スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ファンタシースター計画31

 アタシはマイルームのデスクに座りながら、あれこれと思案を巡らせていた。
 ダリッド、という言葉の意味は、通常のネット検索では引っかからなかった。
 手元の端末でダメなら、ということで電脳図書館で検索をかけたけどアウト。
 さて、行き詰ったかとあきらめる前に、アタシはとりあえず同居している知識人に問い合わせることにした。
 とりあえずコンビニで買ってきたプリン片手に、やつの部屋のインターフォンを押す。
 ピープ音とともに、魔女っ娘の薄ら暗い消え入りそうな声が返ってきた。 

「なに? わたし、タイムマシンの研究で忙しい」
「おーい、魔女っ娘、プリン食わね? ドア開けてくれー」

 タイムマシン? ま、アタシみたいなやつには関係ない話題だからスルーする。
 しばしヤツは学問とプリンの優先順位、TODOリストの先後関係を悩んだらしいが、こう返してきた。

「……プリン、食べる」
「よっしゃ。バリスターズ・カフェで買ってきたラテもあるぜ」
「いま開けるから待って」

 しばらく間をおいて、急にドアがプシュっという音を立ててスライドオープンした。
 緊急時には建物ってのは簡易気密室となって、ドーム天井が吹っ飛んだとしても人が生きられるようになってる。
 宇宙航海時代の家ってのは、アレコレ緊急事態を想定して設計されるもんなんだよな。

 で、ヤツの部屋は相変わらずさまざまな儀式の道具及び学術系のデータ端末からひっぱりだした資料等が壁一面を彩っていた。
 よくわかんねぇ関数みたいなグラフやら数字やらが明滅してる部屋の中で、空飛ぶスパゲッティモンスター教団の愛好するヌードルの空き容器が転がったり……。
 あいかわらず、整理整頓って言葉はあいつにはないらしい。

「いつも通り、むつかしそうなことやってるんだな」

 アタシは部屋を見渡しつつ、勝手にテーブルの上を片づけてプリンを並べる。

「難し『そう』ではない。難しいこと」
「はいはい、すいませんね。言葉が適当で」

 軽くヤツの突っ込みをかわしつつ、荷物置き場になっていた椅子を本来の仕事に復帰させて座る。

「ま、とりあえず食おうぜ」

 と、黒い服ばかり着てる魔女っ娘にぷるんぷるんのプリンを勧める。

「いわれなくても食べる」
「おいおい、普通ありがとうとかなんとか言うだろ?」
「プリンを発明した旧人類に感謝を」

 アタシじゃねーのかよっ! と突っ込んだら負けなので、二人でもくもくとプリンを食う。
 最近のコンビニはバカにできねぇな、などとつまらない感想を述べたりして、ラテをすする。

「それでさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどよ」

 と、本題に入る。

「……なに?」

 アタシがまた後で食おうと考えていたもう一個のプリンを、ヤツが勝手に取り出して食い始める。

「あのさ、ダリットって言葉の意味を知りたいんだ」

 魔女っ娘はしばらくキレイなニューマン・フェイスの眉間にしわを寄せて、なにやら考えはじめた。
 考えるようなことなのか?

「とてもセンシティブな言葉。多義的で、解釈の余地がある。そして解釈の余地があるところには政治が入り込む余地がある」
「そんなむつかしい答えじゃなくてさ、アタシ向けにカンタンにご説明願えないか?」
「解釈の余地がある言葉を簡単にすることは、わたしの思想を語ることになる。客観的ではない」
「いやいや、科学者として客観性にこだわるのはわかるけどさ、今はそこら辺をこう、プリンの力で抑えてさ」
「……簡単にいうと、『見えざる者』または『触れざる者』。はるかなる旧人類の時代には被差別階級を指す言葉だった」
「差別? そりゃ人種差別みたいなもんか?」
「違う。構造としての差別。システムとして効率的に作られた、個人ではどうしようもないもの」

 魔女っ娘の口から『差別』というキーワードが出てきた時点で、アタシはピンときた。
 なぜ龍族にヤク流してる問題程度で、法務省種族問題介入課の課長が関心を持っちまったのかが分かったんだ。
 アジャンのイケメン野郎は、どうしようもない陰謀屋で野心家でもあるけれど、やっぱりアイツにも『正義』がある。
 ヤツの人生をどういう正義が貫いているのかは、ヤツの口から語られることはないけれど、ああいう『種族問題』について介入する仕事をやってるわけだから、ヤツはあらゆる『差別』と対決するっていう正義を選択しているはずだ。
 職業はある意味、人生の方向を決定するからな。
 となると、アジャンのやつの真の関心は龍族の薬禍ではなくて、むしろORACLE船団における『ダリット』の存在なのかもしれない。

「とりあえず、大枠はつかめた。ダリットって言葉は差別を表す言葉なんだな?」
「正確ではないけれど、便宜的にはそれでいい」
「で、アタシはそれについて調べたいんだが、どうやって調べていきゃいい?」
「わたしは大学の教養講義でその存在を問題視している教授から聞きかじっただけ」
「教養講義? あんた確か分子生物学と医学が専門だろ? あんまりそういうの興味なさそうだけど」
「科学とは方法であって、一つの証明の手法。真実ではなく、世界を解釈する技法。だから、教養もいらないわけじゃない」
「なるほどね。あんたはアタシなんかよりずっといろんなこと考えてるわけか」
「――人は望んだものしか見ることができない。見えているものは、その人が見ようとしているものだけだから」
「もしかして、それはダリットを調べるにあたってのアドバイスか?」
「そう。わたしはダリットの問題について深くコミットしていないから、あまり具体的な説明はできない」
「なるほど。知らないことを語ることは、想像することと同じだってことか」
「客観性が損なわれる。知らないものを語ることはファンタジーを紡ぐのと変わらない」 

 魔女っ娘は客観って言葉が大好きらしい。その割にはヘンテコな信仰心もあるわけだから、ニューマンの秀才少女ってのはワカンネぇな。
 っつーか、ただでさえ甘いラテに、さらにブラウンシュガー入れるその心境が分からない。

「じゃあ、アタシがこれからダリットについて調べていくにはどういうアプローチが適切なんだよ? ネットじゃ検索にヒットしないぜ?」
「検索しても分からないことこそ、重要な問題であり、隠された争点となる」
「そりゃ経営学の話だろ」
「意外。知ってたの?」

 ヤツはメスゴリラが言語を解することを知ったみたいな、好奇心に満ちた目でアタシを眺める。
 おい、それ失礼だぞ。

「あんたがアタシの部屋に忘れてった電子書籍端末に入ってたんだよ」
「勝手に読んだの? わたしのプライバシーを侵害してる」
「おいおい、いつから人の本読んだらプライバシー侵害にあたるようになったんだよ?」
「その人の人格は、本棚を見ればわかる」
「じゃあ、忘れてくなよ……。んで、アプローチについてなんだけど」
「そうだった。モンタギュー総合学術大学のリィア・カルカドール博士に会うといい。紹介状を書くから待って」

 魔女っ娘がデスクに固定されてた研究用端末の電子キーボードを、軽やかにタイプしていく。
 やっぱりアイツは惑星でアホみたいにテクニック使って原生生物やダーカー殺してるよりも、こういうインドアなインテリジェント・ライフのほうが似合ってる気がする。
 どうやらあっという間に文面は出来たらしく、本文は暗号マスキングされてたが、最後の魔女っ娘自身の電子署名は非暗号だ。紹介状なんだから当たり前だけど。
 ただ、『パステル・エイン博士より、親愛なるリィア・カルカドール博士へ。 追伸 こないだ貸した官能小説、早く返して』ってのは、なかなか興味深い。

「……どういうつながりなんだ? エロ小説貸し借りする仲って、おまえにとっちゃ相当深い関係だろ」
「その問いに答えることは、今回のあなたの調査と関係がない」
「いやいや、ま、気になるだけなんだけどさ」
「――わたしの数少ない、友だち。知的かどうかを考慮要素にすると、唯一の友だち」

 ちょっとうつむき加減に、恥ずかしそうにかたる魔女っ娘をカワイイやつだな、と思ったりした。
 が、実はすごく失礼なことを言われていることを悟り、アタシは評価を取り消した。

「おい、アタシも知的だろうが」
「あなたはわたしの大事な友だちだけれど……決して知的ではない。わたしが証明する」
「いや、そんなこと証明されましても……」

 アタシはこのギャンブル中毒の魔女っ娘を殴って、プリンを吐き出させてやるべきかもしれない。
 だけど、さすがに紹介状まで書いてもらったんだから、そんなことはしない。
 だって、アタシは理性あるオトナの女だから。たぶん。
スポンサーサイト

テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。