スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

計画27

 ふと部屋に掃除機をかけているときに気が付いた。

「……なんか、経済政策おかしくないか?」

 そう。ARKSたるもの、惑星に降りてあれこれと仕事をこなしていると、雑多なアイテムが手に入る。
 このアイテムというのは実際に存在しているわけではなく、あくまでARKS各個人のデータ上に『支給可能』とタグ付されるだけなんだけど。
 だから、ARKSってのはそれぞれが自分にタグ付されたアイテムをデータ売買したりして、なんだかんだでメセタをしこしこ増やすわけですよ。
 ま、増やしたところで相続できるわけでもなく、会社の株を買えるわけでもないまさにARKS通貨にしか過ぎないから、『船団経済』自体には影響がない。
 さすがニューマンだのキャストだののエリートたちがマクロ経済やってる船団政府の経済政策はいい舵取りが行われてる。
 で、問題なのはARKS経済のほうだ。
 アタシが掃除をしながらこの家具いらねぇな、と思って『利用権』を売りに出してみたわけだが、結局買い手がつかずARKS購買部に売り払ってみた。
 すると、どうだろうか。アタシがくたばってるうちに売値が五分の一になっていた。
 あわてて布告文を見てみると、なんとびっくりインフレ対策だとのたまっている。

「ARKSの経済担当は至極アタマが悪い人がなるという不文律」と、掃除を手伝うつもりもない魔女っ娘が言った。

 やつはアタシのベッドの上に転がりながら、だらだらと端末で経済書を読んでいる。

「もしかしてとは思うけど、ARKSの経済運営担当は……」
「わたしの見たところでは、インフレという概念すら理解していない小学生」

 吐き捨てるように魔女っ娘が言うのだから、そうなんだろう。

「まぁ、アタシにも分かるように説明してくれよ」と、掃除機の電源を切り、布巾で棚などを拭く。
「まず、インフレを判断する際はCPIを使うの。簡単にいうと標準的な需要がある財の価格をモニターすること」
「そりゃ、なんとかメイトとか、アトマイザーとかか?」
「そう。でも、そういうものに加えてグラインダーなども考慮に入れるかは、経済担当の判断次第」
「ふーん」
「で、それらの値段があがってきたらインフレ。下がればデフレと考えていい。単純すぎるけど」
「ま、アタシ相手だから単純でいいよ」
「なにをモニターしてたのかは知らないけれど、ARKS経済担当はインフレを宣言した。そもそもメイトやアトマイザーなどの値段はARKS物価統制法に基づき一元管理だから、CPIの対象外」
「つまり、グラインダーとか、武器アイテム利用権なんかがCPIになってるってことか」
「そうなる。この時点で、頭が悪い。実戦に耐えうる性能の兵器を供給しつつ、性能とは別の『資産価値』を有する武器を供給すればそもそもインフレはあり得ない」
「……どういうことだ?」
「ティンバーゲンの定理。生活に必要な一般物価の安定と、いわゆる資産価値の安定は両立しえない」
「なんだそのティンなんとかってのは?」
「N個の独立した政策目標を同時に達成するためにはN個の独立な政策手段が必要である、という定理」
「まぁ、あれだ、なるほどわからん」
「だから、ARKS経済担当がいきなり共通買取価格を75パーセント切り下げる政策は、通貨供給量を下げる、という政策目標しか達成しないということ」

 アタシの頭んなかには、通貨が余ってるからインフレが起きてるんだ、みたいな認識しかないから、いまいち理解できない。

「よくわかんねぇんだけど、金が余ってるからインフレなんだろ?」

 アタシがこんなことを言うと、魔女っ娘の普段の薄らぐらい無表情が消えて、切実な憐みのまなざしを向けてきやがった。
 なんだか、すげぇバカな発言したみたいで、誰も見てないのに恥ずかしくなってくる。

「わたしの話、聞いてた?」
「聞いてたよ! Cなんたらとか、バーゲンがどうとか」
「……さすが、ハイスクールレベルの知力。あなたはそうやって無知のまま奪われ続ける。権力者にとって大衆の無知は利益でしかない」
「おいおい、ひでぇ言い方だな」
「まず理解してほしいのは、インフレは決して『金が余ってる』なんて話ではない」
「へ? でもアタシの擬装記憶ではそうなってるぜ?」
「まず、全ての基準をCPIに求める。これが上がったか、下がったかが大事なの。物理学で光を基準にするのと一緒」
「ふーん」
「仮にグラインダーがCPIの対象になっていると仮定して、たしかにグラインダーの価格は上昇し続けていた。だからインフレと言えるかもしれない」
「じゃ、ARKS経済担当はインフレについて分かってるってことか?」
「そうはならない。たとえCPIが上昇したとしても、その原因がどんなものかはCPIだけじゃわからないから」

 なるほど。つまり魔女っ娘はCPIが上がった下がったでとにかくインフレ・デフレのどっちにあるかが分かるだけと言いたいわけか。

「だから、単純にCPIが上昇傾向にあるだけでマネーサプライを減少させようとする政策を実行することは、頭がオカシイ。小学生の考え」
「マネーサプライってなんだ?」
「通貨供給量。すごく簡単にいうと、ARKSたちに供給されるメセタの量」
「じゃ、つまりARKS経済担当はいきなりアタシらに回ってくる金の量を減らし始めたわけか」
「そう。たかだかCPIを見ただけで、そんな判断をした。小学生並みの知性であると評価されて当然。インフレ・デフレ判断の次はその原因分析のはずなのに、それを飛ばしてマネーサプライを減少させるなんて狂気の沙汰」
「――じゃ、インフレは収まらないわけだな。アタシらは相変わらず高い物価に苦しむわけか」
「計量経済学的に必要な資料が手元にないから断言できないけれど、ARKS内でのインフレ原因はマネーサプライが問題のもの、すなわち貨幣的要因によるインフレではないと思われる」
「どういうこった?」
「ARKSに対するアイテムの供給が『乱脈』だから、マネーサプライではなくアイテム供給によってインフレが引き起こされている可能性が高い」
「は?」
「つまり、単純にアイテムが供給されていないから、物価が高くなるの。そうするとCPIも上昇するから、インフレになる」
「需要と供給で、需要ばっかり大きいってことか?」
「ちょっと違うんだけれど。厳密にいえば実物的原因によるインフレ。アイテムが全然でないから、自然と否応なくメセタをたくさん積んで買わなくちゃいけないことになる」

 そこまで言って、魔女っ娘は少し思案顔になった。

「どうした?」
「あなたが言った実物的要因によるインフレ+需要インフレかも。財が供給されないだけじゃなくて、さらに大きな需要があるというパターン」
「ってことは、アイテムの供給量調整こそがインフレ緩和に必要な本当の政策であって、マネーサプライ減らすのは勘違いってことか?」
「その可能性もある。ただ、マネーサプライの過多もインフレの一因となっているかもしれないから、通貨量を減らすことで、ちょっとだけインフレが『抑制傾向』になる可能性もある」
「……つまり、安定経済には至らねぇってことか」
「ええ。ARKS経済担当は頭が悪いから、仕方ない。わたしたちはバカによって支配されるバカたちということ」

 魔女っ娘はそんなことを言って、白いふとももをぽりぽりと掻いた。
スポンサーサイト

テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。