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計画26

 いいかげん病院と親友になりそうなアタシなわけだけど、病院のほうはさっさと出て行ってほしいらしい。
 医療ポッドから全裸で排出された後は、女医の問診と触診その他精密検査を受けて、「はい、退院」と相成った。
 受付で医療費を払ってみるとビックリ十割負担。何事かと思いきや領収書をくれて、ARKS保険の窓口に行けと言われた。

「ったく。カードに残高がねぇぜ」と残高が残念なことになった口座を心配しながら、病院を出る。

 外は、いつもの船団世界だ。フォトン工学の粋を集めた造船建築美。なにもかも人工で、あれもこれも人為。
 例の極寒の惑星で凍えてたことを思い出せば、ここはまさに人類の理想郷だ。
 なによりも、なんとかガルフみたいなオオカミもどきに食われそうになったりしないからいい。

「元気そうだな。ヒマワリ」

 懐かしい声がした。なぜだろう。時がたっているはずなのに、声だけは鮮明に覚えている。
 もう、顔も忘れてると思ったのに。

「てめぇ、ガルム……妄想じゃないね」

 戦いに明け暮れた人生のせいで頭がおかしくなっている、という可能性もあるが、やはり何度見ても知っているアイツだった。
 ただ、昔よりも腕は上げた感じがする。立ち姿でわかる。体のバランスがすごく調和してるんだ。

「ARKSの捨石作戦に使われた気分はどうだ? 個人主義の集合なんて軍隊の真実は、使い捨ての駒を集めてるだけだと理解したか?」
「――あんた、アタシを恨んでるのか? アタシのミスであんたは死んだから」

 聞きたいことはいっぱいあった。愛してるってなんで言ってくれたんだ? とか。
 だけど、そんなことより先に確認したかったのが、やつは、アタシに恨みがあるのかだった。

「いいや。俺が恨むのはARKSのほうだ。結局、あいつらは俺の死体すら回収しなかった」
「……あたしは、ナベリウスに降りたら必ず魔女っ娘と一緒に探したんだよ。あんたの亡骸をさ」
「知ってる。だからこそ、俺はお前を恨んじゃいないのさ」

 確認したいことは確認できた。あとはARKSとしての仕事だ。

「アンタ、なんで生きてる?」
「F計画。世界はARKSだけの手に任せるには大きすぎる。ARKSの思い上がりを叩き潰すために、計画は実行された」
「……やっぱりあんた、F機関つながりなんだね。赤ん坊をバラして試験管に入れるやつに成り下がっちまったなんて」
「ARKSだって同じだろう? 大義を語りながら、やることはいつもの『人類』のやり口さ」

 ガルムは戯言を散々こぼしたあげく、雑踏の中に消えていきやがった。
 いや、ただ消えたわけじゃねぇ。ありゃ、正規軍の連中が使う光学迷彩だろう。
 ってこたぁ、F機関とやらもやっぱりお偉いさんが絡んでるわけか。あたしの人生、厄介ごとしかないね。



 いとしのスィートホームに帰ってみれば、共用スペースにまで魔女っ娘の私物が侵入していた。
 とくに、インスタント麺やパスタなど、スパゲッティモンスター教団の神器類が多い。
 この散らかり具合からするに、あたしは一か月くらい入院していたらしい。

「おかえり」
「おかえりなさい、センパイ」

 なんか特別な感じではなく、ごくごく普通におかえりと言われることがうれしかった。
 アタシは生きて帰ってきたんだな。

「――ただいま」と、返事しておく。

 そして、返事をしたあとに、なぜミカンが? と疑義を抱く。

「ミカン、おまえ何してんだ?」とパステルの私室を覗き込む。

 そこでは例の御香の匂いとともに、なにやら儀式が行われていた。
 二人で向かい合ってジャポン座りというあの窮屈そうな座り方をして、陶器みたいなのに湯を注いでいる。
 そして、なにやらかきまぜはじめた。
 教団の儀式か何かか? そんなところにミカンを引き込んでいいのか? 
 信仰は確かに自由だし、それで安息を得られるなら救いがあると言っていいけれど……。

「よい御手前で」と、ミカンが言った。
「いえす・うぃ・きゃん」とパステルが静かに答える。

 そして二人はずずっと陶器みたいなのに注がれた……あれは茶か? をすすった。

「なにやってんだ?」
「あ、先輩もやります? ニュー・茶道。パステルさんが段位持ってるらしくて」
「じゃすと・どぅ・いっと」と、魔女っ娘が例の無表情のまま頭上におおきな○を腕でつくった。
 たぶん……そのニュー・茶道とかいうのの決めポーズなのかもしれない。
「いや、遠慮しとく。高尚な文化芸術は得意じゃないんで」
「そうですか? わたし茶道なんて初めてですけど、なかなか楽しいですよ?」
「そ、そうか。ところでこの前は助かったよ。ほんと恩に着る」

 アタシはミカンと魔女っ娘に頭をさげる。

「いえいえ、そんな」とミカンは謙遜する。古代人は礼儀があっていいねぇ。
「分割払いでいい」と魔女っ娘は容赦ない。



 ミカンが返った後、魔女っ娘とふたりでパスタを作った。
 あたしがナスとピーマン、そしてひき肉のトマトソース煮込みを作って、魔女っ娘が味見をする共同作業だ。
 リハビリがてらフライパンを振ってみると、なかなか肩と腰にキた。こりゃ本格的に再トレーニングだね。
 んで、ゆでたてパスタにソースをかけて、いただきます。と。
 ワインも一本開けて、アタシらはちょっとした復帰祝いをした。

「で、アタシが伸びてるあいだに変わったことは?」
「特になし。あの件に関するデータが根こそぎORACLEアーカイブから消えたくらい」

 やっぱりなー。捨石に生きて帰ってこられたら困るもんな。
 そうなると徹底的に秘匿。あたしらにはたぶんひそかな監視でもついてて、ヘンな挙動を見せたら交通事故や失踪という結末だろう。
 へたすりゃ宇宙ゴミとして永遠に銀河の中心に向けて旅するはめになるかもしれない。

「あと、アルザスさんから連絡があった」と言って、アタシの端末にメッセージを転送してくれた。
『ごめんあそばせ。わたくし、利用できるものは利用する主義ですの』だそうだ。

 つまり、あの任務はもともとアルザスに別命があって、アタシらはどうでもいい連中だったってことだ。
 やはり、ARKSだって一応軍隊なんだ。命は道具。ある程度までは大事にしてくれるけれど、消費するときは遠慮なく使い切る。

「っつーことは、またしがないARKS稼業で身を立てていくわけか」
「わたしは転職もできるけど、あなたには学がないから」
「……おまえさ、平然と人が気にしてること言うよな」
「事実を適示すると、感情が傷つく。ヒューマンってほんとに興味深い」

 まじまじと魔女っ娘に見つめられると怒る気も失せた。

「だけど、リハビリも必要だし、大仕事をやるわけにもいかねぇ」
「当面はゆっくり体を慣らす、ということで」

 魔女っ娘がそういってワイングラスを掲げたから、あたしも「そだね」といってグラスを上げた。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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