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ファンタシースター計画28



 あらためて言うまでもなく、アタシらの人生は地獄色で染まっている。
 こうやって魔女っ娘とファミレスでランチを食ってたって、明日は火山の溶岩で溶けてるかもしれない。
 アタシらが食うのは、今日を生き延びて明日を迎えるため。
 毎日毎日、食って、戦って、休んで、また食うわけだ。これを地獄色と言わず何色だっていえばいいんだ?
 人生はバラ色で、何もかもがうまくいって、心が乾くことなく一生を終えることができるヤツがこの世にいたとしたら……
 アタシはそいつから金を恵んでいただきたい。

「この値段でこの味か……お得かもしれない」
「そう? わたし手作りのハンバーグのほうが焦げ臭くておいしい」

 魔女っ娘が、おまえあのハンバーグわざと焦がしてたのか? 
 料理がうまい癖にハンバーグだけヘンなのになるなぁと思ってたけど。

「ま、味覚はそれぞれだよな」

 アタシはハンバーグをかちゃかちゃとナイフで切り分けて食う。
 うん。やっぱうまいぞ。地球時代から長年続くチェーン店だけある。

「……おやおや、ヒマワリさんにパステル様ではないですか。ご無沙汰しております」

 と、太ももがまぶしい店員に連れられたエリート・イケメン・コンプレックスがいた。
 相変わらず仕立てのいいスーツにシワひとつなく、ぴっかぴかの革靴を履いてやがる。

「アジャンか。相変わらず法院だか法務省だかで出世街道をマラソン中か?」
「ははは、相変わらず手厳しいですね。ご一緒しても?」
「魔女っ娘がいいならな」
「――ドリンク・バーおごってくれるなら許可」
「見くびられたものです。レディたちに安いコーラも奢らないほど私はダメ男ではありませんよ」

 やつはそういって、アタシらが座っていた四人掛けテーブルの一席を占有した。
 こんな大衆向けファミレスでも、やつが座ればちょっとした洋食店にでも来たような雰囲気に変わる。
 つまり、やつはちょっとイケメンすぎて、品もよすぎるってことだ。

――ご注文は? と店員が尋ねる。
「日替わりランチセットをお願いします。あと、ドリンク・バーを三人分」
――かしこまりました。ドリンクはご自由にご利用ください

 と、やつは約束通り注文を済ませる。

「で、あんたも昼飯かい?」と聞いてみる。
「ええ。あと、私の官職は法務省種族問題対策局第二介入課長です。お忘れなきよう」
「メンドくせぇ。法院も法務省もそんなにかわんねぇだろ」
「ま、確かに。やることは基本的に汚れ仕事と覗きに盗聴。ウェットなお仕事です。心はドライになりますが」
「ふーん」
――お待たせしましたーっ。ランチセットになります!

 ウェイレスのオネェちゃんが、適当な感じでアジャンの前に本日の日替わりランチであるバーガーとサラダ、そしてポテトの山を置いて行った。
 意外とジャンク・フード派なのか? このイケメンは。

「実はですね、私はかなりバーガーやサンドイッチが好きでしてね」
「訊いてねぇよ」
「ぜひ今度ランチにお誘いしていただけるなら、ヒマワリさんお手製のバーガーをですね」
「――ちっ。魔女っ娘と宗教的祭日にでも呼んでやるよ」
「はは。ありがとうございます」

 やつはニコニコとうまそうにサラダを平らげたあとにバーガーにかじりついた。
 たしかに、あんまりにもうまそうに食うんだから、やっぱり好きなんだろう。

「で、まさかただランチのためだけにアタシらに接触したわけじゃないんだろ?」

 と、話を切り出してみる。
 こいつは船団政府の汚れ仕事を請け負う部署のニューマンだ。アタマも切れるし、腕も立つ。
 そんなやつが一介のARKS風情とランチタイムを過ごすために出てくるはずがない。
 こういうのは、仕事の虫みたいな奴のランチってのは、自分のオフィスでサンドイッチとコーヒーって相場が決まってる。

「まぁ、そう警戒なさらずに。ドリンクでもとってまいりましょう」

 やつがそう提案するから、アタシはエスプレッソを頼み、魔女っ娘は角砂糖が七つ入ったアメリカンを頼む。
 どんだけ甘党なんだよと言いたいが、「わたしの脳はあなたより高尚だから」とか言われそうなので止めとく。
 しばらくして、やつが器用に三つのマグカップを抱えて戻ってきた。
 それらを並べると、いよいよ本題と相成るわけだ。

「実はですね、お二人に相談がありまして」

 出たよ、相談。ARKSの中にも子飼いがいるはずなのに、なんでかこいつはアタシらを使いたがる。

「相談ね。相談に乗らなかったらどうなるのかだけ、先に教えてくれねぇか?」
「――ミカンさん、でしたか? 可愛いティーンエイジャーですよね。あんなに可愛いと夜道は実に危険ですね」

 アタシの命の恩人の名を平然と口にしやがった。やっぱりこいつは危険な輩だ。
 ミカンを助けてくれるように手を貸してもらったのは認めるが、コイツが助けるたのは善意だけではなく、利用する意思が当然にある。
 そう。組織に属してる連中は、アジャンもキァハ准将も、基本的に状況を利用したがる。
 厄介なのは、ただの純粋な計算高い悪人ってわけじゃなく、善意も、自分の正義もある連中であるってことだ。
 だから、簡単に批判したり、糾問したりできない。奴らには為さねばならぬ正義があるんだろうさ。
 そのためだったら、自分の魂くらい簡単に悪魔に売り払うに決まってる。

「わかった。じゃ、さっさとその相談事とやらを話してくれ」
「お話が早くて助かります。実はですね――」

 アジャンのやつの話をまとめると、こうだ。
 最近、惑星アムドゥキアの龍族に、テトラヒドロカンナビノール(非合法薬品)を卸しているARKSがいる。
 そいつら自体はただのシケたヤクの密売人だから、法務省としては放置を決め込むらしい。
 ただ、ヤクを流している連中の元締めが、あきらかにARKSの上層部とつながりがあると思われる資金の流れがあるとアジャンたちの捜査でわかったらしい。
 捜査の目的は逮捕でも正義の執行でもなく、そういうネタをちゃんと掴んでいるという事実自体に意味があるものであって、これ以上どうこうするつもりはないとか。
 しかし、アジャン自身の好奇心から、龍族に卸されたヤクが一体何に使われているのかを調べたくて『とても悩んでいる』らしい。
 つまり、アタシらに惑星に降りて火山一帯を調査し、ヤクがどんな風にエンドユーザーに使用されているか『市場調査』をしてくれと。

「話は分かった。けどよ、なんで龍族になんか関心あるんだよ?」
「まぁ、一応種族問題ですから」

 といいながら、アジャンはコーヒーをすすった。

「それに、私が関心を持っているのは、龍族というのが取引概念を理解しているという事実なのです」
「なるほどね。商売ができるなら話し合いもできるんじゃないかってか?」
「法務省としては、先住民たる龍族が所有権や占有訴権などと言った物権概念を有しているのか気にしているのです」
「なんでだ?」
「なんでと申されましても……一応、先々の入植可能性について考えているだけです。もし船団が入植を開始するというのであれば、旧文明の愚行を繰り返さぬよう緻密に取引を進めていき、争いのない相互共存を目指すべきです」

 アタシはアジャンがつらつらと並べる理想に吹き出しそうになった。
 相互共存? アタシらARKSがガンガン龍族を虐殺してるってのにそんなこと考えてるやつがいるなんてね。
 
「そりゃ難しいんじゃねぇか? ARKSがまるで旧人類の民族浄化みたいに殺してるぜ、龍族を」
「――実に正確なご指摘です。我々といたしましても懸念していることから、ARKSという露払い集団を誘導している『六芒均衡』などという集団の意思を監視しているわけですよ」
「ってことは、法務省は身内すら疑ってるのか?」
「疑う? 違いますよ。監視です。我々ORACLE船団は決して一枚岩の組織ではないことをご存じでしょう?」
「まぁな」
「だからです。一つの組織がひたすらに強大化していけば、絶対的権力が生まれる。絶対的権力は絶対的に腐敗するものなのです」
「そうか? 人類も多少は歴史から学んでて、そうはならないかもしれないぜ?」

 アタシがそんなことを言うと、今まで黙って天国みたいに甘いコーヒーを飲んでた魔女っ娘が話に首を突っ込んできた。

「ヒマワリは勘違いしている。世界というシステムに対して、人類はハードウェアにしか過ぎない」
「は?」
「……なるほど。ハーヴィンジャー博士の言葉ですね」と、アジャンが適示する。
「我々人類が旧世紀以来、母星すらも捨てて宇宙に飛び出したのは、我々の理想とする世界システムを築き上げるためだった。昔から人類は血で血を洗う抗争を続けてきたのは、人類というハードウェア自体が、人類が観念した平和や理想郷というシステムの要求する仕様に適合できていなかったからなの」
「理想郷というシステム?」
「そう。便宜的に人類を語る場合、人類自体をハードウェアと考え、社会構造や制度などをアプリケーションと捉えればいい。法律はOSであり、産業はアプリケーション。失業は世界の要求定義に合わなかったアプリケーションとしての人類の集合」
「つまり、パステル様は肉体をハードウェアと考え、我々の頭で作り上げる各種観念をアプリケーションやOSであると考えろと言っているのです」
「そう。世界システムにおいて、旧世紀に国家と国家の争いが絶えなかったのは、国家というアプリケーションが競合し、システム内部でエラーを起こしていたから。つまり、どちらかが削除されるまで争いは止まない」
「本来はそれらアプリの競合を起こさない様なOSをつくる必要があったということですね?」
「旧世紀の人類はOSとして宗教や国際組織を作った。けれど、それらOSが世界を完全に制御することはなかった」
「OSがありすぎて、OS同士で競合が生じてしまいましたからね」と、アジャンが苦笑する。
「けれど、奇跡が起きた。科学というOSの開発に人類は成功した」

 その一言は、パステルにとって重要なことらしい。なにか大事な思い出でも語るみたいに、科学を奇跡と呼んだ。

「科学とは思考の様式。論証・反証・演繹・帰納。つまり、あらゆる事象を科学することは可能なの」
「数学から小説まで、科学することは可能であるということですね」
「愚かな人は科学を理解しないままに官能小説は科学ではないと判断するけれど、あれも科学。文字というバイト単位で、無限の想像を広げる」
「――ですが、科学という思考様式の要求する性能を、ハードウェアたる人類のほうが持っていないこともあったという点が重要ですね」
「ええ。科学は奇跡のOSだったけれど、人類というハードは相変わらず2m以下の体に欲望を詰め込んで、科学というOSに割り当てるメモリ不足に陥っていた」
「だから、パイオニア計画が生み出され、ORACLE船団が創り出された」

 脳みそハイスクールのアタシをほっぱらかして、博士号なんて14歳でとってしまうニューマンの二人が、何かとても楽しいことを語るかのようにつまんねぇ話をしている。
 アタシは理解できやしないから、ただうんうんとうなずきながら、手元にあるコーヒーをすすったり、店員にチョコケーキを頼んだりする。

「争いの先にある永遠を求めて、旧人類は自らを改造し、人であることを辞めていく」

 魔女っ娘は、自分の白い手を見ながら言った。ヒューマンと比べて華奢で白すぎる人形のような手だ。
 指先にはフォトン工学との同調を高めるために、生まれながらにして生体部品による各種連結端子がついていたりする。
 特殊なライトを当てれば、ニューマンの体中に特殊な入れ墨のようなものが浮き上がるところも、ヒューマンとは違う。

「旧人類はヒューマンとなり、それはキャストとニューマンを生み出した、ということですね」
「世界を観測する知的存在を増やし、世界を再定義しようとした。滅び去った単一種族による旧文明の限界を、今のヒューマンは知っている」
「だけれども、新たに生み出された観測存在である我らも、平和や共存という理想郷システムの要求定義に応えられるハードではないわけですか」
「だから、ハーヴィンジャー博士は旧人類や旧文明のように文明の死滅を招く前に、ORACLEを作った」
「――いやですねぇ。そんなORACLEだとしても、その中では相変わらずです。新しく生み出された我々は、未だ至らぬハードなんですかね」
「いずれわかる。世界システムを受け入れることができる『チャーミング人類』はいつか、きっと生み出されるはず」
「パステル様も理想主義者ですね」
「……科学者は、基本的にロマンチスト。数字は美しく、論理は輝いて見える」

 魔女っ娘は満足げに自分がロマンちっく少女宣言して、ずずっとコーヒーを飲む。
 アイツがロマンチストなのかは知らねぇけど、少なくともヘンテコな儀式や宗教に傾倒しているオカルティックな奴であることは認める。
 けれど、こうやってアジャンと話している姿は、いつものうつむき加減な根暗少女じゃなくて、嬉々と講演する科学者みたいだった。
 ……もしかして、こいつ、あれか?
 アジャンに恋してんのか?
 だったらアタシはお邪魔虫じゃねぇか。ここはいそいそと立ち去るか?

「あ、あのさ、もしかしてアタシ邪魔かな?」と、熱く難しい話で盛り上がってる二人に聞いてみる。

 すると魔女っ娘とアジャンのやつは、アタシの顔をまじまじと見て、お互いにしばし見つめあう。
 目で語り合ってやがるぜ。
 やっぱりアタシの女のカンがアラートしてる。こいつらは今、お互いの心の陣地に向けて突撃しあってるに違いない。

「どういうこと?」と魔女っ娘がトンデモ発言をする。
「い、いやさ、ほら、パステルも女の子じゃん。ときめきとかさ、邪魔されたくないだろ?」
「――?」と魔女っ娘は毛虫でも観察するみたいにアタシをじっとみてくる。
「……ヒマワリさん、言っておきますが、私は同性愛者ですよ? パートナーもいます」

 などと、アタシの素っ頓狂な発言にアジャンがフォローをいれてくれる。
 っつーか、アジャン、おまえ同性愛者だったんかい。

「なんだ。アタシの早とちりか」
「どういうこと?」と魔女っ娘がアジャンに尋ねてる。
「いえ、まぁ、パステル様には早い大人の話ということです」
「……わたしも大人。ARKSだし、処女じゃない」

 おいおい、ARKSなのは認めるけれど、おまえの処女喪失はデートレイプだろうが。
 そこら辺の心の傷がさく裂しそうな話題を出すのはやめとけと言ってやりたい。
 ほら、さすがのアジャンもどういっていいかわかんねぇみたいな顔してるじゃんか。
 アイツは情報員だぜ? アタシやお前のプライベートデータくらい知ってる。だからこそ、なにを言えばいいかわかんなくなるんだろうけどな。

「と、とにかく、ヤクの件は調べてみる。アタシらのデキる範囲でだけどさ」
「そ、そうですね。よろしくお願いします」とアタシの強引な話題転換にアジャンが乗ってくれた。

 大人なのに……とぶつぶつ言ってる魔女っ娘に、ほら、おまえはピュアピュアだからさ、などと言ってアタシが頼んだチョコケーキをやったりして機嫌を取る。
 どうやらチョコケーキがうまかったらしく、パステルはちょっとだけ機嫌がよくなったみたいだ(表情で読むんじゃないっ! 瞳で読み取るんだっ!)。



 クソ暑い。そりゃマグマがそこにあるからだけど。
 氷山がそこにありゃクソ寒いだろうし、ダーカーがそこにいりゃクソ憎いってことになる。
 とにかく、アタシの語彙にはファックだとかクソだとか、そういうどうでもいい表現がクソみたいにつまってるわけ。

「……ダーカーによる侵襲は、龍族も治療法を見つけられないみたい」

 魔女っ娘がかがみこんで、アタシがハラワタを捌いてやった龍族を検視してる。
 感染、などとARKSのオペレーターなんかは呼んでいるけれど、別に意思がなくなってるわけじゃねぇ。
 凶暴になるとか、ちょっと抑止が効かなくなるってとこだ。普通の生物なら生まれ持った本能によって痛みとかを恐れるが、そういうのがないわけだ。
 自己破壊につながるような行動だって平然ととる。もう、正直なところ戦っていて厄介極まりない。
 そもそも、龍族と人類はコミュニケーションが可能なんだ。それをこうやってレイデュプルの薄い刃で斬り殺して、死体からサンプルをとったりする。
 ホント、ARKSって仕事はクソだ。しかもクソ暑いし。
 洞窟だか火山だか知らねぇけどよ、冷たい飲み物売ってる自販機でも設置しろよ。エアコン効いたオペレーションセンターで『戒厳令ですっ!』とかいうバカ丸出しの法令用語使ってる場合じゃねぇだろうと。

「で、血液サンプルからは何か出たか?」
「テトラヒドロカンナビノールを検出。やはり、龍族は治療目的で使用しているかもしれない」

 魔女っ娘は簡易分析に賭けたサンプルを、量子化してアジャン指定の民間研究施設のサーバーに転送した。
 キラキラと消えていく龍族の血は、魂が昇天するみたいに厳かだった。

「たしか、そのヤクの効果ってのは緩慢作用だよな?」
「そう。ただフワフワとした気分になって、落ち着く。あまり副作用もないけれど、過剰摂取は死につながる」
「依存性は?」
「薬効としての依存性はない。むしろ、緩慢作用を求める事態のほうを何とかする必要がある」
「……ってことは、やっぱりダーカー因子の侵襲による狂暴化を何とかしようとしてると考えたほうがよさそうだな」
「推論だけれど。データが足りないし、治療現場をおさえたわけでもない。事実が足りない」
「んじゃ、もう少し前進してみるか」

 アタシと魔女っ娘はだらだらと熱気に満ちた洞窟内を進んでいく。
 ときおり、どっかのARKSたちがクソ暑い中元気いっぱいに『やぁっ!』とかなんとか言いながら龍族を殺してた。
 殺した龍族の数に満足したのか、拾ったアイテムの数に満足したのか知らねぇけど、そいつらはさっさと引き上げていった。
 ARKSなんてそんなもんだろ。
 実のところ、ARKSは龍族を皆殺しにしてさっさと植民可能であることをアピールしたいのかもしれない。
 危険な存在、とでも言っておけば、人類というコミニュティからキツイ文句が飛んでくることはない。
 船団議会や元老院で糾弾されることだってないだろう。なんせ、我々ARKSの目的は……なんだっけか? アイテム捜しだっけ。
 あーもう、暑すぎてどうでもいいわ。
 とにかく、水だ、水。

「……げっ」と、思わず口にしてしまう。

 アタシが背負ってたハイドレーションシステムが熱暴走で機能不全に陥り、いくらチューブを吸ったって水が出てこねぇ。

「どうしたの?」
「ハイドレーションが壊れた。こりゃ戻るしかねぇぞ。脱水症になる」
「そう。じゃ、テレパイプを……」

 と、魔女っ娘がごそごそとアイテム端末をいじる。
 アタシは不意の敵襲がないかを警戒する。
 だが、警戒がどうこうというレベルではなく、ずんと響く足音にアタシの脳がピンチですっ、と宣言した。

「おい、なんか来るぞ?」
『き、緊急事態ですっ! ヴォルドラゴンですっ!』などと、アタシのイヤリングでオペレーターの姉ちゃんが叫んでる。
 
 お前があわててどうするんだよ? なんだ? 姉ちゃんが代りに戦ってくれるってのか? と不満たらたらになる。
 もちろん、暑さのせいでいら立っているからでもあるし、のどが渇いてるからでもある。そして、単純にオペ子がぶりぶりブリッ子すぎて反吐が出るってのが一番大きい。

『周辺のARKSは直ちに迎撃してくださいっ!』

 そう、これだよ。『撃退せよ』じゃなくて、『ください』っていうお願いします形式。個人戦闘集団として自由気ままなお粗末軍隊の決定的欠陥だ。

「どうする? アタシらは逃げるか?」
「逃げない。だってドゥドゥに貢ぐお金稼がないと」
「……魔女っ娘? お前、たかだかギャンブルのために命張るのかよ? それにあのおっさんを殺したいって言ってたじゃねぇか」
「殺したいと思えば思うほど、会いたくなる不思議」

 こりゃ、だめだ。魔女っ娘は杖持って臨戦態勢。すなわち、やる気満々だ。
 しゃぁねぇな。増援来ること期待して、粘るだけ粘ってみるか。
 それに。アタシのリハビリがどんな成果なのかも確認したいしね。
 よし、殺す。
 アタシと魔女っ娘で、龍を、殺す。
 自分にそう言い聞かせてみると、やっぱりアタシは本当にロクでもない存在だと気付く。
 命ギリギリじゃないと生きてるってことを実感できないんだ。
 敵を殺して、自分が生きてるってことを確認するなんざ、ホントにアタシは狂ってる。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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