性化したナノマシンで縫合されていく。それはそれで激痛だけどな。
 魔女っ子はアタシの回復なんか無視して、ブリアーダが卵をぶちまけたところから孵化したエル・ダガンどもを凍らせたり焼いたりと大忙しのようだ。

「姉さん! いっちょ連携といきますか!」

 赤服が調子に乗ってやがる。腕は認めるけど――

「アタシはあんたの姉さんじゃねぇ」
「わぉ。俺、クールな姉御に惚れやすいんですけど」

 テメェなんかに惚れられても困るっての。

「ちょっとゼノ! それってどういう……きゃあ!」

 きゃあとか何とか言って、つんつん娘がエル・ダガンに斬りつけられてる。

「エコー!」

 赤服があわてて助けにもどる。
 ファック! アタシひとりでデカブツ相手かよ!

「魔女っ子! なんとか援護しろ!」
「むり。信仰上の理由」
「ウソ!?」
「冗談」

 魔女っ子はでっかい炎のカタマリを大量に撃ち込んでくれる。
 ありがたい。敵はビクンビクンしながら燃えてるぜ。
 だけどさ、アタシにもいくつか当たってるから。

5 
 デカブツをいくつかしとめて、小物を大掃除して、やっとあたりがちょっと沈静化した。
 アタシらも結構まともじゃん。

「じゃ、俺らは逃げ遅れた市民を探す! そっちも気をつけな!」

 そんなこと言って赤服とつんつん娘が別の地域に走り去っていく。
 ま、たまには誰かと手を組むのも悪くなかったと思う。

 さて、次はどこに向かおうかと思っていると、天井のある空を数機の輸送機が飛んでいった。
 ARKSのじゃない。あれは正規軍のやつだ。遅ればせながらご登場ってか?
 その輸送機からゴマ粒みたいなのがばら撒かれた。
 ま、高度からそう見えるだけで、たぶん人かモノかまたはその両方を降下させてるんだろう。
 あっという間にそれが人型であることが分かり、そして、すぐにキャストであることまで分かった。
 そいつらはパラシュートなんてなかった。
 大型のスラスタージェットパックを背負ってご登場。
 いっきにアタシのまわりが空挺パックの廃熱と気流によって大混乱になる。
 死体はころがり、コンクリ破片がアタシの髪を遠慮なく汚す。
 アタシは腕で顔を覆わざるを得ない。

「――第44宙間機動打撃旅団440特殊戦中隊アルファ分遣隊だ」

 グレーと青、黒入り混じった都市型迷彩のキャストたちのリーダーっぽい奴が自己紹介。
 もちろんジェットパックはパージ済み。それに関する謝罪なんて無い。
 なるほど、ぜんぜん分からん。どこの、なに?

「で? 正規軍が何の用?」

 当然の問いをするしかない。

「確認する。ヒマワリ・ヒナタとパステル・エインか?」

 アタシはだまって頷く。
 そしてこいつの部下達の動きが、アタシらARKSの戦い方とは違うものであることを確認する。
 とにかく、極度のチーム主義だ。全員に頑なな役割分担があり、指揮命令があり、そして忠誠と反復訓練が団結をつくるって感じ。
 申し訳ないけど、たぶんアタシには合わない職場だろうね。

「キァハ司令からの依頼です。我々と共にTLPT特異体の回収に協力願いたい」

 あのさ、軍人さんってのは単刀直入で礼儀正しいんだけどさ、説明下手だぞ。

「新兵器か何か? アタシらなんかいなくたって、アンタらだけでも大丈夫そうだけど」

 このアルファ分遣隊の連中は、誰がどう見たって一介のARKSじゃ手に入らなさそうなハイテク装備満載だ。
 連中が手に持ってる多目的アサルトライフルなんて、どうみたってARKS用とは違う出来のよさだし。
 しかも、全員明らかに戦闘慣れしてる。
 動きで分かるよ。
 アタシはそんな殺気ゼロなのに殺意ありありみたいな域にはたどり着いてない。

「我々はこの地域には存在していない。ARKSだけが存在している。そういう建前です」

 なるほどね。
 じゃ、これは正規軍がちゃんと派遣命令受けて来たわけじゃないんだ。

「つまり、アタシはカモフラージュ?」
「口裏合わせです。理解が早くて助かる」

 アルファ分遣隊の隊長はそういって姿を消した。
 あれだ、なんだっけ、左手系メタマテリアル技術だっけ? 旧科学の透明になるやつ。

「――では、行きましょう。ビーコンにしたがってください。道中の敵は排除します」

 もう連中の姿は無い。
 おなじみステルスモードだ。
 まったく、NINJAかお前らは。

「魔女っ子。行くよ。お宝探しだってさ。あんた、先頭走ってみたら? こんな感じで杖あげてさ」
「どうして?」
 魔女っ子がつぶらな瞳でアタシをみつめてくる。
 子どもみたい。
 わかんない、おしえて? ってかんじ。
 そういう子ほどいじりがいがあるのよねー。
「いいからいいから」

 アタシは魔女っ子に杖を大仰にかかげさせる。
 これは面白いことになりそうだ、と内心にやにやが止まらない。
 どうせタダ働きなんだ。面白いことくらいさせろよ。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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