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ファンタシースター計画06

 魔女っ子と一緒にナヴ・ラッピーとかいう黄色いヒヨコみたいなのを追っかけまわしていると、突然通信が入った。仕事してりゃ、余計なこと考えなくていいってのに、迷惑な通信だ。

――はい、もしもし?

 アタシは魔女っ子がふわふわー、とか言いながらラッピーとっ捕まえる様をみながら返信する。
 あ、バカ、不用意に近づくなって。
 あーあ、突っつかれて涙目になってやんの。

「ニック大尉です」

 あー、あのハデハデ女キャスト准将閣下の下僕将校か。OD色の角ばった大尉だ。

「わざわざARKS通信に割り込み?」
「困ったことになってね。惑星リリーパで捕獲したアンドロイド積んだ軍用機がナベリウスに不時着したんだ。申し訳ないけど、回収してくれないかな?」
「リリーパ? どこそれ? アタシまだ許可もらってない惑星じゃないの、それ」

 アタシはずるずるとラッピーに抱きついたまま引きずられる魔女っ子をみる。
 まぁ、体力的には余裕がありそうだ。
 もう、最初の頃みたいにおっかなびっくりな戦闘でもない。ダガンだのフォンガルフくらいなら、いたぶりながら殺すことだって出来る。
 やっぱり経験がものを言うところがある。数をこなせばこなすほど、アタシは戦闘に最適化されていく。アタシが何者かなんかどうでもいい。アタシは少なくとも、ルーキーじゃないARKSになりつつある。

「本当のこと教えてくれたら、手伝ってあげてもいいけど」

 そして、ちょっと賢くなった。依頼を選ぶというスタンスが身についてきたんだ。わけのわからないまま利用されるってのは、絶対に避けるってのがアタシのルール。

「参ったなー」

 しばらくニック大尉の子どもっぽい口調が途絶える。誰かに相談してるみたいだ。
 ま、誰かなんて例の准将閣下だろうけどね。

「許可が下りたよ。本当はさ、リリーパで暴れてる兵器が制御可能か、ナベリウスで実験してたんだよ。ところがねー」

 オチは読めた。

「失敗したんだろ?」
「あたり。子飼いのARKSを送るからさ、E-2で合流してよ」

 そして、アタシの端末に振り込み履歴が表示される。軍から家賃三ヶ月分ほど振り込まれた。
 このまま持ち逃げしてもいいんだけど、そういうことしたらマイルームから火が出るかもしれない。

「了解。現場の座標を送って」
「話が通じて助かるよ」

 そして通信が切れた。
 アタシはラッピーとたわむれている魔女っ子に、詳細を送る。
 さてと、お仕事といきますか。


 E-2の合流ポイントには、ささやかな渓流があった。
 アタシらは、そのキリリとした冷たい水を飲んだり、足をひたしたりしながら待機する。
 しばらくすると、大理石ばりに白くて、かつ華がある格好をした女キャストがやってきた。

「ヲデンはやっぱりネオ・シンバシ」とアタシが符丁で呼びかける。
「コンブを頼むのが通」と返ってくる。

 女キャストはレンジャーらしい。華奢なボディのくせに、でっかいランチャーを抱えてる。
 やっぱキャストってのは見かけとは全然違う出力あるから、油断できないね。

「アルザス=ロレーヌですわ。いい天気ですこと。ご一緒できて幸いですのよ」

 オーケー。わけわからんのを送り込んできたことは、あとでお偉いさんに聞くとして、このお嬢様キャストの戦歴を照会する。
 おや、思ったよりもマトモだ。少なくとも任務達成率100パーセントというのは信用に値する。

「気が済みまして?」

 アルザス嬢が澄ました態度できいてくる。ぐぬぬ、確かにアタシより上手かもね。

「では、わたくしの指示に従ってくださいまし」

 あっさりと主導権をもっていく。
 おい、と言おうかと思ったが、魔女っ子があっさりこくんと頷いたから、アタシも無言で同意する。
 まぁいいさ。死にそうになったら、魔女っ子かかえてトンズラすればイイだけだしね。


 大尉から送られた座標位置には、内臓ぶちまけたフォンガルフだとかウーダンなんかが散らばってて、その臭さにうんざりした。ちょっと酸っぱいのがこみ上げてきて焦る。

「あらまぁ、解体場ですわね。あなた方もお気をつけなさって」

 気をつけてどうにかなるもんじゃないだろ、と思っていたら、ちぎれたガルフの頭が飛んできた。
 頑丈そうなアゴがだらりとたれて、ビロンと眼球が飛び出している。しなやかな狼の姿はそこにはない。

「いらっしゃいましたわ」

 いらっしゃいませーとでも言えばいいのだろうか?
 とにかく、歓迎すべからざる相手のようだ。
 返り血ですっかり濡れた巨大金属ボディに、アタシはあきれてものが言えない。
 これを制御できりゃ、確かに軍はイイ兵器をゲットできたと思うかもね。

「ギルナス=コアでございますわ。弱点はおなかのコア。それではお気を強くお持ちになって」

 そして、アルザス嬢は派手にランチャーをぶっ放し始めた。
 あっさりと片付くかと思ったが、そんなことはない。
 そもそも効いてない気が。

「あらいやですわ。弱体化弾装填、発射いたします」

 突然武器を珍しい形状をしたアサルトライフルに変えて、よくわからんが一発撃った。
 するとどうだろうか。アタシのHUDにレッドサークルが表示される。

「ではみなさま、弱いものいじめの時間でございますわ」

 そういってアルザス嬢がアサルトライフルを連射する。
 アタシもあの頑丈そうな腕にミンチにされたくないので、ガンスラッシュを射撃モードにして撃ちまくる。突っ込めよといわれりゃ、突っ込むけど、いまは自重したいね。あんなぶっとい金属のカタマリで蹴り飛ばされたら、頭蓋骨が砕けるだろうし。


 火力集中の原則どおり、ギルなんたらはあっさり沈黙する。
 そして、アタシも沈黙する。

 愛用のガンスラッシュ折れました。やっぱ古かったかなー。

「それでは、またお会いしましょう。ごきげんよう」

 アルザス嬢は武器が壊れたアタシなんか気にしないで、さっさとテレパイプ使って帰った。

「壊れた」

 魔女っ子が事実を指摘する。そんなこといわれたってねぇ。

「あんた直せる?」
「できない」

 あっさりといわれた。仕方ない、新しいのを買うか。
 でも、ちょっと金が無いぞ。
 とはいっても武器無しじゃ商売にならないのがARKSなわけで。

「いやー、助かったよ。これで船団政府の連中に文句言われないで済む。じゃ、今から輸送機そっちに向かわせるから、現場保全よろしく」

 ニック大尉の気楽そうな声が通信機に飛び込んでくる。
 軍……そうだ、軍になんか余計な装備とかないかな。

「大尉、あのさ、アタシの武器折れたんだけど」
「それで?」
「いや、そこは察しろよ」
「え? ヒューマンってそういうところあるよね。空気よむとかさ。いってくれないと分からないよ」

 心底そう思っているらしい。あれれ? 最近のキャストはちゃんと空気読むんだけどね。

「なんか代わりの武器ない? できれば安くして」
「――だってさ、キァハ。なんか武器庫にあったっけ?」

 人のいい大尉が、いろいろ人をこき使う准将に掛け合ってくれているみたいだ。
 しばらく、魔女っ子が地面に大尉の似顔絵を描いているのをみてる。
 なるほど、結構絵心あるんだな、あんた。

「――許可がおりたよ。ブラオレットっていう銃剣を回すね」

 アタシの端末に受信ピープ音が鳴った。ほんと手を回すのがはやいよな、あいつら。
 そして、贈られた品を確認すべく、転送プロトコルを軌道上に送信し、フォトン転写する。
 予定通り、アタシの手にそれが届いた。
 何じゃらごっつい波紋が目立つ刃に、黄金色っぽい銃部。正直、なにこれって感じだ。

「ねぇ、なにこれ?」
「最近市場で大量に流通してる武器。新興の軍需企業『タネガシマ』が試験品として軍に納品してくれたんだけどさ、採用トライアルで評価落ちしたんだ。安さは買うけど、軍で使用するには目立ちすぎるんだよね、それ。そういう派手さはARKS向けかな」

 大尉の説明の通りだとすると、つまりアタシはほんとにどうでもいい品をもらったことになる。
 とりあえず、アタシは諸元を確認する。そして、軽く振り回してみる。さらに試し撃ち。
 うーん。使えなくはないかもしれない。慣れればそれなりに良質なんだろう。

「ありがと。准将にお礼伝えといて」
「伝えておく。じゃ、また頼みごとがあったら君に回すから」

 プツっと通信が切れる。

 それと同時に、航空機がゆっくりと着陸する。
 ARKSが雇ってる民間軍事会社とは違う、航空迷彩が施されている。
 そして、カーゴブロックから数人の大尉に似たキャストたちが降り立って、てきぱきと廃棄部品と化したギルなんたらを回収していく。ぜんぜん無駄がない。
 あっという間に痕跡を消して、その輸送機は飛び立っていった。
 あー、たぶんあれが特殊部隊とかいうやつなんだろうな、と思う。特殊部隊にもいろいろあって、それぞれの専門技能に特化してるらしいし、たぶん今のは、回収とか救難とかの専門部隊なんだろうなぁ。

「なんかすごいの見れたって感じ」

 アタシは魔女っ子にちょっとした感想をいってみる。

「正規軍は正規軍。ARKSはARKS」

 魔女っ子が至極まっとうなことをいう。
 その通りね。アタシらはARKSなんだから、それぞれの仕事をすればいいだけさ。


 自分の記憶が作られたものであるとしても、いったい誰が作ったのかを知りたい。
 そういうのは単純な好奇心だけど、アタシにとっちゃそんなおざなりの言葉を超えて、アタシのルーツを探るために必要な儀式なんだと思えてくる。
 だから、アタシは仕事の合間にコツコツと手がかりをさぐる。
 ナベリウスにおりたら、ちょっと寄り道して『環境研究プラント』の跡地がないかさぐる。
 たぶん、あのリサっていう危ない女キャストが隠滅工作済だろうとは思うけれど、どうにもこうにもあきらめ切れなかった。
 だけど、今日も収穫なし。
 手に入ったのは、いつもどおりの報酬に、ブラオレットとかいう銃剣がさらに手になじんだことだけ。
 ORACLアーカイブにアクセス権がある魔女っ子にも情報収集頼んだんだけど、やっぱり今のアタシらのセキュリティ・クリアランスじゃ触ることすらできない情報が多すぎる。
 いうなれば、アタシらにとってこの世界は断片化されすぎていてて、一つ一つの破片を観察したところで全体構造なんかみえやしないってこと。
 キァハ准将に頼んでみようかとも思うけど、あの酷薄な女将軍のことだから「対価はあるの?」って言ってくるだろうな。対価というのは金じゃない。対等な関係にある情報のことだ。ルーキーからそれなりARKS程度になったばっかのアタシなんかが、正規軍にコロがせる情報なんて握れるわけない。
 じゃあ、どうするか……。

 アタシは煮詰まって、ベッドの上で寝返りを打つ。
 人工的に作られた夜は、相変わらず嘘くさい。船団での生活なんて、本当は無いものを有ると信じて生きていくことに他ならない。
 四季も、雨も、木枯らしも全部作られたもの。頭の賢い科学者達が心理ストレスと環境変動のクロスリファレンスがどーだこーだとか言いながら決めてるのさ。
 だけど、考え事すると眠れないってのは確実な事実さ。ウソなんかじゃない。こういうふうに考えるアタシの思考パターンも全部作り物のウソだけど、悩みだけは本物。
 ファック。
 記憶をいじるなんざ、マッドサイエンティストども自身で実験すりゃいいんだ。

「……起きてる?」

 プシュッと部屋をつなぐ扉がスライドした。ルームシェアにもプライバシーは必要だってことで、部屋が二つあるところに引っ越した。
 けど、なんとなくアタシらは二人でいる。どっちがが困ってたら、どっちかが手を差し伸べる。理由なんてないんだけど、そういう風にやってる。
 たぶん、アタシを心配して魔女っ子が来てくれたんだろう。
 なんだかんだで、あいつイイやつだからな。

「時計が、とまった」

 確かにな。記憶を失うってのは、今までの時をどうにかしちまうのと一緒かもしれない。

「なかなかシャレた言い回しだな、文学少女」
「?」
「慰めて……くれてんだろ?」

 しばらく間があった。魔女っ子はじっとこっちをみてる。

「ちがう、時計の電池が切れたから、換えて」
「またまたー」
「ホント。わたしは信仰上の理由で時計の電池を換えられない」

 魔女っ子の口調は相変わらず平坦で、抑揚がない。けど、こいつがウソをつかないことは『信仰上の理由』から確実だ。
 しかも、なんだか必死な感じだった。

「――冗談だろ?」
「助けて……」

 そして、魔女っ子はアタシのパジャマをひっぱる。
 おいおい。アタシの期待を返せコノヤロー。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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