スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ファンタシースター計画05

 ARKSの事務局から呼び出しをくらった。
 しかも、アタシと魔女っ子二人とも。アタシらは午後から新しいソファを買いに行く予定だったのに、それをやめて、のこのこと事務局へと向かう。
 降下艇発進口に接続する馴染みのロビーに到着すると、仕事に精がでるARKSの同業者達でごったがえしている。

「なんか最近ARKS増えたんじゃない?」
「研修期間が短くなったから」と魔女っ子が教えてくれた。

 そうか。短期間になればなるほど、新規参加のARKSは多くなるよな。

「あらあらあら、ヒマワリさんにパステルさんですねぇ?」

 やたら列が出来てる受付カウンターに並ぶのが面倒だったので、待合ソファに座っていると、危なそうな真っ赤な目をした女キャストが話しかけてきた。

「リサはですねぇ、あなたたちを迎えに来たのです」

 よくわからんが、この人はレンジャーらしい。アサルトライフルを携帯している。

「ではでは、リサと一緒にきてくださいねぇ。リサはあなた達に事務局からのお知らせを伝えるんですね。リサは仕事熱心ですから」

 こいつ、瞬きしないんだな。なんというか、かっぴらかれた瞳に狂気みたいなのを感じるんだけど。でも、キャストに狂気とかあるのかな? バグってこと?


 とりあえずリサについていくと、いままで入ったことのない事務局の応接室みたいなところにたどり着いた。

「はい。リサのお仕事はここまでなのです。では、ではでは御機嫌よう」

 あ、はい、といってアタシらがソファに腰を下ろすと、いきなりリサがアサルトライフルの銃口をこっちに向けた。
 アタシは唖然とした。全力で規則違反じゃないか。

「あはは。冗談ですよぉ。なんだか健康そうな御体でしたから、撃ったらどうなるのかなぁ? って思ったのです。でもでも、リサは善良なアークスなのです。ですから人を撃ったりしてはいけませんということを知っているのです。では、御機嫌よう、御機嫌よう」

 おどろくアタシらをほったらかして、リサってキャストは出て行った。
 わけがわからん。
 アタシは正直冷や汗をかいていた。あのへんてこな女キャストなら、あそこで引き金を引いていてもおかしくはない気がする。

「なんだったんだ、あれ?」とアタシは魔女っ子に訊く。
「わからない」

 魔女っ子も首をかしげている。こいつがわかんないなら、アタシがわかるわけないわな。


――お呼びたてして申し訳ありません。では早速用件に入らせていただきます

 どうやら上級研究員らしいニューマンの男性が、頭の切れ味そのままの単刀直入さで勝手に説明を開始した。
 アタシらは黙ってそいつの説明を聴き、投影される映像資料をみる。
 なんとなく、説明は意味不明だったが、映像だけは見覚えがあった。
 10年前の、第1次ナベリウス惑星環境研究プラント。
 アタシの親父が、写っている。
 研究端末片手に、同僚達と仕事をしてる。
 あ、これはサプライズパーティの映像かも。
 これは……たぶん親父の研究対象だった原生生物たちの管理棟かな。檻の中でギャーギャー暴れてるウーダンに知性があるかどうか調べてるみたい。

 思わず、胸の奥があつくなる。耳元に自分の心臓の鼓動が聞こえてくる。

「パパ……」

 小さい頃のように、画面に向かって呼んでみる。
 魔女っ子がちょっとおどろいているようだけど、そんなのどうでもいい。
 残っていないと思ってた、あの頃の親父の姿を見れただけで、嬉しい。

「やはりお父様でしたか」と研究員が納得したようだ。

 そこで、映像資料は切れた。

「これは何なんですか?」

 アタシはちょっと早口な上級研究員をみる。

「先日あなたがたが持ち帰った遺留品のデータです」
「なんでそんなものを、あのARKSが?」

 アタシは半分白骨化しつつあった遺体を思い出す。

「あのARKSは一月ほど前、我々ナベリウス農業基盤研究ユニットが派遣した者です」

 あっさりと答えをくれて、びっくりする。こういうのって機密とかそういうのがあるんじゃないの?

「ナベリウス農業基盤研究ユニット?」

 魔女っ子が興味をそそられたようだ。研究とか学会とか、実験とか、そういうのが好きなキーワードらしいと最近わかってきた。他にも呪いとか、NINJAとかも好きらしい。

「はい。ナベリウスに入植が進められない最大の理由は、農業用の土壌を開発できないからなのです。それを改善するためのユニットが我々ナベリウス農業基盤研究ユニットです」

 ま、そういうプロジェクトなんだろうと聞き流しておく。土壌改良なんて明らかにアタシの守備範囲外だし。

「で、それとアタシの親父がなんか関係あったんですか?」
「関係というか、ご存命であれば貴女のお父様が我々の研究チーフになっていたはずです」

 へー。親父も案外偉かったんだな。

「親父は何を研究していたんですか? ひらたく頼みますよ」
「えー、貴女は土の三相をご存知で?」

 べつに馬鹿にしている様子は無い。たとえ話を作るレベルを考えているようだ。
 にしても、無神経というかなんというか。
 知るわけ無いだろ? ハイスクール卒をなめんなよ。

「こりゃ参ったな。かなり基礎から説明しないといけませんね」

 そういって、なんだかアニメっぽいイラストがホログラフとして現れた。

「これは我々研究所の広報が作った、ニューマンの幼稚園児向け資料です」

 そして、ニューマンの幼稚園児以下の知性らしいアタシは、十分ほど講義を受けた。
 なるほど、土っていろいろと大変なんだなというのは分かる。

「――まあ、大体分かりました。つまり親父はなぜか毒性作物化するナベリウスの土壌を改良するための堆肥研究用の難しい機械を作ってたと」
「ま、大枠はそれでよろしいかと。微積分が出来る程度の知性はお持ちのようだ」

 それは褒め言葉なのか?

「それで、アタシらを呼んだ理由がまったく掴めないんだけど」
「それについては、ただいまより説明いたします」

 そしてまた、映像資料が映し出される。
 今度は最近の映像だ。
 これは……ダーカーとの戦闘記録みたい。さっきアタシらを案内してくれたリサとかいう危ない女キャストが頭に観測ユニットをのっけて撮影したらしい。あれは案の定戦場で狂ってた。しつこいくらいにダガンという小型昆虫型ダーカーの関節を撃ち抜き、自由を失った様をみて大笑いしている。
 なるほど、ダーカー相手ならば、アタシと友達になれるね。日ごろ一緒にはいたくないけど。

「なかなか派手な映像ですね」
「派手さはともかく、この画面左端を見てください」

 アタシは示されたところをじっとみてみる。うっそうとした森の中に、なにやら人工物が見える。

「これが、第1次ナベリウス惑星環境研究プラントの残骸です」
「へぇ」

 そして、リサは人工物の残骸の中に入り込んでいく。錆びたフェンスだとか、古びたコンクリ壁を遠慮なくぶっ壊していく。なるほど、女は見た目じゃねぇな。

「そろそろです」

 研究員が注意を促す。アタシは画面に釘付けだ。
 だって、そこはアタシがよく知る場所だから。今でもよくおぼえてる。
 アタシはこのシェルターに入って、生きのこったんだから。

――ひらけ、ゴマー!

 リサが無理やりアサルトライフルの下部からグレネードをぶっ放して、壁を粉砕した。
 おいおい。強引だな。ま、電気系統なんか生きてないだろうからね。
 そして、暗闇を照らすためにリサがフラッシュライトをつけた。
 一筋の光の先に、白骨化した死体がある。
 まだ小さい少女のようだ。
 映像を見ているアタシは、動揺を隠せない。心拍数なんて戦闘中なんかよりずっとはやいし、なぜか指先が震えてる。

――IDを見つけたです。さすが、リサはいい仕事をしますねぇ。偉いのです

 IDには、ヒマワリ・ヒナタと書いてあった。
 アタシは頭の中で、何かが壊れる音が聞こえた気がして、そのまま倒れた。


 アタシはソファに寝かされていたらしい。
 腕には、点滴のチューブがささってる。なんの点滴パック? 医療用のナノマシンパックみたいだけど、よくわかんない。

「気がついた」

 魔女っ子がアタシを覗き込むと、ペンライトを目に当ててくる。

「ちょ、まぶしいんだけど」
「異常なし。脳神経が死んだかと思った」

 ぞっとすることを平然と魔女っ子がこぼすので、アタシは少々不安になる。
 ま、さっきのショックは確かに脳みそが爆発したんじゃないかと思ったよ。

「――上級研究員は?」
「確認したいことは確認できた、といって帰った。部屋の使用許可もくれた」

 おいおい。そりゃないだろ。
 アタシのほうがよっぽど確認したいことがあんだよ。

「魔女っ子、あの映像は合成とか、CGとかそんなんだよな?」

 いくつか希望が欲しいから、魔女っ子にすがってみる。

「その可能性は無い。なぜなら直接証拠がある」

 そういって、魔女っ子はアタシのささやかな希望を粉砕すると共に、端末にデータを送りつけてきた。アタシはあわててデータファイルを閲覧する。

――偽装人格計画報告書

 報告書の内容は、うんざりするようなものだった。
 いかにしてヒマワリ・ヒナタという架空の存在が作り上げられたかが事細かに書いてある。
 サンプルは確かに10年前事故死した実在の少女、ヒマワリ・ヒナタ。
 だが、それは前提にしか過ぎない。
 この計画の達成目標は、プレーン・ボディ、すなわち何の記憶も持たない遺伝子レベルから製造されたクローンに、焼付け記憶を与えることで人としてなんら支障なく生活圏を構築しうるかを研究するものだった。
 アタシ、クローンなんだ……と端末を持つ手が震える。

「その計画は、有機生命体のノアの箱舟」

 わけのわからんことを魔女っ子がいう。箱舟? そんなの知らないって。
 アタシはどうなるのさ? じつはアンタの記憶は全部ウソでーすなんていわれて平然としていられるわけないでしょ。
 アタシは、端末を思いっきり壁に放り投げた。

「動揺してる?」魔女っ子がのぞきこんでくる。
「当たり前だって! おかしくなりそう……」
「大丈夫。さっき安定剤は投与しといた」

 アタシは点滴のチューブを引きちぎる。
 魔女っ子が唖然としてる。

「――文明人とは思えない」
「うるさい! アタシは、人じゃなかったんだ……」

 頑張って思い出そうとする。
 いざ意識してみると、多くの記憶が欠落している。アタシはどこのハイスクールを卒業したんだ? 得意科目は? 苦手科目は? 友だちはいったいどんな奴だったんだ?

「この計画の意義は大きい」

 混乱するアタシを尻目に、かってに研究の偉大さを魔女っ子が語りだす。
 意義なんて知らないって。そんなことより……そもそもあの研究員は何者だ?

「あの野郎、本当は何者だ?」
「ORACLのサブフレームによると、ナベリウス農業基盤研究ユニットはちゃんと実在してる。だけど、
さっきの研究員のデータはない」

 やられたよ。手がかりナシだ。
 お先真っ暗だ。アタシは、いままで信じてたアタシとは違うんだ。

「アタシ、どうしたらいいんだろ」

 力なくうつむくしかない。嘘で作られた人生だったなんて教えられた場合の対処法なんて訓練は受けてない。

「あなたが誰であれ、あなたはARKS。それだけは間違いない」

 魔女っ子が、自分の端末でアタシのIDを表示する。
 確かに、アタシはARKSみたいだ。
 そうすると、アタシはARKSってものに限りなく寄りかかるしかない。

「そうか、アタシはARKSなんだね」
「もう一つ確実なことがある。わたしは、あなたが嫌いじゃない」

 さすがだよ。
 つくづくあんたの言葉はアタシを勇気づけてくれる。

 根暗で

 変な信仰で

 不健康な白肌で

 妙な御香炊いて

 呪いグッズ集めるあんた

 確かにウザくてどうしようもなくて、しかも人の話聞かないけど
 
 アタシもきらいじゃない。

 アタシは、確実なものの一つである魔女っ子を抱きしめる。
 うん。鍛えてないからちょっとやわらかすぎる。
 だけど、あったかい。

「苦しい。あなたの筋肉はわたしにとって危険」

 おい。失礼だろ、てめぇ。
スポンサーサイト

テーマ : ファンタシースターオンライン2
ジャンル : オンラインゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。