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全ては未来の向こうへ行くため05



 戦術情報に表示される赤点、すなわち敵が消えていくのをキァハ准将は楽しんでいた。
 そして、それを消しているのがもっぱら自分である点にも満足していた。
 ずいぶんと久しぶりに展開したSUVウェポンの調子は実に良好だった。
 
「しびれるわね、この火力」と、キァハ准将は身の丈にそぐわない巨大なガトリング砲をもてあそぶ。

 彼女がしびれる快感の犠牲になったのが、巨大な盾と圧倒する頑丈さで悪名とどろかす巨人ガウォンダの群れだった。
 久しぶりに用いた火器管制システムとの同期も良好。
 彼女の思考速度にダイレクトに反応する照準システムによって、ダーカーたちは弾丸に砕かれていく。
 そして、さらに別のタグを敵に付けていく。
 これは間接照準射撃タグであり、タグ付された対象は、後方に控えるニック大尉のSUVマルチプルミサイルによって殲滅される。
 数秒ののち、ミサイルの精密な嵐かタグ付されて敵を滅ぼしていった。

「……やりすぎたかしら?」

 宇宙港界隈にひしめいていたダーカーの群れは、ものの数分で蹴散らされた。
 ラグオル戦役の際に、決戦兵器――たった1機で万の敵に対抗するという、とんでもない設計思想の下に作られているのだから、仕方ない。
 そして、そもそも生還は予定されておらず、駆逐した敵の死体の中で朽ちるべき存在でもあった。
 だが、彼女は人と同じように狡猾になり、生き残ることの喜びを機械ながらも理解できるようになった。
 ゆえに、彼女は無敵であった。

「さて、仕事は片付いたわね」

 そういって、停めてあったサイドカー付バイクの下に戻ろうとしたが、彼女の体は思い通りには動かなかった。
 結論を言えば、彼女の戦闘能力にボディが追従できなかったのだ。
 間接制御系はエラーを連発し、駆動音には異音が混じっている。

「ちっ。役立たずの体だわ」
『どうする? 後退する?』と、ニック大尉から通信が入る。
「ま、通常戦なら使えるでしょ。このまま王宮に行くわ」
『了解。もうすぐバイクんところにつくから』
「さっさとしなさいよ、のろま」
『はいはい』

 彼女はニック大尉が戻るまで、サイドカーに座って待った。
 まるで、人間の女の子が、彼氏を待っているみたいに。



「ミ、ミカン、そなたなにか案はないか?!」
「えーっ! ないない、ぜんぜんないよっ!」
「ああ……余の人生は短いものであった」

 女の子二人が身を寄せ合って、ベッドの下に隠れていた。
 ココもミカンも、扉をぶち破ろうとする異音に身を震わせていた。
 もう、どれほど経っただろうか。
 秘書官の悲鳴と、ドアの下からしみ込んできた血を見て二人が恐怖してから2時間は経っただろうか?
 さすが女王の私室ということで、誰かが外から操作して扉の内側にある隔壁を閉鎖し、安全だけは確保されている。
 だが、ガン、ガンと連続的に隔壁をぶち破ろうと、ダーカーが何かしらの物理的圧力を強めるのをただ聞いているしかできない時間は、ほとほとに恐ろしいものであった。
 外の様子などわからない。全窓は封鎖済みだからだ。
 いわば、反撃の方法を持たない籠城であった。

「あの者たちは……死んでしまったのであろうか」

 ココ女王がふるえながら、ミカンに抱き着いた。

「……秘書官の方々ですか?」
「この王宮に使える者たちじゃ。料理人、女中、秘書官。どれも先代から仕えておった忠義者じゃ」

 その忠義者たちを助けようともせず、こんなところで隠れている自分を、ココは嫌悪した。

「たぶん、隔壁も誰かが閉じてくださったんでしょうね」と、ミカンはココを抱きしめながら答える。
「こんな情けない余のために、なんと勇敢なことか……」
「それがオシゴトなんですよ。姫様」

 おびえる年下の女の子を慰めながら、ミカンはこれからどうしたものかと思案を巡らせていた。
 脱出しようにも、秘密の通路などないらしい。
 活路を切り開こうにも、ミカンの武器は例の博士をこらしめるために持っているスタン・スティックぐらいだ。
 電流をびりびりと流して、相手を痛めつける何とも原始的な警棒。
 こんなものでダーカーを倒せるはずがないことは百も承知であった。
 とりあえず、センパイとして慕っているARKSの二人に連絡を取ろうとしたが、交戦中の通信規制で一般回線からではつながらなかった。
 たぶん、ヒマワリせんぱいも、パステルさんもダーカーと戦ってるんだろう。
 それも、あの二人のオシゴトなんだから仕方ない。

「余は、死ぬのであろうか?」

 なんと情けない女王だろうか、ともココ自身思うが、そういう弱気な考えしか出来なかった。

「……死んだって、いいじゃないですか」

 ミカンがココを抱きしめながら言った。
 女王であるココは相変わらず震えていたが、女子高生に過ぎないミカンはもう震えていなかった。
 
「死んでも、いいじゃと?」
「はい。どうせ大人になれば、心が死ぬんです。なら、今死んだほうが、生き生きと死ねるんじゃないですか?」
「な、なにをそなたが申しておるのかつかめぬが」
「姫様は、この先に何を期待しておられるのですか?」

 あまりにもわけのわからぬ問いに、ココはミカンがおかしくなったのではないかと疑義を抱いた。
 だが、あくまでミカンの様子はいつも通りであった。

「私、思うんです。大したことない人生になるだろうなって」
「ほ、ほぅ」
「ORACLEなんかに飛ばされたって、なんとか食べていけますし」
「ふ、ふむ」
「ちょっと恋なんかして、ふわっとデートしたりして、最後はキスするんです」
「な、なるほど」
「それって、つまらないですよね」

 つまらないものなのか? とココには理解できなかった。
 この平民の娘が一体何を考えているのかまったくつかめないのだ。

「知ってます? 民主主義って多数派の思想が正当化される制度なんです」
「え?」
「だから、私は民主主義が嫌いです。多数派にいれば正当化されるなんて、私には納得がいきません」
「それと、さっきの話にどういうつながりが……」
「恋して、デートして、キスするなんて多数派の考える幸せです。私はそんなの、欲しくないけど、私がいた世界ではそれが正しいってなってました」
「???」
「だから、私、決めました。姫様とキスします」
「へっ……?」

 ココが何か言おうとしたが、その幼い唇を、思春期の唇によってふさがれた。
 それはいうまでもなく、ココにとって初めての経験だった。
 よくわからないが、今までのふるえとは違う震えが背中を走った。
 なんとかミカンを引き離そうとするが、それはココの力では無理な話であった。
 次第に諦めて、ココは固く力を込めていた唇を緩めた。
 そこに、暖かなミカンの舌先が入ってきた。 
 開いてはいけない門をこじ開けるように、強引に、それでいて繊細に。

「……しちゃいましたね、キス」
「――」と、ココは口をパクパクさせるくらいしかできない。
「私、いけないコになろうと思うんです。ここを生きて出られたら、好きなようにします」
「……それと、余に口づけすることに因果はあるのか?」
「ありますよ。姫様。あなたは、私が犯すんです」

 その言葉の意味は、ココには理解できなかった。
 なにか罪深いことでも為そうというのか? 程度である。
 所詮は箱入りで育てられた存在であるし、平民文化のたしなみはあまりない。

「ですから、姫様も一緒にいかがです?」
「な……なにがじゃ?」
「私と一緒に、好きなように生きませんか?」

 それは、ココにとって望外の言葉であった。
 血筋ゆえに、女王になるべく育てられ、来るべき戴冠式をもって王国の依代とならん、という人生。
 それを、辞めさせてやろうと平民の小娘が言っているのだ。
 暗い、ベッドの下で、古き血が流れる娘によって、数百万年の未来の女王であることから連れ出してもらえると。
 その言葉ははちみつよりもずっとあまい響きをもっていたし、ココとってそれは希望の歌であった。

「……すぐには、決められぬ」
「どうしてですか? もうすぐ死んじゃうかもしれないのに?」

 ドン、ドン、と力強い音が隔壁を殴りつけている。
 いつ破られてもおかしくないだろう。

「処女のまま死ぬかもしれないこの時に、姫様は、迷う女の子なんですか」
「処女?」
「したことがない、ってことです。私、まだなんです」

 なにをしたことがないのか、ココには見当もつかない。
 しかし、ミカンの物言いは罪深さ以上に慎み深さを越えたなにかが含まれている気がした。

「一緒に行きましょうよ、姫様」
「国は、どうするのじゃ?」
「そんなの、捨てちゃえばいいんです。いらないんでしょ?」

 いらないのかもしれぬ、とココは思った。
 今までは女王であると言い聞かせてきたが、ミカンの誘いにはとめどなく歓喜の叫びが体内から湧いてくる。
 むしろ、熱いのだ。
 腹の下あたりが、とても熱く、爛れていく感じがする。

「……連れて行って、くれるのか? そなたは」
「もちろん。一緒に、悪いコになろう」

 ミカンは、ギュッとココを抱きしめた。



 SPEC=B第2、第三分遣隊が戦術機動で王宮周囲のダーカーに打撃を与え、抵抗線を形成していた。
 アサルトライフルと同口径の弾薬をばら撒き、火力をもって敵を制圧する軽機関銃をもったキャスト兵たちが、群れるダーカーをバラしていく。
 軽量な軍用アサルトライフルを抱えたキャスト兵たちは、4人一組で相互に援護しあいながら、暫時前進。
 必要があれば、対象をタグ付して、後方に控える誘導迫撃砲部隊からの火力支援を乞う。
 しばらくすると、圧縮されたフォトンエネルギー弾が放物線を描き、対象の頭上に直撃する。
 そして、対象は消滅する。それが軍隊の戦い方だ。

 事前計画通り、SPEC=B第2、第3分遣隊は敵をおおむね排除することに成功した。
 しかし、王宮内部への突入はしなかった。
 准将の読みでは、今次のダーカーの襲撃は『人間を理解している』ものであるからだ。
 となれば、安易に王宮内に突入すれば、別のダーカーたちによって再度王宮を包囲される危険性がある。
 良くも悪くも、賢いダーカーの運用がなされている以上、対抗防御を考える必要があった。
 だからこそ第2、第3分遣隊は輸送機の投下するコンテナから銃座を運びだし、要所に火力陣地を形成した。
 王宮内部への突入は、SPEC=B第1分遣隊が王宮備え付けの屋上ポートから降下・突入する手はずになっている。
 
 見事に形成された火力陣地を見回るように、サイドカー付バイクが進む。
 兵士たちはそこに自分たちの司令官が乗っているにも関わらず、敬礼などしない。
 理由は単純。戦闘状況下での敬礼など無駄だから不要としているに過ぎない。

「――まだ、第1分遣隊はこないのかしら?」

 キァハ准将が自分の左腕を引きちぎりながら言った。
 ちっ、ポンコツの腕め、と罵声を発しながら、座席の下に放り込んだ。
 裂けた人工筋肉から真っ白なタンパク液が漏れだしているので、メディカルキットから取り出した包帯で縛っておく。

「キァハ、左腕がないとバランスが悪くなるよ?」
「修正パッチは当てた。戦闘プログラムに問題は生じないわ」
「けど、ポーニャ少佐が怒るんじゃないかな?」

 ニック大尉が懸念しているのは、キァハのボディパーツは貴重な新型であり、コストがかかっている点にである。
 それを調達するために補給兵站幹部がどれほど苦労したか、とつとつとグチをきかされるのはいつもニック大尉の仕事になる。

「補給兵站幹部の仕事を用意してあげるあたしって、なんていい上司なのかしら」
「……いまでも手一杯の仕事もってるとおもうけどね」

 そんなくだらない会話をしている二人の上空を、SPEC=B第1分遣隊の輸送機が飛んで行った。
 無駄のない機動で輸送機が王宮の屋上ポート上空に静止し、そこから降下用ロープが降ろされた。
 しばらくはロープがゆれるばかりであった。
 ロープを揺らすのにあきたのか、輸送機はふわりと再上昇する。
 メタマテリアル迷彩によって透明化されたキャスト兵たちの姿が映ることはついぞなかった。

「ランヌの部隊が降りたみたいね。よし、そろそろ敵の逆撃も考えられる。警戒を厳にせよ」

 キァハ准将は配下の全兵員の思考と同期して、個別の命令ファイルを手配した。
 キャスト兵が軍事組織として優秀な最大の点は、全員が高速で思考し、高速で同調・並列化できる点にある。
 そして、指揮官の処理能力が高ければ、すべての兵の状況を把握することができる。
 つまり、組織戦をするにおいて指揮・命令・伝達・報告の手順が恐ろしく効率的なのだ。

『こちら、ランヌ。第1分遣隊準備よし』とキァハの電子頭脳に通信が入る。
「よし。突入せよ」
『了解』

 王宮の屋上ポート――数多くの高層ビル建築の集合体の一角の屋上から、ぞくぞくと透明な兵士たちが侵入していく。
 キァハ准将は第1分遣隊員らの視野と同調し、内部の状況を掌握する。
 そこは、瀟洒な王宮の廊下というにはあまりにも、血塗られ過ぎていた。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

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