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ファンタシースター計画24


「大気圏内飛行にシステムを設定。以後、航路指定。自動操縦に切り替える」

 アルザス姉さんがてきぱきと機長になって、シャトルシップを操縦してる。
 魔女っ子は通信席のほうで、後続の研究チームのほうと定時交信を担当してる。
 アタシは――。
 何もさわるな、っていう厳命の元、副操縦士席でパックコーヒーをちゅーちゅー吸ってる。

「――定時交信終了。レーダー監視に移行」

 魔女っ子が対空対地レーダーのつまらん画面をじーっと眺め始める。
 まぁ、護衛任務って言うだけあるから、襲撃だってあるかもしれない。
 どんなやつかはしらないけど。
 何たら機関だとか、何じゃら局とか、そういう政府系かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 
「レーダーを機長のHUDに直結。ファイアウォールはずせ」
「機長了解。ファイアウォール、限定解除。クリアランスHUBを経由し、レイヤー7に送れ」
「バイパス完了。テストピング、伝達」
「ピングよし。セキュリティクリアランス確保。メイン送れ」
「メインデータ、送信開始。回線監視に移行する」

 なんじゃらほい。
 魔女っ子とアルザス姉さんはわけの分からんやり取りをして忙しそうだ。
 それに比べて、アタシはコーヒー飲んで昼寝してりゃ目的地に着くんだから気楽なもんだよ。

「――回線に干渉確認。周辺環境を走査」

 魔女っ子がちょっと驚いたみたいな声を出した。

「分子構造環境の変動を観測。ダーカー、実体化」

 おいっ!
 ここは高度いくつだよ?
 こんな高高度であのクソ虫どもが活動できるってのか?

「なるほど。研究チームが運んでいらっしゃるのは『零式観測デウス=エクス・マキナ』ですのね」
「オーケー! わけわからん話はいいから、アタシは何すりゃいい?」
「銃座をお願いいたしますわ。命綱とパラシュートを着用なさってくださいね」

 おいおい。
 外部銃座しかねぇのかよ。
 アタシのやわらかい肌まるだしで、銃座に座って撃ちまくれってか?
 だけど、出るしかねぇだろ。

「了解した。ハッチ解放してくれ」
「ハッチロック解除」

 魔女っ子がそういうと、操縦席とカーゴ部の連絡通路のロックが解除された。
 アタシは駆け足で連絡通路に向かい、備え付けのパラを背負う。
 ガイドレールに命綱を導縛して、準備よしってヤツだ。
 あとは、どうせ空気薄いだろうから携行エアロパックを咥える。おしゃぶりみたいで気に食わねぇが、なかったら死ぬだけだ。
 そして、梯子を上って、外につながるハッチを開放する。

 一気に、空気が抜けた。 

 アタシは流れる本流に押し流されるかたちで、外に放り出される。
 空からさらに空に放り出されるってのは、宇宙にでも行くって事じゃねぇの?
 などと、くだらないことを考える余裕を保ちつつ、伸びきった命綱を手繰る。
 なんとか、体勢に持ち直せた。
 そして全環境ブーツの底をマグネットに切り替えて、シャトルシップの外装を行く。
 ちょっと行けば、例の大型銃座が頼もしそうに鎮座していた。
 ありがたいことに、操縦席付だ。申し訳程度の防弾ガラスで覆われたキャノピーがある。
 アタシはどっこいしょとその中に入って、システムを立ち上げる。
 やっぱりこの銃座はあとづけされたものだったみたいで、船内のシステムとリンクされてない。
 まったく、航空戦力ってのを適当にしてるARKSの愚かしさを呪いたいぜ。

「魔女っ子、大型銃座にたどり着いた。FCSの認証コードは?」

 FCS認証がないと、撃てるはずがない。とりあえず魔女っ子に通信でたずねる。

「あなたの名前」
「そりゃどうも。バカでも分かる設定にしてくれてありがとよ」

 名前を打ち込むと、Microsoft社製のOSが立ち上がって、照準線、弾薬量、ロック限界、放熱状況が表示された。
 アタシは試しに、座席のペダルを踏んでみる。
 浅く踏めばゆっくり旋回。深く踏めば早く。
 右足、左足のペダルはそれぞれの旋回方向に対応しているらしい。

「……おい、これレーダーとリンクしてねぇじゃねぇかっ!」

 船内システムとリンクしていないということは、当然、レーダー情報も届かない。
 アタシに有視界戦闘やれっていうのか?
 ここは空だぜ?
 雲とか、太陽の照り返しとかで見えねぇって。

「魔女っ子、アタシのHUDにレーダー情報を送れるか?」
「全部は無理。敵の概算位置なら送れる」
「送ってくれっ!」

 魔女っ子の仕事の速さが発揮されて、アタシのHUDにぽんっと赤点が一杯表示された。
 一杯?

「おいおいっ! 近すぎだ、バカヤローっ!」

 思い切りペダルを踏み込んで、レーダーと照準線を重ね合わせて、適当にトリガーを引く。
 無反動20mmガトリングが火を噴いてくれる。雲に穴を開けて、弾丸が飛翔する。
 目視ではわからねぇが、赤点は一つ消失した。
 とにかく、近いやつから片付けていくしかねぇ。

「ヒマワリ。接近を許さないで。接近されると射界がないから、落とされる」
「アルザス姉さんに、やんちゃな操縦をしてくれって頼めっ!」
「もうやってる」

 いきなり、頭に血が上る感覚があった。
 どうやら上下反転したらしい。背面飛行とか言うやつか?
 とにかく、アタシみたいな素人じゃ空間失調を起こしちまいそうだ。

「――2番から6番、24番にSAM」

 アタシが口頭認識装置に叫んでやると、ミサイルが白煙たてて飛んでいった。
 レーダーを見てる限り、三つは落とした。
 あとはダメだったらしい。
 こりゃ正直、数が多すぎるだろ。

「研究チームの機体が襲われてる。この機体を盾にするって」
「冷静な声で何言ってるんだ! それ、カミカゼするってことだろ?」
「大丈夫。信じても、信じなくても、神はそこにいる」
「意味わかんねぇよっ!」

 機体が元の位置に戻り、一気に滑空を開始した。
 雲が流れる相対速度で分かる。ま、操縦は任せて。とりあえずアタシは撃ちまくるだけさ。


 ファック! 銃身が焼け付いちまった。水冷式じゃねぇのかよ、と思ったら、冷却水ポンプをエル・アーダのクソ虫に吹っ飛ばされたんだっけ。
 ぱっと見渡したところ、船体にダーカーどもが結構張り付いてる。
 このままじゃ、アタシがバラされるのも時間の問題じゃねぇか。

「おい、アルザス姉さん、さっさと高度上げるとか急旋回して振り払えっ!」
「無理ですわ。エンジンの片方をやられましてよ。まったく。なにをやっていらっしゃるの、銃座は」

 いやいやいや。
 ここで咎められてもねぇ。
 数が多すぎるんだって。そんなに接近を許せないんなら、護衛機とか飛ばしてもらえばよかったんだよ。

「どうすんだよっ!」
「――機を放棄しますわ。では、ごきげんよう」

 アタシは信じられねぇものを見ちまった。
 操縦席のある部分から、脱出筒が地上に向けて発射されたのを、見ちまった。

「アタシを見捨てやがったな、あのクソアマどもがぁ!」

 アタシは絶叫して、そのままキャノピーの扉を蹴破って外に出た。
 そして、さっさと命綱をパージする。 

 体が一気に軽くなった。
 これが、『わたしは、風になりたい』とかいう言葉の真実だよっ!
 敵だらけのどことも分からぬところに向かって落ちていく、それが風になるってことだ。
 機体が一気に遠くなって、点になっちまう。
 そして、数秒で炎の固まりになりやがった。
 自爆装置発動ってこった。
 ああ……アタシの万能バイクが。アタシの高級トレーニングキット……あと、12年物のワイン。
 ぜんぶ燃えちまった。
 せめて、せめて一部のコンテナがポロリと地上に落ちてくれやしないだろうか。
 ちくしょー。

 って、おい、まずいぞ。高度計がレッドだ。
 アタシはあわてて導索を引く。
 しゅるしゅると絹すれ音がして、パラシュートが開く。
 一気に降下速度が落ちる。
 だけど、着地するときはビルの三階くらいから落ちる衝撃を体験するハメになる。
 ここで一つ重要なことは、アタシは空挺トレーニングなんて受けてないってこと。
 ああ、神様でもスパゲティモンスター様でもいいから、アタシを無事着陸させてくれ。


 素人ながら見事な着陸だったと思う。
 少なくとも、左腕骨折で済んだのは、アタシの神業的運動神経のおかげかもしれないし、単に神の御業かもしれない。
 粉雪を、小麦粉ぶちまけるみたいにふっ飛ばしながら着陸したわりには、損害は軽微かもしれない。
 と、このように自分を褒めまくっておく。
 
 正直、最悪だ。
 何が一面の銀世界だ。
 酷薄なだけの、寒くて、冷たくて、ひたすらにアタシの体温を奪うだけの世界じゃねぇか。

 環境フィールド発生装置は落下の衝撃であえなく死亡。
 いまは、もこもこエスキモーファッションだけが頼りだ。
 が、寒すぎるだろ。
 というか、痛い。
 寒さは過ぎれば痛みになるなんて、初めて知った。

 とりあえず、アタシは寒波を防げそうな岩陰を見つけて。そこにへたり込んだ。
 腕の治療を最優先しなくては。

 とにかくアタシは、ARKS携行のサバイバルキットから局所麻酔の注射器を取り出して、さっさと腕に極太注射をする、つもりだった。
 しかし、極寒と粉雪のおかげで、針が機能しない。
 なんてこった。
 だけど、応急措置なしで生存可能状況までもっていくなんてありえない。

「やるしかないよな」

 口に出して、自分に言い聞かせる。
 今からやるのは、麻酔無しの外科手術だ。こっちのほうは粉雪の影響を受けるようなやわな注射器を使うわけじゃない。
 注射銃だ。
 釘打ち機みたいなもんで、筋肉をぶち抜いて、骨を割って骨髄にムーンアトマイザーを注射する頭のおかしい骨折治療法の道具だ。
 正直いうと、うめき声どころじゃ済みそうにない。
 下手したら、アタシは食いしばりすぎて、奥歯を奥歯で噛み砕くとかいう事態になりかねない。
 寒さのおかげで、感覚が鈍っているいまなら、もしやとも思えるけど、やっぱり心臓があばれる。

「勝手に骨折が治ったりしねぇかな……」

 そして、あるわけねぇだろ、と自分に終局判決を下す。
 やる。
 やるしかねぇ。
 とりあえず何か役に立つかもと引っ張ってきたパラシュートの太い綱を、転送したレイデュプルで切る。
 そして、手ごろなサイズの綱を、アタシは口に入れて噛んだ。
 ふが。食いしばれないことはない。
 さぁ、やるか?
 やるなら、一気にやっちまえ、ヒマワリ・ヒナタ。
 女は度胸と根性だろっ!
 アタシは注射銃にムーンアトマイザーを規定量いれて、患部に向けて打ち込んだ。
 釘打ち機みたいな異音がした。
 骨をぶちぬいた音がした。頭の中には、アタシの筋肉をぶちぶちと針が裂いていく音も聞こえた。

「――――っ!」

 声にならない悲鳴が聞こえた。
 ああ、そうか。
 アタシの声だ。
 ちょっと意識が飛びそうになって、離人的になっちまったんだな。
 あ、まずい、意識が、混濁して――
 不屈っ!
 耐えろ、アタシ! こんなところでくたばるお嬢さん育ちじゃねぇだろ。

 アタシはぶはっと、縄を吐き出して、注射銃を抜いた。
 傷のほうは、モノメイトでものんどきゃ何とかなる。
 
「やばかったー」

 ここで気を失ったら、凍死しちまう。
 とにかく、ビバーク拠点だ。
 どこかに凍土地帯には洞窟が多いと聞く。
 その中で、骨折部位の固定をしなくちゃならん。
 そう考えると、このパラシュートの布地や紐類は寝具や火種の変わりになるかも。
 とりあえず、まとめて担いでくか。

「行くか」

 アタシは萎えそうな自分の心に言い聞かせる。
 生き残らなくちゃ、任務は遂行できない。
 魔女っ子やアルザス姉さんたちは、脱出筒で降りてるから、損害はないだろう。
 今頃はアタシの捜索よりも、目標地点の第一次惑星探査計画の廃棄基地に向かってるだろう。
 アタシも、さっさと合流しないと。
 ARKSは任務を遂行する。
 それができねぇなら、ARKSの意味なんかねぇ。


 洞窟に入るんなら、火を持っていったほうがいいと、サルに近いころの人類は経験から学んでいた。
 で、サルくらいの知性かもしれないアタシの経験則はこういってる。
 洞窟に入るなら、武器を持っていけってな。
 やっとこさ、洞窟を見つけて、ビバークできると安心したら、底には目を光らせた大型オオカミさんの群れがいた。
 ガルフルどもがっ! 
 アタシは使い物にならない左腕をかばいながら、情けない戦い方で、こいつらと斬りあう羽目になった。
 一応、防御ユニットは機能してくれてるらしく、ガルフルの刃がアタシの柔肌をえぐることはなかったけど。
 でも、体力のほうが底をついた。
 アタシはぜぇぜぇ息をしながら、最後のガルフルの獣首に、レイデュプルの薄い刃を滑り込ませた。
 見事脊椎を絶ち、ヤツは絶命。
 アタシは生ぬるい血溜まりにひざをつく。

「火だ……火をおこさねぇと」

 くたびれて言うことを聞かない体を引きずって、洞窟の奥に行く。
 とはいえ、薪なんかがあるわけじゃない。
 アタシはサバイバルキットのなけなしの形態燃料の缶をあけて、付属のライターで火をつける。
 火の温かみを感じて、少しだけ安心感がやってきた。
 だけど。
 全然、だめだ。
 このままじゃ凍傷になっちまう。
 雪中行軍をするには、あまりにも手袋が貧弱だ。
 環境適応フィールド装置に頼りきってたARKSは猛省すべきかもしれない。
 これからは、ARKS事務局は緊急事態に備えて凍土に簡易シェルターくらい作るべきだ。
 カスみたいな航空支援やら、戦術的意味のない銃座の配置なんざヤメちまえ。

 さて、文句はこの辺にして、状況を確認だ。
 アイテムパックとのリンクはつながってる。アイテムパックに登録しておいた道具は、まあ使えるということだ。
 問題は、テレパイプが使えないということ。
 シャトルシップとリンクするシステムなのに、肝心のシャトルシップは花火となって消えた。
 自分で設定を変えられるような知性も技術もないから、あきらめる。
 飲料水と食料の点は、残念な結論しかない。
 アイテムパックにそんなもの登録する奴はいない。こういう任務でも、長年染み付いた癖ってのは抜けない。
 雪食って前進? ばかばかしい。そんなことしたら、体温が低下して早死にするだけだ。

「石器時代に戻りますか。この大宇宙航海時代に」

 アタシはぼやくだけぼやいて、洞窟の岩の質をみて、加工しやすそうなものを見繕う。
 あとは、地道に手を加えるだけだ。
 工作道具は、最新のフォトン技術満載のレイデュプル。
 このガンスラッシュを駆使して、生活に必要な石器を作るわけだ。
 一晩掛けてやってやろうじゃないの。
 日ごろから魔女っ子に野蛮人扱いされてるんだ。
 その意地、見せてやるよ。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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