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ファンタシースター計画36



 アタシらが露店の並ぶ繁華街のデリでチェダーチーズにするかモッツァレラにするかで揉めてた時に、アラートが鳴った。
 だが、市民たちは呆けたみたいに互いに『なんだろうねぇ?』といった顔をするばかりだった。
 戦争から遠ざけられていた船団市民なんてこんなもんかもしれねぇな。

「まずいんじゃねぇか? こいつら分かってねぇ」
「避難誘導を。ヒマワリ」
「は? おまえ、アタシ一人でここにいる全員を誘導できると思ってんのか?」
「やらないと、犠牲者が出る」
「けどよぉ、誘導する権限なんざねぇわけで……」

 くだらねぇイイワケを言ってるうちに、例の『ニオイ』がアタシの鼻をくすぐる。
 その匂いは、いつもアタシの衝動をかきたてるアレだ。
 やつらが実体化しようとするとき、虚数より実数に変わろうとするあの空間情報をゆがめるニオイ。
 殺せ、と衝動がこみあげる。
 体が勝手に平和をちぎり捨てて、武器をとれ、敵を倒せとエンジンをかけ始める。

「……くるぞ」
「わかってる。武器を実体化させる」

 魔女っ娘が武器使用許可を出した。
 市民区画で武器を使うためには統括ARKSの包括許可が必要だからだ。
 この都市船ペーパームーンの統括ARKSは研修所所長の魔女っ娘ということになってる。
 で、アタシらは各々お得意の殺すための道具を手にした。

「ARKSだ! 全員さっさと待避シェルターに駆け込みやがれ!」

 アタシが射撃モードにしたラムダトゥウィスラーを空に向かって連射する。
 銃声なんかに慣れてない連中は、きゃーだの、わー、だの言ってその場に伏せるばかりだ。

「おい、全然逃げねぇんだが……」
「仕方ない。わたしがやる」

 魔女っ娘が何を思ったか杖を握りしめて何やらぶつくさ唱えた。
 すると、炎の渦がいたるところにあらわれて、市民たちを脅かし始めた。

「おいおいっ……」
「大丈夫。火傷で済む」
「そういう問題なのか?」
「事態は急を要する」

 目も当てられない惨状が広がっていく。
 炎の竜巻に追い立てられて、市民たちが押し合いへし合い、誘導されていく。
 転ぶ子どもに、押し倒される女性、あさましく他人を押しのけるおっさん。
 集団パニックを作り出して何が避難だよ。
 あー、でも、一応市民の列はちゃんと『シェルター』の標識のほうに誘導されてはいる。
 けど、どうもそれだけでは済まなさそうだ。

「おい、なんか建物に延焼してねぇか?」
「てへへ」

 なんだか魔女っ娘の死人みたいな目が、妙に輝いてる。

「……マジかよ」
「火をみるとね、わたし、濡れる」

 アタシは目を覆った。こいつ、ダメだ。

「テメェのオーガズムに付き合わされてたまるかっ! 消火装置はどこだ?」

 あわててあたりを探すが、どうも見当たらない。
 というか、燃えて、煤になった何かが飛びまくってて、アタシの視界をふさいでやがる。
 くそ、どうすんだよ。ドーム天井まで黒煙が上っちまってる。

「ヒマワリ。消火よりも、ダーカーを」
「消火も大事だろうがっ! 延焼したら二次災害になっちまう」
「問題ない。火をつけて消すのもまた、気持ちいいから」
「……」

 うっとりとする魔女っ娘は放っておくことにした。
 そして、炎の中から、奴らがご登場しやがった。

「ダーカーを現認した。排除するぞ、魔女っ娘」
「燃やしたら、気持ちいいかも」
「……アタシまで焼くのはカンベンしてくれよ」
「人を焼いたことはない。たぶん」

 そうかよ。
 くだらねぇお喋りはここまでだな。
 目標はダガン。数は米一合分ってところか?
 つまり、アタシら二人で支えきれるか怪しい数だってことだ。

「――援護してくれよ」
「了解。焼き払う」

 魔女っ娘が遠慮なく 大 爆 発 をやらかしてくれた。
 こいつぁ派手でいい。わかりやすい戦いは最高だ。
 だが、規模がでかいだけあって、魔女っ娘の額にはうっすらと汗が浮いてる。
 感じてるってわけじゃなさそうだ。
 吐息は苦しげ。連射は無理そうだな。

「よし。数は減ってる。アタシが突撃する」
「補助する」

 魔女っ娘がアタシにシフタ・デバンドを施してくれる。
 血管が拡張し、心臓の鼓動が強くなる。肺は酸素を多く取り込み、視神経は敵を静止画のようにつかんでる。
 すべてが敏感になり、同時にアタシの身にまとうフォトンの力が強くなる。

「撃滅っ!」

 今まで平和でございと人々の足を受け止めていたアスファルトを蹴って、ダガンの群れに突撃する。
 速くっ!
 瞬きよりも早くっ!
 未来に追いつけるほどに速くっ!

「――ふっ!」

 腹の底から押し出された息が漏れる。
 振り下ろした刀身がバカデカイ昆虫もどきをぶった切る。
 まだだ。
 次、次、次っ!
 まだだ。まだアタシを止めるには速さが足りないぞっ!

『ヒマワリ、調子に乗りすぎ』

 通信機越しに魔女っ娘の声がなった。
 アタシの背後には氷の槍に貫かれたダガンの一山が出来てた。

「さすが、魔女っ娘様」
『数は多い。後退も視野に入れて』
「了解。けど、退いたら市民のシェルターが破られる」

 魔女っ娘がテキトーな誘導をしてパンク寸前のシェルターの扉がダーカーの手で破られたら……。
 言うまでもない虐殺の時間の始まりだ。
 ならば、退けはしない。
 このまま粘れるだけ粘るしかない。
 アタシのセクシーな腹だのおっぱいだのを狙ってくるダガンの攻撃を避け、射撃モードで片づける。
 スタミナを保持しつつ、数を減らす――。



 ――と思ったが、ちょっと数が多すぎるな。

「魔女っ娘、無事か?」
『斬られた。出血は抑えた』
「すまねぇ。浸透されすぎた」
『あなた一人で支えられるわけない。気にせず前の敵を排除』
「了解。背中は預けた」
『……いつものこと』
「そうだな。アタシの背中は、お前がいつも守ってくれる」
『それが、わたしの決めたこと』

 魔女っ娘のやつが派手な雷撃をぶちかましはじめた。
 アタシの背後から連続フラッシュみたいに光が飛んでくる。
 光るごとに、ダガンが消し飛んでると思うと快感だな。

「――ヴォウ!」

 などと、もう女であることなんざ忘れた獣みたいな声がアタシから飛び出してくる。
 連続シフタのせいで、体内のアドレナリンが出過ぎてる。それに、血管も結構ブチ切れ始めた。
 くそったれ。もっとアタシのボディはタフじゃねぇのかよ。
 斬って、撃って、斬って、それでもなお敵の数は減らない。
 マジ参ったぜ。
 このままじゃ、晩飯食う前に死んじまうぞ?

「魔女っ娘、後退するか」
『ムリ。背後からも敵がきた。わたしが対処する』

 ビルの立ち並ぶ繁華街を貫く道路の一方なら、正面戦として対処可能だが……。
 双方から挟まれちまったら、退く場所なんかねぇぞ。
 さっきから発信してる救援ビーコンを誰かつかんでないのか?
 自治政府の警察部隊は何やってやがるんだ……!

『こちらSPEC=B(特殊戦大隊)第1分遣隊。救援ビーコンを受信した。10カウントで支援を開始する』

 アタシと魔女っ娘をつなぐ通信に、冷徹な機械音声が割り込んできた。
 こちらから周波数を合わせて返事をしようと思うが、アクセス拒否された。
 この一方的な押し付けかたは、アイツらに決まってる。

 そして、10秒きっかりになじみの輸送機が上空を通過した。
 なんも降りてこねぇな、と思ってたら静かに抑制された発砲音が四方八方から聞こえた。
 ぼすぼすっと、なんか詰まった感じの音がなると、ダガンたちが四肢を吹き飛ばされていく。
 定番の、軍用サプレッサー装備型アサルトライフルだろう。
 アタシの体にまとわりついてたダガンも、見事な狙撃で弾き飛ばしてくれた。
 
 あっという間だった。

 姿も形も見せず、寸詰まりの音をならすだけで敵を消滅させやがった。
 そして、あちこちの空間が微妙にゆがむ。
 なんというか、ゆがんだ鏡に映った世界みたいなもんだな。

 そして、連中は姿を現した。相変らずのメタマテリアル迷彩か。
 灰色系の複雑な類色をまぶした都市型迷彩に塗装されたキャスト兵士どもだ。
 ボディには戦術ユニット一式を積んだベストを着込み、真っ赤に灼熱したサプレッサーを廃棄して、新しいサプレッサーをアサルトライフルに手際よく装着している。
 なによりも、連中は組織戦に慣れたやつら特有の全周囲警戒態勢をさっさと整えるところがARKSと違う。

『ヒマワリ・ヒナタだな』

 指揮官機らしき通信アンテナを頭部につけてるキャスト兵士が話しかけてきた。
 とはいえ、スピーカーではなくアタシの通信機に直接言葉を飛ばしてくる。
 デジタルな連中ってのは、普通に大気を震わせて会話するってのを知らねぇのか?

「ああ。その通りさ。どっかで見たことある連中だな」
『なら状況を説明する必要はないな』
「ああ。で、正規軍がご登場ならARKSは不要だろ?」
『齟齬がある。我々はヒマワリ、パステル両名を必要としている』

 ちょっと理解に苦しんだ。
 ほら、ドーム天井に隔てられる空を眺めてみても、正規軍系列の輸送機が飛び回ってる。
 こいつらみたいな戦闘マシンどもがあちこち降下してるってことだろう。
 アタシらが必要とされる理由が分からない。

「まぁ、こっちの偉い奴はあっちだ」

 アタシはよろよろとこっちに向かってくる魔女っ娘を指差す。

「なに?」と魔女っ娘がつかれた顔して問う。
「正規軍の連中がお前に話があるんだってよ」
「もう、正規軍じゃないけれど」
「へ?」

 あれだろ。スーパーソルジャーどもの集まりっていえば正規軍だろ。

『我らは自治政府軍として編入された。現在はペーパームーンを守備するのが任務だ』
「あー、あれか? キァハ准将が失脚したってのはこういう意味か」

 なるほど、と勝手に納得してたら、バカは放っておこうと言わんばかりに魔女っ娘と指揮官機が話し始めた。

『我々の戦力は少ない。ARKSの協力が必要だ』
「わたしたちは二名しかいない」
『――冗談を言っている状況ではないが』
「本当のこと。わたしたちは二名。研修生を現地で募集する予定」

 魔女っ娘の言うとおりだ。アタシら2名をもって、都市船ペーパームーンに乗ってるARKSは数え終わりだ。

『――司令に確認を取る』
「そう。どうぞ、ランヌ少佐」

 魔女っ娘がうながすと、指揮官機は通信アンテナを一層伸ばして、なにやら沈黙した。
 アタシが武器の点検を終えたころに、ようやくこっちの世界に戻ってきた。

『ARKSはこのシップに2000人増派すると約束したはずだ、と返事があった』
「0が三つほど多い」
『同感だ。どうやらARKSにも都合があるらしい』
「正……自治政府軍にも」
『情報アセンブリを送る』

 アタシらの端末に、正規軍……じゃねぇ、自治政府軍の作戦図が届いた。
 まぁ、あんまり見慣れた形式じゃないが、現在の戦況くらいは大まかにつかめた。
 敵はこの繁華街と、主要な宇宙港、そして王宮及び自治政府庁舎界隈にあらわれたらしい。
 えらく戦略的な展開だな。要所を抑え過ぎてるっていうか……。

「ダーカーは人類を学習した?」

 魔女っ娘が指揮官機に尋ねた。

『そのようだ。クローンARKSの浸透を阻止できていないと軍情報科が嘆いていた』
「ARKSはクローンARKSの存在を、せいぜい対ARKS兵器くらいにしか見ていない」
『愚かなことだ。奴らの目的は『人類という社会』を理解し、効率的に人類を滅ぼす手段を探ることだ』
「だから、敵が見事な展開をしている?」
『軍は、そう考えている。ARKSのバカどもは、アイドル歌手のコスプレのほうが楽しいらしいがな』
「それがARKS。個人によるいいかげんな武装集団」
『ふん。気に食わんな。では、我らは次の戦区に移動する』

 上空を旋回していた輸送機が、翼を垂直ジェットに切り替えて降下してきた。
 ヤツらはそのカーゴブロックにぞろぞろと乗り込んでいく。
 
『これより、我々は王宮に向かう。先発している第2、第3分遣隊が抵抗線を形成しているあいだに、王宮から女王を救出する』
「仕事熱心ね。わたしたちは違う仕事をする」
『任せた。軍には出来ぬことを頼む』

 そういって、奴らを乗せた輸送機は軽やかに上昇し、飛び去って行った。
 ま、アタシらにしかできないことっていえば……。

「とりあえず、火を消そうぜ、魔女っ娘……」

 アタシはうっとりと燃える市街を眺めている魔女っ娘に言ってやった。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

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