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ファンタシースター計画30

 都市船のなかをブラつくのは、赤ん坊がゆりかごの中を確認するのと大して変わらない。
 代わり映えのしない小さな世界があって、そこで生活する人々の暮らしは「守られている」ってことだ。
 ARKSは365日ARKSなわけだけど、なんだかんだで契約がなければ義務は生じないっていうお気楽な商売だ。
 仕事なんざ物欲に任せて惑星に降り立ってあれこれ報酬を期待するか、あるいは研究者どもの興味関心を引く事象を調査するくらいだ。
 それぞれのARKSはいつも何かしら誰かと絡みながら、大なり小なり、そういうオシゴトをこなしている。
 けれど、仕事しない日は休日。
 気でも狂ったみたいに毎日毎日惑星と船団を往復してるやからもいるけれど、そういうのは惑星に行くのが楽しい新米の時期だけだ。
 新米じゃなくなる時期ってのは、別に強くなったときじゃない。いわばARKSって存在や自分の行為について無関心になったときだと言っていい。
 
 そう。無関心だ。

 アタシがこうやって居住艦のドーム天井をぼーっと見上げてれば、星空をゆく大船団の列がうっすらと見える。
 環境偽装モニタシステムは、今日は晴天です、ってな感じの青空を映し出してるけれど、それはドーム天井が科学のパワーで見せてくれる虚像だ。
 そんな虚像に包まれながら、この船は今日も船団のすみっこ、ノアの方舟の真似事をしながら大宇宙を突き進む。
 とはいえ、宇宙大航海時代だろうとも人間ってのは相変わらずドーブツだから、飯も食うし、セックスだってするわけだ。

 みんな、なにかと無関心なのに、欲望はそこにあるってことさ。

 欲望はそれ自体が意志でも持ってるみたいに、勝手に方向性を持って一定の規則や秩序を生み出していく。
 つまり、欲望ってのは決して無秩序なカオスなんかじゃないってこと。どっちかっていうと本能的でありながら統制されているわけだ。
 この船の内側にたまったニューマン、キャスト、ヒューマンたち人類の欲望は、ちゃんと船の中の一部に集約されている。
 アタシは、いま、そこに向かってるってる。一人でね。
 


 欲望の色はいつも刺激色。原色のとめどないギラツキをそのまま点滅させるネオンがこの区画を照らし出す。
 アタシがやってきたのは2番艦ウルの中で唯一というべき歓楽街『ウルコーマ』だ。
 雑居ビルが無秩序に(つまり、行政府の介入があまりないってことだ)広がり、路上には露骨に性的魅力を主張する男女たちがうろついてる。
 店舗に飲み込まれていく客たちは、男女問わず、種族は関係がない。ここはキャストがニューマンを抱き、ヒューマンがキャストを楽しむろくでもない場所だからな。
 アタシが三歩進めば、一回はオネエチャンやイケメン野郎に声をかけられる。
『遊んでかない?』『楽しいこと、しようよ?』などなど。
 アタシは聖人君子でもピュアな聖女でもねぇから、別に遊んだって構わないわけだけど、今はパスだ。
 とにかく、今のアタシには『シゴト』がある。
 法務省の介入課長がヤクの流れを気にしていた点が気になって、勝手に裏付け捜査を始めたってわけさ。
 ARKSに治安介入権なんざないし、べつにそんなもん捜査する義理も義務もねぇんだが、惑星でヴォル・ドラゴンからテトラヒドロカンナビノールが検出されたとなれば、ちょっと話が変わる。
 魔女っ娘いわく、ゲッテムだか何だかとアタシがバトルしたあの惑星には、確実にヤクが蔓延しつつあると言っていた。
 法務省のほうからのデータ提供でも、それが裏付けられてた。
 ま、異星人たる竜族どもがヤクを欲しがってるんなら、それを売る奴が出てくるってのは市場原理にしか過ぎない。
 ただ、問題は売人がARKSってことだ。
 で、その売人のARKSをしょっ引いたっていう連絡を『あの筋』から受けたから、アタシはわざわざウルコーマなんていうクソなところに出向いてきたわけだ。

「あら、あんた。遅かったじゃない? とりあえず売人連中は縛り上げてあるけど」

 アタシが目指していた『ふぁんたずま』っつークラブの入り口には、あの筋の女キャストが退屈そうに立っていた。
 むろん、正規軍特有の深い緑のボディで。
 ここで重要なのは、目に見えているものだけを信じてはいけないってことだ。
 ネオンの光によって、吐しゃ物とか、こぼしたビール、喧嘩騒動で散った血痕なんかで汚れた路面に、たまに影がさすことに気付かなくちゃだめなんだ。
 アタシが小汚い路面を見る限りだと、一個分隊くらいの正規軍キャスト歩兵が例の『メタマテリアル迷彩』によって、周囲と同化してるみたいだ。
 ほら、いまもアタシと『見た目はキレイ』な女キャストである准将が無防備に立ち並んでるのをみて、声をかけようとした酔っぱらいの若者たちが『酔いすぎて眠くなっちゃった』みたいだ。
 バタバタとキタネエ路上に突っ伏して、うんともスンとも言わなくなっちまった。

「キァハ准将。あんたの部隊が治安任務に投入されてるなんて知らなかったよ。相変わらず物騒な連中つれてるんだな」

 アタシは軽く挨拶をする。

「もともと警察業務ってのは軍隊のシゴトだったのよ。歴史が進むにつれて、憲兵制度から警察制度へと移行したけど、それは決して進化したわけじゃなくて、便宜上の問題よ」
「ご教示、痛み入るね」

 教養のないアタシは、てきとうに答えておく。

「で、あんた、法務省のアイツの飼い犬になってるわけ?」

 キァハ准将がアタシを見据えていった。相変わらず冷たい機械的な瞳だったけど、なにやら憂慮すべきことをいっぱい抱えてそうな雰囲気もあった。

「飼い犬ってわけじゃねぇさ。ただ、惑星にヤク卸してるヤツの顔を拝んどきたかっただけだね」
「わざわざクズARKSに拝見してどんな情報を知りたいのよ? ヤクの流れ自体は信用ならない連中がつかんでるでしょ?」

 准将が言う『信用ならない連中』ってのは法務省種族問題介入課のことだ。

「そりゃまぁな。ただ、アタシが聞き出したいのは『ヤク』の払い下げを見逃してるARKSのお偉いさんってやつが、いったい誰なのかを知りたいんだ」
「へえ。知ってどうするわけ?」
「ARKSって組織が信用ならねぇ組織かどうかを再確認して、さっさと引退する時期を決める」
「……嘘ね」

 あっさりと嘘を見破られるところを見ると、アタシにはうそつきの才能はないらしい。

「わかったよ。正直に言う。アタシはARKSが何か隠してるんじゃないかって気になってるのさ。いまだに進まぬ惑星探査計画と入植計画。それに今回のヤク騒ぎ。まだまだ叩けばホコリが出そうな組織じゃねぇか、ARKSってさ」

 アタシが正直に理由を話すと、例の冷たいまなざしのまま、こんな忠告をくれた。

「理由があるから、隠してるのよ。隠された真実が重要なわけじゃない。隠している理由こそが重要。その理由次第で、あんた消される可能性だってあるわ」
「ま、こないだも切り捨てられかけたからな」

 准将の警告を聞くと、例のクソ寒い雪の大地を思い出す。

「――せいぜい、首を突っ込んでみればいいわ。あんたが深淵を直視するとき、深淵もあんたを見てるのよ。闇に頭から突っ込んだなら、頭差し出したも同然よ」
「ご忠告、痛み入るね」
「あっそ。じゃ、入んなさいよ。正規軍と検察にはARKSを勾留・公訴提起する権限ないから、すぐにARKS法務部の使いが来るわよ」
「なるほど。タイムリミット付ってことか?」
「ある程度までは粘ってあげるけれど、あんまり期待されても困るわ。さっさと聞いてきなさい」
「あいよ。恩に着るぜ」

 アタシはキァハ准将のわずかばかりの心遣いに感謝しつつ、ヤクの売人ARKSの顔を拝むために、ガサ入れがあったクラブの扉を開けた。



 拘束されたARKSは三人。
 一人はキャストの男で、あとはニューマンの女だった。ロリロリなニューマン娘どもで、アタシは正直うんざりした。
 特に、ロリ娘二人組は明らかに双子としてこの世に生み出されたタイプだった。

「ロリ娘二人組が主犯みたいだよ。キャストの男はただの護衛役。あのキャスト、派手に暴れてくれたから、腕をつぶしてやったよ」

 そんなことを『尋問』していたであろう正規軍の大尉、つまりキァハの副官たるニック大尉があっけらかんと言った。
 こういう戦闘サイボーグみたいなやつらに警察業務まかせて大丈夫なのかと、言いたくもなる。

「ありがとう、ニック大尉。あとはアタシがやる」
「うん。じゃ、がんばってね。あと、ニューマンってのは足の爪がはがれやすいんだねぇ」

 当然、正規軍としても知りたいことがあったんだろう。それなりの『尋問』をしたらしい。
 そのやり口は純粋な内務警察のやり方なんかとは全然違う。軍隊特有の、捕虜から重要な情報を聞き出すアレだ。

「……やりすぎだろ?」
「そうかな? ボクらには理由があるし、国家非常事態宣言レベルの犯罪を予防するためだから、違法性はないよ」
「そうかよ。あんたらはホントに容赦ないな」
「あたりまえだよ。ボクらは人類を守らなくちゃいけないからね。そのためには人類に敵対する有機生命体には処理をうけてもらう。じゃ」

 どうやら、正規軍からすれば、このヤクの売人たちは人類ではなく有機生命体という別の存在らしい。
 そんな危険なニック大尉が部屋から出て行った。
 すると、身を寄せ合っていたカワイソウ(?)な売人どもが、リラックスしたみたいにアタシに話かけてきた。

「あんたARKSやんな。 ウチらを引き取りにきたんやろ?」
 
 えらく訛りのきついロリ娘だな。

「まぁな。手続き上、いくつか質問させてもらうぜ。そうすりゃあとは病院で足の治療だ」

 アタシが口から出まかせいうと、奴らは安堵したみたいに正規軍のやり口をののしった。

「まったく、あいつら人やない! 鬼や、鬼」
「オニや、オニッ!」と双子のもう一方も呼応する。
 一方、腕をつぶされたキャストは寡黙にうなずくだけだ。

「んで、どっからヤクは誰から買い付けた? あんたらを守るために、ヤクの入手ルートを『不存在』にする必要がある」
「なんや。いつもんトコに決まっとる。ダリットや。ダリットどもから買い付けてな、ちょちょいと薄めてポンや」

 ダリット? アタシは知らない言葉だけど、重要な存在だ。覚えておかなければ。
 もっと、いろいろ聞き出したいが、これ以上質問する時間があるか? いや、ないだろう。
 捜査の端緒は思ったよりも早く手に入れることができた。そのダリットどもを当たれば、おのずから背景事情に食らいつくことができるだろうな。

「よし、もう十分だ。アタシは行動を開始するから、あんたらは迎えのARKSが来るまで黙秘しろ」
「そんなっ! あいつらのやり口で黙秘なんざできるわけないやんっ! 死んでまうて!」

 泣き言たれるロリ娘たちをほったらかして、アタシはさっさと派手に酒瓶が吹っ飛んだバーカウンターのほうに行き、そこから裏のキッチンへと入る。
 裏のキッチンの調理台には死体が寝ていた。ガサ入れの時に巻き添えを食らったのか、それとも『意図的に』始末されたのか分からないが、ギャング風のヒューマンとキャストが内臓丸出しにされてた。キャストの人工臓器に興味があるやつなら、その精緻さに驚くだろう。アタシは興味なんてないから、スルーだけど。
 マジで正規軍はヤバいな、と思いつつ、アタシはキッチンからつながる食材搬入のための裏口に出る。
 裏口には正規軍のキャスト兵士がいたが、何も見なかったように、無言でアタシの逃げるべき通りを銃口で示してくれた。
 アタシはありがとよ、と述べて、示された通りに沈んでいく。
 欲望の町に沈むなんて簡単なことさ。浮ついた調子で、人ごみの流れに身を任せればそれでいい。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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