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ファンタシースター計画29



 龍を、殺す。
 それは昔っから、旧人類の遺伝子に刷り込まれたある種の妄想みたいなもんだ。
 こんな馬鹿みたいな妄想を旧人類は、自分をいじって新たな三種類の人類になっちまった後でも、うっかり消し忘れたんだろう。
 龍を、殺す。
 この単純な言葉の中に、アタシら人類が『殺す』ということを常に行ってきた動物であることを強く思い出させる。
 だから、アタシは目の前に現れたヴォル・ドラゴンなんかを見たって、驚くよりもむしろ、殺さなくちゃいけないという衝動に駆られる。
 ドラゴンの咆哮と、アタシの衝動は同じ重力の下にある。
 いかにやつの声量が洞窟をぶっ壊しかねないものであったとしても、アタシの内にある人類誕生以来の衝動の深さにはかなうまい。
 ゆえに、アタシの足はふるえることもなく前に出る。

「魔女っ娘! 援護しろっ!」
「もうやってる」

 アタシがヴォル・ドラゴンの小高い丘みたいなバカでかいカラダの下に滑り込むよりも早く、魔女っ娘の魔法(テクニックだっけか?)が到達した。
 氷塊をどっから生成したのか知らねえけれど、棘となった氷の欠片がずぶずぶとヴォル・ドラゴンの鱗をえぐって体内に侵徹していく。
 アタシ? アタシは原始人だからね。
 やつの腹の下くぐって、後ろ足んとこまで駆けて、ぶった切ってやるのさっ!
 ちょっとした規模のでかい料理をするみたいに、アタシの包丁であるレイデュプルなんて安物で、鱗と鱗の隙間に刃を滑り込ませる。
 ――ダメだ。全然手ごたえがない。
 鱗の下にある分厚い皮膚、そして筋肉と脂肪の層は、アタシの刃を決して筋や神経にまで至らせてくれない。

「Όλα τα συστήματα σύνδεσμο για oracle.La-Νερό.」

 頼れる魔女っ娘が盛大な詠唱を行ってくれた。
 氷の竜巻が遠慮なくドラゴンの体をボコボコにしてくれる。
 ああ、もちろんアタシのことなんか無視してるから、アタシまで氷にタコ殴りにされかけてるけどな。
 気合と根性で伏せたり身をひるがえしたりして、まぁ、曲芸師の要領で回避してますよ。

「魔女っ娘! 勘弁してくれ! アタシまで死んじまうっ!」
「大丈夫。あなたは死なない。わたしが守るから」
「ばかやろーっ! 守れてねぇから叫んでるんだろうがっ!」

 いててっ! 死ぬ、死ぬって!
 欠片みたいな氷食らってこの痛さなんだ。
 ヴォル・ドラゴンをタコ殴りにしているでっかい氷塊なんか喰らったら、アタシのいたいけなお腹の中身がお尻とか口から出ちゃうっ!
 内臓破裂はカンベンしてくれっ!

「……準備よし。ヒマワリ、やつの首によじ登って」
「出来るかよっ! お前の竜巻のせいで死んじまう!」
「大丈夫。人は簡単には死なないから」
「死ぬよっ! 体よりデカい氷塊喰らったら死んじまうに決まってるだろ!」
「いえす、ゆー、きゃん」
「ち、チクショーッ! やってやるさ。見てろよ、バカの底意地ってやつをよ!」

 アタシはグリップのスイッチを切り替えて射撃モードにし、ドラゴンではなくアタシに向かって飛んでくる氷塊を撃ちながらダッシュする。
 燃えろっ! アタシのぴちぴちのふとももっ! 若さのハリとツヤをなめんなよっ!
 大腿筋が大活躍し、背筋が仕事をこなし、上腕二頭筋や側頭筋がハーモナイズしてくれる。さすが、リハビリは成功だ。
 けど、ドラゴンのバカが、じたばた暴れるせいで、尻尾をもろに喰らっちまう。

「ファック!」

 叩きつけられた尻尾の質量に加え、吹っ飛ばされた先にあった溶岩の中に放り込まれちまう。
 あっちっち、なんてレベルじゃありません。パンツ燃えるって。乳首焦げるって。

「ヒマワリ、早くして。つかれてきた」などと、魔女っ娘が泣き言ほざいてやがる。
「派手な魔法ばっか使ってるからだよっ!」
「あなたが仕事しないから。早く、片づけて」
「はいはいすいませんねっ! ちゃんと殺させていただきますよっ!」

 なにメイトだかわかんねぇが、とにかく痛みが消えりゃなんだっていい。
 体を覆うフォトンフィールドがリチャージされるのを確認して、アタシは暴れちぎるドラゴンに迫る。

「ほらよ、アタシを喰らいな? おっぱいも、お尻もキュートだぜ?」

 レイデュプルの銃口をやつの頭に向けて撃ってやる。
 いやがらせにしかならないが、動物相手ならこういう方法もありだ。
 案の定、ヴォル・ドラゴンのやつはアタシに向きなおって、その悪趣味なくせぇ息をたぎらせた牙ズラリな口を、こっちに向けてくれる。
 そして、大好き噛みつき攻撃。ぴちぴちのアタシを噛み殺しに来る。
 オネェさんが相手してやるよ!

 アタシはやつの噛みつきをダンスするよりも気軽に躱して、馬鹿でかい角につかまってやる。
 そして頭によじ登り、揺れる吊り橋みたいに不安定な首の上を走り、魔女っ娘が指示した場所であろう部分を見つける。
 氷によって吹っ飛ばされたのか、ビクン、ビクンと脈打つ太い血管が露出しているところがあった。
 命が、そこを流れているんだろう。魂の住まう脳に、毎日欠かさず何かをデリバリーしてるんだろうな。

「苦しい死に方だ。すまん」

 アタシは、薄く、すべらかな刃でその血管を斬り裂いた。



 のた打ち回るドラゴンが次第に弱っていき、身動きがとれなくなり、次第に息が細くなるのをアタシたちは見届けた。
 返り血にまみれたアタシは、苦痛と敵愾心に満ちた奴の瞳をじっとみていた。次第に動物としての敵愾心が消え、ただ救いでも求めるような瞳になっていくように思えてきて、イヤになる。
 
『対象の生命反応消失ですっ! やりましたねっ!』などとオペ子が能天気なことを言ってくれる。
「うるせーんだよ、ビッチが」

 アタシは思わず口にしてしまう。

「ヒマワリ。なにをいらついてるの?」と、魔女っ娘がじっとアタシを見つめてくる。
「別に。また、殺したなって思っただけだ」
「そう。これからもそれが続く」
「クソな仕事だな」
「あなたは分かってない。命を奪って生きていくのが、人。そこには理屈はいらない。覚悟だけが必要」

 ああ、そうさ、おまえの言うとおりなのさ。だけどよ、アタシにはその覚悟が未だに据わらないんだ。
 いつもそうだ。淡々とプロフェッショナルみたいに対象を片づけられる正規軍の連中みたいになれないアタシは、本当に駄目だと思う。

「なんだおまえら? このオレに黙ってドラゴンをぶち殺しやがったのか」

 なんだか知らないが偉そうな男の声が聞こえた。声のほうを見ると、ゴツイ野郎と、陰気くせぇ姉ちゃんがいた。
 普通のそこら辺のARKSではなさそうだ。筋肉たぎらせて殺気満々。
 こりゃ、ヘンタイかなんかなんだろう。隣にいる目が髪で隠れてる姉ちゃんを夜な夜な痛めつけてそうなロクデナシだ。

「誰だ?あんたら。増援ならいらないぜ。もう、殺した」
「ああ? 偉そうな口きく女だな。そいつは俺が殺して、ぶっ潰すべき獲物だったんだよ。今日のメインディッシュだな」
「そうかよ。奥に行きゃまだいるかもしれないぜ? 狩りたいならさっさと行けよ」

 アタシが洞窟の奥をアゴで示してやると、ゴツイ男はにやりと笑った。

「おまえ、いい女だな。血の匂いがプンプンするぜ」

 そりゃまぁ、返り血浴びてるしな。だけど、アンタなかなかアブナイ発言してるぜ?
 アタシのヘンタイレーダーが、コイツはサディストのヘンタイで、巨根を自慢するタイプのマッチョ野郎だと認定した。

「決めたっ! おまえを食うことにする」
「ゲッテムハルト様、ARKS同士の戦闘は厳禁とされておりますが」
「うるせぇ、シーナっ! てめぇはすっこんでろ!」

 ゲッテムハルトとかいうマッチョ野郎は、シーナっていう女を殴り倒した。
 マジかよ。こいつ、女に手ぇ上げるロクデナシなのか?
 
「許せない」

 思いがけないことに、魔女っ娘のやつが杖をもってガッデムだかなんだいうマッチョ野郎をにらんでる。

「あぁ? 見覚えあるぜ。お前、確かレイプされてよがってたっていう小娘だろ? いやよいやよも好きのうちってか」

 その発言は、アタシをキレさせるに十分だった。
 レイデュプルの刃先を遠慮なくやつに向けてやる。

「クソ野郎だな。今の発言は死んで詫びてもらわねぇと」
「いいぜ、ねぇちゃんよ。オレは世界をシンプルに考えてんだ。強いか、弱いか。弱ければ奪われて、強ければ奪う権利があるってな」

 ガッデムだかゲッテムだか知らねぇけど、やつは珍しい武器を量子転送させて実体化させた。
 拳から腕までを覆う金属とフォトン工学の塊。ナックル型近接格闘兵装だ。
 格闘教練の時に、誰かが使っていたのを覚えている。格闘術をそのまま殺人兵器に転用しようっていう野蛮なブツだ。

「さぁ、こいよ。おまえが弱い女なら、屈服させてやる」

 アタシは何も言わず、ヤツに突く。
 切るんじゃない。だって、殺すための戦いだから。

「おうおう? おまえ、ぬるいARKSじゃねぇな。初手から殺しに来たのは三人目だぜ」

 ヤツは右腕でアタシの刃を軽くはらって、左でジャブをかましてくる。
 さすがシーナとかいう女を殴り飛ばしただけあって、アタシのいたいけな顔を遠慮なく殴りつけてきやがった。
 くらくらするし、鼻血はでるわで、アタシはマジ切れせざるをえない。

「このマッチョ野郎。一生ち○こ使えなくしてやるっ!」

 射撃モードに切り替えて、容赦なく連射する。
 だが、ヤツはクソ野郎のクセに中々の腕前で、ナックルにフォトンフィールドを集めて、見事に弾をガードしたりする。
 それに、マッチョ野郎のクセにちょこまかとステップかましやがるから、こっちの弾も外れる。

「はっはっはっ! いいぜっ! 最高だっ! おまえみたいに殺しにかかってくるARKSこそ、本物だ」

 やつは軽やかにアタシの弾幕をかいくぐって、スマートで無駄のない右ストレートをアタシのアタマめがけて叩き込んでくる。
 さすがに顔潰されて死ぬわけにもいかねぇから、全力でその拳を叩き斬ってやる。
 ストーレートと、アタシの刃が科学の力による鍔迫り合いになっちまった。

「いいパンチだな、ガッデム野郎っ!」
「ビッチの子守のわりには、殺し甲斐がある女だな」

 アタシは刃をわずかに傾けるとともに、身を沈ませる。
 自分の力を前方に逃がされたマッチョ野郎は前のめりに体を突っ込ませてくる。
 アタシは奴の腹筋と掻っ捌いてやるために、すり抜けざまに刃を走らせる。

「ちょろいんだよ。女の動きはなっ!」

 とんでもない身体能力だった。
 やつは跳躍してアタシの刃をかわしやがった。
 アタシはすぐに振り返る。
 けど、そこにはヤツのアッパーカットがアタシの顎めがけて飛んできてた。
 間に合えっ! と腹と背に力を入れて反り返りながら躱すとともに、その力を転用してサマーソルトを繰り出す。
 伊達に格闘訓練ばっかりしてたわけじゃねぇンだよ。
 
 けど、ヤツはサマーソルトをバック転であっさりと躱して、お互いの間には距離が出来た。
 アタシは再度射撃モードに切り替え、ヤツの頭を狙って構える。

「ゲッテムハルト様。そろそろお時間でございます」

 さっき殴られてうずくまっていたシーナとかいう女が、よろよろと立ち上がりながら言った。

「ちっ。おまえは、オレが食う。それまで生きてろよ。ビッチが」

 やつが長指を立ててくるので、アタシもこう言い返してやる。

「ケツに気をつけなよ。マッチョ野郎。ホモなんざいくらでもいるぜ?」
「言ってろ!」

 やつは陰気な女が出したテレパイプを使って、どっかへと消えていった。
 で、陰気な女のほうは、わけがわからんことに、アタシに一礼してから、そのパイプを使って空間から消滅した。

「パステル。わりい。謝らせることはできなかった」

 アタシはヤツの心を傷つけた相手をボコボコにしてやれなかったことを恥じる。
 だから謝ろうとヤツを探してみるが、魔女っ娘のやつはアタシとゲッテムハルトのことなんかどうでもいいかのように、龍の死体に登ってサンプルを集めたりしていた。
 そして何よりも驚いたことに、ドラゴンを倒すことで得られるはずの報酬一式が消えていた。

「あ、あの、魔女っ娘さん?」
「なに?」と、ヤツはごそごそとドラゴンの血液サンプルを検証してる。
「アタシはさ、アンタの名誉のために刃を振るったわけですよ、まるで女騎士のように」
「感謝してる」
「そ、そうか。で、あのさ、ヴォルドラゴンを倒すとさ、メセタとかそういうのが出るじゃないですか。ARKSからさ」
「・・・・・・たぶん、風で飛ばされた」
「あり得ねぇよ! 非実体の量子データだぞっ!」
「わたし、しらない。あなたの端末のセキュリティが緩いから誰かにハッキングされたとか」
「・・・・・・なんでセキュリティが緩いって知ってるんだよ?」
「レイプされたのを罵られて傷ついたわたしを疑うの? なんてヒドイ人」

 魔女っ娘はうう、とドラゴンの死体の上で丸まってしまった。肩を震わせるヤツを見て、アタシは申し訳ないことを言ってしまったと思う。
 そうだよな。魔女っ娘みたいなちょっとした世間知らずのコミュ障で、ちょっと最近ドゥドゥんところのギャンブルにはまってるやつが、金にがめついわけないよな。
 ほら、それに熱心な宗教者じゃん。

「いや、わりぃ。つい疑っちまった」

 アタシは龍の死体の上でめそめそしてる魔女っ娘の肩に手を置く。

「わたし、ヒマワリのこと信じてたのに」
「すまんかったって。たぶんあれだ、ARKS本部のバグかなんかだって」

 それから、魔女っ娘はヴォル・ドラゴンに対してなんじゃら祈りだかわからん宗教的なことをして、死体から降りた。
 アタシもそんな彼女の後に続く。

 テレパイプをだして、キャンプシップを経て、なじみのARKSロビーに戻ってくる。
 そこで魔女っ娘は『わたし、用があるから』といそいそとことことアタシから離れていった。
 アタシは先に帰ってると言いながらも、ヤツの跡をつけた。
 案の定というべきか、魔女っ娘はあの胡散臭いオッサンのところにいた。そう、ドゥドゥだ。

「・・・・・・計画通り」などと、普段は見せぬニヤつきを見せた魔女っ娘を見て、アタシは確信した。

 犯人は、おまえや。
 やつがドゥドゥにメセタ・カードを出した瞬間に、アタシは魔女っ娘に向けてフットボールみたいなタックルをキメテやった。



 ほんの出来心だった。反省はしていない、などという魔女っ娘のギャンブル中毒ぶりにあきれたが、なんだかんだで命助けてもらった恩人でもあるから、この件は流すことにした。
 で、お互いに仲直りしようってことで、一緒にバショーにある銭湯に行って裸のつきあいってやつをした。
 そこで気づいたんだが、やつはアタシよりも発育がよかった。運動不足だからそんないらねぇところがデカくなるんだよと言ってやったら、なんだかとてもスッキリした。
 奴も何やら勝ったみたいな目をしていたけれど、それはまた別の話だ。


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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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