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ファンタシースター計画35



『ヒマワリ・ヒナタを都市船ペーパームーンARKS研修所教官職に任ずる』

 こんな一行が記載されただけの電子辞令のせいで、アタシはシャトルシップに乗ってる。
 ゆらり銀河旅行……ってわけじゃなく、単に今までいたARKSシップ2番艦ウルから、都市船ペーパームーンにお引越しってとこだ。
 ついに、アタシにピーピーついてきてた魔女っ娘ともお別れか。
 さびしくなるぜ。

「ヒマワリ、よそ見してないでテキスト開いて」

 アタシの隣に座ってる、ちょっと暗そうで、人づきあいが苦手そうなニューマンの娘っこが文句をたれてくる。
 黒・黒・黒。見てるほうの気持ちをダークにしてくれる素敵なファッションセンスに脱帽せざるを得ない。
 アタシの目を見て話さないこいつを見てると、イライラしてくる。

「……」
「なに? 仕事しないと」
「……なんでお前が所長なんだよっ!」

 魔女っ娘改め、新しくペーパームーン研修所所長として赴任するパステル様々サマさまが、エラそうに説教を垂れ始めてどれほど経ったろうか。
 このコミュ障娘を所長にするなんて、ARKS上層部はスパゲッティモンスターに洗脳されちまったんだろう。

「まぁまぁ。センパイ方は仲良しなんですから、ケンカせずにですねぇ」

 と、仲裁に入ってきたのは、ティーンエイジャー代表取締役女子高生のミカンだ。
 なにがミカンだバカヤロウ。へんてこな名前の古代人ごときにアタシの不満はおさえられないぞ。

「なんでミカンまでシャトルシップに乗ってんだよ? アタシらARKSとは違うだろ、お前」

 ミカンのやつはヌヌザック博士んところの助手として飯のタネを稼いでる市民Aだ。
 どういうわけか地球歴時代のサイタマとかいう忍者が一杯住んでるところからPLPTしてきたとか。
 市民権のないダリッド堕ちしそうな状況を、アタシらと法院のイケメンに助けられて、今は豊かなORACLEライフになじんでる。
 家族のもとに帰りたいだろうけれど、そこんとこどう思ってるんだろうな。

「私はヌヌザック博士から言われて、ペーパームーン政府のオシゴトをするんです」

 ミカンがじゃーん、とか言いながらアタシらに電子ペーパーを見せつけてきた。
 そこには、なんじゃらよく知らん研究機関の代表であるヌヌザック博士の署名と、ミカンをペーパームーンに派遣研修させる旨の記載があった。

「研修ってことで、ペーパームーン政府が保持している地球歴時代の遺物の調査なんかもするわけです」

 この宇宙大航海時代となっては、地球とかいう青くてどうしようもない星の文化なんざ星屑の海に放置プレイだ。
 なんとなく自分たちに起源が地球にあるってくらいは認識してるけど、だからなに? ってのが一般的な感覚だしな。
 そういう地球歴の文化について、あれこれ学者さんたちはマニアックに研究してるわけさ。
 ミカンも地球歴時代の女子高生とかいうジョブに就いてたらしいから、こういう仕事にありつけてる。

「たしか、ペーパームーンにはオリジンたちの遺物が保管されてたはず」

 魔女っ娘がORACLEアーカイブにアクセスしながら言った。
 そして、手持ちの端末に検索してきた情報を表示した。
 なんだかよくわからんが、丸い球状のものが安置されてる画像データが表示されてた。

「なんだこりゃ?」
「さぁ? わたしは専門外だから」
「……!」

 ミカンのやつだけが、どうやらこれの意味が分かったらしい。
 でも、やつの驚きは楽しさとかワクワク感とかゼロのそれだった。

「なるほど。博士はこれを調べたかったんですね」
「なに勝手に納得してるんだよ?」
「まぁ、あんまりセンパイ方には関係ないと思います」
「そういわれると気になるじゃんかよぉ」
「……ヒマワリ。ミカンに構ってないでテキスト開いて」

 魔女っ娘が所長面してアタシに文句を放り投げてくる。
 ま。さすがに教育担当者なんだからテキストくらい読んでおくべきかもね。

「ARKS上層部の気まぐれがいつまで続くかわからない。正当性を担保すべき」

 魔女っ娘のやつが、アタシに現実を説く。
 たしかにARKS上層部が色々と首突っ込んじまったアタシらを生かしておく義理なんかない。
 けど、どういうわけかペーパームーンに放り込んでお茶を濁そうとしてやがる。
 つまり、アタシらには利用価値があるか、手を出せない理由があるかだ。
 ってことは、いよいよもって仕事の出来が悪けりゃ、あれこれ理由つけて消されても文句は言えない。
 もしアタシらをかばってるやつがいても、アタシらが無能だったらかばいきれはしないだろう。

「わかったよ。マジメになってやるさ」
「あなたがマジメじゃないと、研修生が死ぬ」

 魔女っ娘が、ぞっとすることを言った。



 都市船ペーパームーンがどんなとこかなんて興味なかったけど、来てみるとワルいところじゃねぇな。
 宇宙港からデッキへと進み、民間の洒落た空港ロビーに出た。
 土産屋があったり、税関があったり。武装しているやつなんか全然いない。
 これが平和なんだ。
 ARKSシップと違って、ガチな経済都市艦だから人々の顔に魂がちゃんと宿ってる。
 戦争ばかりの船と、戦争から遠ざけられた船の違いはそれだ。
 目の前にある現実が違うんだ。安らぎこそが日常である連中にとって、戦争はいつも遠いところにある。

「いいところじゃんか。安らかでさ」
「そうですね、センパイッ!」
「目に見えるところは、そう」

 せっかくこっちが安らぎの空気を吸ってるってのに、魔女っ娘様が水を差しやがる。

「んだよ、それ。せっかくの新天地なんだから楽しもうぜ? 新しいマイルームにも行きたいしな」

 魔女っ娘様のほうは、アタシの言なんか聞いてないらしい。
 とことこと勝手に手続きを済ませてゲートをくぐっちまった。
 アタシもあわててヤツの後について行く。
 入国手続きで「目的は?」と係員に聞かれたから「戦闘訓練さ」と答えておく。
 はは、ここには戦争なんて来ないですよ、と気楽な答えが返ってきて、入国許可証をくれた。

「戦争が来ない?」と聞いちまう。
「ええ。だって、女王様がなんとかしてくださいますから」
「女王様?」

 ここはSMかなんかのヘンタイカルチャーが主流の都市船なのか?

「ええ。先代様がお隠れになられて、しばらく空位がありました。しかし、いよいよです」
「はぁ」
「ココ様が王家の成人年齢である14になられました。即位式がもうすぐでしてねぇ。観光客もひっきりなしですよ」

 おしゃべりな入国管理官によると、どうやらこの都市船は女王様が治めているらしい。
 基本的にORACLEは自治政府の集合体だからな。合衆国とか連邦みたいなもんだ。
 そんなかに王国みたいなのがあったっておかしくはない。

「へぇ。じゃ、アタシらもいろいろ観光してみるぜ」
「ええ。よい滞在を」



 いつ作られたのかわからないペーパームーンの研修所は、オートマトンによって整備は行き届いていた。
 やっぱりドゥドゥあたりが巻き上げてるARKSの資産がこういう不動産関連を維持する予算になってるんだろうな。
 ただ、すべてが最新ってわけじゃないし、規模だってそんな素敵なもんじゃない。
 ちょっとしたハイスクール程度の規模しかない敷地に、ささやかなグラウンド。そして体育館代わりの演習シミュレータ室。
 演習シミュレータシステム回りは一昔前のもんだったから、持ち込んだキットでバージョンアップを図った。
 とはいえ、アタシは全然手伝ってなくて、魔女っ娘様が全部やったんだけどな。
 けど、これからがアタシの仕事だ。

『聞こえる? ヒマワリ。シミュレータを起動するけど』

 ああ、聞こえるぜ、と答えておく。

『一回り前のシステム。実戦レベルで行く?』
「あたりまえだ。やってくれ」

 アタシは青のガンスラッシュ、ラムダトゥウィスラーを実体化させる。
 完全受注生産の名の通り、アタシ専用にオーダーしたそれは悪くないもんだ。
 戦略OSとのリンクを確認。馴染んでる。十分にな。
 ただ、アタシはもっと自由にやるつもりだ。
 もう一本、武器を実体化させる。
 
『なにやってるの? 二刀流なんて安全規則違反』
「二丁拳銃でもあるんだぜ? 戦略OSのサポートを最小限にする。アタシがアタシの力量で制御するさ」
『……勝手にすればいい。開始するから』

 今まで何てこたぁないコンクリ造の広いだけの部屋が、あっという間にナベリウスの『凍土』に変わった。
 寒さまで再現たぁ、細かいねぇ。

『心拍に変動あり。大丈夫?』

 まぁ、ちょっと死にかけた凍土だからな。緊張くらいはある。
 けど、問題ないとだけ答えておく。

『標的を出す』

 魔女っ娘の声と同時に、アタシの背後にフォンガルフルっつー、真っ白なオオカミが現れた。
 首筋を食いちぎろうと飛びかかってきたのを、淡々と刺殺する。
 以後、敵がじゃんじゃんあらわれてきた。

 刺殺
 
 射殺
 
 絞殺
 
 と、アタシが使えるすべての技術を駆使して対象を殺す。
 体が熱くなる。
 体幹を巡るあらゆる筋肉が動員され、声帯がわけのわからない声を勝手にひりだす。
 奥歯を食いしばり、足の裏の皮がズル剥けるほどのステップを繰り返し、すべてを殺すんだ。
 敵を、殺せ。
 アタシの内側から豊かな大合唱になって、殺せ殺せと響く。

『――ヒマワリ! シミュレータの処理速度を超えてる。テスト中止を』
「まだだ! アタシは殺す!」

 ガウォンダとかいうでっかい盾を持ったデカブツのコアをうりうりと刃で斬り裂いてやり、弾丸を撃ちこんでやる。
 
『なに熱くなってるの? テスト終了』

 冷静な魔女っ娘によって、アタシの熱いパトスは中断された。
 あっけなく現実の虚ろなコンクリ造りの殺風景につつまれて、うんざりだな。

「で、どうだった?」
『研修生レベルなら十分に実用レベルのシミュレータ。けど、あなたには向かない』
「だろうな。敵の挙動が遅すぎる。本物はもっと狡猾で、強い」

 初めての二刀流+二兆拳銃なんかで倒せるほど、現実は甘くない。
 所詮はシミュレータだってことだ。

『……今日はここまで。戻ろう、ヒマワリ』
「そうだな。晩飯はどっちがつくる?」
『デリで買って帰る。まだ荷解きが済んでない』

 たしかにな。
 アタシらは入国したらすぐに研修所の下見に出向いたしね。
 宇宙港で別れたミカンのやつは、今ごろペーパームーン政府が用意してくれた官舎のほうでバスタイムでも謳歌してるだろう。
 アタシらも、始めるか。
 新しい生活ってやつをさ。


 
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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