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ファンタシースター計画04

 誰にも気付かれずに死ぬってのは、寂しいもんだなと思う。
 一通り仕事を片付けて、森の中をうろついてると死体を見つけた。
 腐りかけたヒューマンの遺体を見つけて大騒ぎできるほどにピュアな心は、研修で死んだ。
 だから、アタシたちは冷静にそれを検分する。
 死体は死体さ。命が消えてしまった、誰かの友だちだったやつの残り物。

「死因は外的圧迫による内臓破裂。たぶん、即死」

 魔女っ子が平然とし死体検分をする。アタシはどうもそういうのは駄目だね。

「即死か。苦しくないのはいいね」と相槌をうっておく。

 とは言っても、死後何かに結構食われてる。こういう死に方は原始的だな。

「ロックベアの攻撃による死因データと附合する」

 ロックベアか。データによれば、動く岩山みたいな熊だかゴリラだな。
 生物学者たちがどう思ってるかは知らないけど、アタシからみりゃ猿どものボス猿だね。

「この辺をアレがうろついてたってわけか」
「腐敗具合からみて、ここ一月以内は」

 ま、そんな大物はベテランARKSどもが狩にきてるはずだ。生きのこっちゃいまい。

「どれどれ、個人IDは……」

 アタシは死体をさぐる。こういうとき、何か信仰心でもあれば祈りながらごそごそできるのに、そういうのは持ち合わせてない。
 魔女っ子は、遺体に対してなにやら香油を一滴たらす。
 そして一言、「死者だけが戦いの終わりを知る」といった。
 それが祈りなのかは知らん。
 ま、死んだこいつがどんな信仰だったかはしらないけど、葬式なしってのよりマシだろ。

「あったあった。今から照合してみる」

 アタシは乾ききった血で汚れたIDを端末にかざす。
 エラー。
 やっぱ、ちょっと汚れすぎてだめか。

「とりあえず戻るよ。船団の設備があれば読み取れるだろうし」
「遺体はどうするの?」

 魔女っ子がアタシをみつめてくる。
 地獄への道は、善意でできているとかいうあの女将軍の言葉が浮かぶ。

「安全が確保されたわけじゃない。放置して行く」
「そう。いくつか遺品を回収しておく」

 魔女っ子はごそごそと死体をさぐる。そして、なにやらデータデバイスを見つけたらしい。

「これくらいしかない」
「そうか。じゃ、戻ろう」

 そして、アタシらは死体を放置してテレポーターに向かう。たぶん、これでいい。
 生きていなければ、明日なんてないんだから。


 生傷の絶えない暮らしってのには、安息日が必要だ。
 そこで、休日を適当に作るわけさ。
 全て自由裁量のARKSには勤務時間だの何だのってのはない。
 どこかにオフィスがあって、席に座って事務処理をする必要も無い。そういうのはアタシらが体張って集めてる戦闘ログを解析するオペレータとかアナリストの仕事。
 そういうわけで、アタシはうーうー文句を言う魔女っ子をつれて、外出する。
 
 そう。久々に一般市民の皆様が日々を謳歌するシティに来たわけですよ。
 アタシらが事務処理上所属するHGウェルズ級航宙艦『ウル』からテレポータを三回ほどジャンプすれば、アシモフ級居住ドーム艦575『バショー』に行くことができる。『バショー』では、世代を重ねすぎた結果、もともとの方向性とは違うところへと発展したジャポン文化をよりしろにして人々が暮らしている。アタシと魔女っ子はここの食文化が結構好きなんだよね。
 
 回転スシがイイという彼女の言い分をアタシは認めない。だって先週も先々週も行ったじゃん。アンタどんだけスシすきなんだよと言いたい。
 だから、今週は『ヲデン』を食べるということになった。ショーチューとヲデンこそ、今のアタシが求めてるものである。
 アタシらが暮らすバトルシップ的な『ウル』に比べて、やっぱりドーム型居住艦『バショー』のほうが生活感がある。道路を行きかう車両はどれも民生品のデザイン品ばっかりだ。装甲車なんか走ってない。
 で、アタシらはタクシーをひろって飲み屋だ飯屋だが集中的にあつまる『ネオ・シンバシ』に向かう。なんでも赤提灯がきれいらしい。

 アタシらが拾ったタクシーのオッサンはおしゃべりだった。
 ベースボールがどうだの、フットボールがどうしただと、イロイロとむだ話を勝手にしゃべってくれる。流れているラジオも、ジャポン文化特有のハイスクール野球の話題だ。決してヤナーチェックのシンフォニエッタが流れて、仕事道具の車両がいかに整備されたものであるかを語る知的なタクシー運転手などではない。これは、魔女っ子から借りたジャポン文明の作家が書いた本の最初の一節だけど、その作家の生きてた時代とはどうも文化が違うらしい。

「――ってなわけでして。うちの娘が大学院でてやっと生物学の博士様になりやしてね」

 魔女っ子のやつが黙って運ちゃんのおっさんの話に相槌をうってるもんだから、あれよあれよと話題が娘自慢になってた。

「――で、軍の研究所で原生生物を研究する仕事についたそうでして。親としちゃ誇らしいというか、嬉しいというか。ヒューマンながらよくやってるなぁと。あっしみたいに車走らせるだけの仕事じゃなくて、皆から必要とされて、大事にされる仕事についてくれたことが嬉しくってねぇ」
「おじさんも必要。わたし車運転できない」魔女っ子が機械的に応えた。
「そういってくれるお嬢ちゃんはいい人ですよ。お嬢ちゃんたち、みたかんじ学生さんじゃなさそうですけど?」
「ARKS」

 ……魔女っ子、あんたもうちょっと言葉に気持ちとかこめられないの?

「へー、じゃぁ、うちの娘とおんなじで軍関係ですねぇ」

 ま、市民から見たらひとくくりに軍関係だろうさ。でも、おっさんの賢い娘さんは安全でクリーンな研究室で賢いことしてるんでしょうけど、アタシはどっちかって言うとあんまり賢くない仕事さ。
 魔女っ子のほうは賢いけどね。たまに何たら研究会だか学会だかにも行くみたいだし。アタシはハイスクール卒のARKSで、魔女っ子はインスティチュート・テック修了の博士ARKS。しかも魔女っ子は十四でそこを修了してる。世の中基準で言うなら、魔女っ子は秀才さ。
 ――アタシは頭をつかって抽象的な事かんがえてるよりも、もっと生きていくのに必要なことのほうを手に入れたかったから、ARKSになった。働けば働くほど、暮らす金には困らないってのが分かりやすくて、アタシ向きなんだとおもう。
 魔女っ子がARKSやってるのもなんか理由があるんじゃないの。知らないけどさ。

「じゃ、お嬢さんがたは今からお給料でショッピングですかい? いいですねぇ。働けど働けど我が暮らし楽にならずってやつですよ、こっちは」

 楽に生きてる奴なんかいないんじゃないの? おっさんも大変だろうし、こっちも大変さ。たぶんおっさんの娘さんも、それなりに苦労してる。ヒューマンの科学者じゃ、ニューマン科学者に脳の構造上苦戦するだろうし。ま、いざとなったら殴ってシメるって選択肢がヒューマンにはあるから問題ないような気もしてきた。
 魔女っ子は……まぁ、信仰とかいろいろ悩みがあるんじゃないの。分からんけど。


 タクシーを降りて、人が行きかう繁華街を歩く。
 ネオン、ホログラフ、勝手にパーソナルIDからアタシの趣味を暴く広告。
 ほんと経済活動ってのは個人情報を暴くことからはじめるよな。
 あれはいかが、これはいかがなんてバカな売り文句は無い。
 あなたにはこれが必要なんです!
 これこそあなたの人生を変えるんです!
 そんなことを訴えかけてくるCMが垂れ流されてる。
 要は、その存在が生活を変えるっていいたいわけ。
 そんな簡単にARKSライフが変わったらびっくりだって。

 とりあえず、魔女っ子がどうしても行きたいらしい店に向かう。
 その店の外観は、この科学万能主義の世界に反逆するかのように、木造店舗だった。
 なぜ繁華街にこんなもんが、といいたい。が、スーツ姿の兄さんや、きらりと輝く弁護士バッジをつけた姉さんなんかが客としていることから、ジャポン文化的には繁華街にこういう店があるのはスタンダードなことなのかもしれない。

「おや、パステルちゃんじゃないかい。ずいぶん久しぶりじゃないかい」

 なんじゃら親切そうなころころした婆様が出てきた。商品が駄菓子ばっかりなところをみると、ここは駄菓子屋か何かなんだろうか。あ、なつかしー。このガム、舌が青くなるやつだ。

「ARKSになったの」
「そうかい。頑張ったんだねぇ、パステルちゃん」
「頑張った」

 すると、婆様がパステルちゃんの頭をよしよしとなでる。
 アタシはおどろいたね。魔女っ子がほっこり笑ってんだからさ。
 なんかさー、こういうのっていいよな。アタシが頑張ったところで、だれかにほめてなんかもらえないしさ。
 ARKS事務局が金くれるだけさ。
 金か。じつはそれほど人を動かすニンジン効果がないのかもな。

「そっちの人は? パステルちゃんがお友だちをつれてくるなんて初めてじゃないかい?」

 ほっほーう。
 そーかそーか。この婆様にこのアタシを紹介したかったわけか。ARKSにもなって、友達までできましたってな。いいぜ、いくらでも協力してやろうじゃないの。

「生贄」

 魔女っ子がそう婆様に紹介する。

 アタシはイケニエじゃねーよ。
 アンタ信仰上の理由でアタシといるんかい。

「あらあら。恥ずかしがって」

 え? 婆様あんたそいつが恥ずかしがってるとかわかんの? すげーな。年の功ってのはやっぱちがうんだな。それともジャポン忍術とかいうやつか?

「あー。ヒマワリです。ヒマワリ・ヒナタ。誰も名前を呼んでくれませんがね」
「おやおや。そんな寂しいことをいっちゃだめだよ、ヒマワリちゃん。せっかくご両親が付けてくださった素敵な名前が台無しだよ? ヒマワリは太陽のように明るくないとね」

 婆様の言葉の説教臭さには辟易するけど、やさしさには感謝する。そういわれて、悪い気はしない。
 ところで、婆様と魔女っ子がどういう関係なのか聞きたいんだけど、そういうのは魔女っ子がそのうち話してくれそうな気もするから、あえて聞くこともないか。


 婆様の駄菓子屋の奥で、グリーンティーを頂いた後、アタシは魔女っ子をつれて、そこそこのブランド店に入った。
 べつにアタシが着るわけじゃない。いつも黒一色、宇宙の闇を引き受けるために生きてる魔女っ子に、まっとうな服を着せるためだ。
 べつに長い黒髪が、この子の見た目を暗くしてるわけじゃない。問題は明らかに服にある。黒く、もっと黒くと言わんばかりに黒を重ねるのはダメだとおもいます!

「ヒマワリ、わたし、こういうの向いてない」

 文句をたれる前に鏡をみろといいたい。白のゴシックはやっぱり似合ってる。
 白い肌になじませるには、やはり純白しかないな。これは買いだ。アタシの金で買ってあげる。

「あとは、カジュアル系ね。店変えるの」
「え?」

 魔女っ子がキョトンとしてる。こいつは服は一つの店で買うもんだとでも思ってるんだろうか。
 で、何店舗かまわって、魔女っ子を痴女っ子にしたり、ロリっ子にしたりと楽しんだ。
 ごめん、本当はアタシが楽しみたかっただけです。でも、いくつか服にバリエーションができたんだからいいでしょ。そういうことにしとけ。


 いよいよ念願のヲデン屋台で、アタシはショーチューにありつく。
 たまご、がんも、ちくわぶなんかを頼んで、ダイコンももらう。
 ヲデン屋台は、なぜかキャストがやってた。味、わかんの? といいたかったが、どうやら緻密なレシピがあって、それを精確無比に実現しているようだ。信じられないくらいうまい。

「料理は科学」といって、魔女っ子が餅巾着を伸ばしてる。

 たれてるぞ、出汁が……。

――らっしゃい

 新しい客が、カウンターにすわる。

「ちょ、アンタ……」アタシは絶句する。
「あー、こんにゃくとダイコン、それと厚揚げね。あと、ビール大」
――へい

 ヘイじゃねーよ。そいつキャストじゃん。

「キァハ准将、どうしてこんなとこに?」

 アタシは意を決して声をかける。あえてヲデンの件は聞かない。

「あら? 有害人間じゃないの。元気してた?」
「まぁ、おかげさまで」

 病院を紹介してもらったから、文句を言うわけにもいかない。

「准将はあれから何を? アタシらはおかげさまでARKSですけど」

 そしてイロイロ思い出す。どうしても思い出すのは、良くも悪くも仲間を失ったことだ。
 自分の責任だから、将軍に八つ当たりするのはおかしいことだと自制する。

「死者を出したことは謝るわ」

 キァハ准将の言葉に、逆に驚かされる。

「正規軍だったら救援するけど、ARKSにはそういう規則が無かった。だからあたしらは黙って指くわえてみてただけ。許してね」

 意外にも、准将は申し訳なさそうな口調だった。あんまり変化しないフェイスタイプだけど、それだけはよく分かった。

「謝られると、逆に腹が立つんだけど」
「そう? ヒューマンって分からないわね」

 そして、キァハ准将はビールジョッキを空にする。いい飲みっぷりだけど、それどうやって処理してるのか聞きたくてうずうずする。だけど、そういうのはキャストに対するマナー違反だ。殺されても文句は言えない。

「で、准将がわざわざアタシに謝るためにきたってわけじゃないでしょ?」

 たぶんテレポータ利用履歴でも追尾したんだろう。軍ならその程度の情報、交通管理局に照会すればいいだけのことだ。

「じゃ、単刀直入に言うわ。ダーカーのデータ回収よろしく。これが観測ユニット。報酬はデータの出来次第ね。軍の口座から振込みがあるから」

 やたら小型のチップが、出汁が染みて変色したカウンターに置かれた。ユニバーサルデザインで、武器端子に接続するあれだ。
 アタシは納得した。なるほど、これはWINWINの関係だ。
 アタシは好きなだけダーカーを殺し、報酬を得る。正規軍は戦闘データを集約し、のんきにオネムの時間をやってる兵士どもにインストールするわけだ。
 ただ、この行為の意味をかんぐりたくもなる。正規軍が動く段階に至っているとしたら――。
 これはARKSだけで対処不能な事態を、誰かが予測しているってことだ。

「ORACLEが緊急事象を予測した?」

 唐突に、魔女っ子が話に加わってくる。餅巾着やちくわぶより、興味深い話らしい。

「ORACLE? あたしら正規軍はあんな得体の知れないSAIは信じない。軍は最新技術が大好きだけど、総合戦略支援AIには枯れた技術を用いるの」

 またまた専門家の話になってきた。アタシみたいなハイスクール卒の戦闘屋にとって、少々理解というか、そもそも言葉の意味が分からないレベルの話になる。
 仕方ないから、アタシはおやじにハンペンとガングロ卵をたのむ。

「それがMARS?」
「そそ。あんた詳しいわね。船団外周の自律戦闘無人戦闘艦艇を動かしてるのは、MARS。なんで別系統かっていうと、ORACLEから独立したスタンドアロンじゃないと、ORACLが異常挙動を示したときに対処できないでしょ?」
「でも、フレーム同期はMARSの構造上、誤差が大きい」
「そこは妥協よね。ORACLEがどうやって動いてるかを知ったら、あんたも信じるのやめるだろうしね。で、MARSが最近出した予測では、ダーカーと船団は間違いなく接触する」
「その点、ORACLEの解とかわらない。ORACLEはARKSで対処可能と考える」
「答えが一致しても、アプローチは違うわけね。でも、あたしは戦争の歴史を信じてる」

 ヲデン屋でこいつらは何を小難しい話をしてるんだ?
 あれだ、楽しそうに仕事の話ばっかりするようになったら、それはもう、仕事中毒さ。
 アタシの死んだ親父もそうだった。フォトン工学について、小さいアタシにわけわからんことを一杯教えてくれた。何一つおぼえちゃいないけど、楽しそうな顔だけは覚えてる。

「で、結局のところ、正規軍は何がしたいんだよ?」

 アタシの問いに、キァハ准将は心外そうなさまをみせる。

「船団市民の防衛に決まってるじゃない?」

 そういや、そうか。ARKSとは全然目的が違うんだな。こっちは惑星探査。かたや正規軍は船団の防衛。どっちも誰かのために働いてるんだけど、実際やってみると、忘れてしまうもんなんだね。

「防衛ねぇ……」

 ARKSの設立目的が、殖民の露払い部隊を創設することだったことから考えて、特に船団の防衛任務があるわけじゃない。おどろくべきことだが、船団がなんらかの存在に脅かされたとしても、強制的に防衛戦闘に参加する義理はないってことになってる。これは規約に明確に書いてあることだ。

「とは言っても、正規軍の9割以上は寝てるんだけどね」

 ランニングコストを抑えるために、将校や、特殊任務部隊だけが平常勤務してるってのは、講義で聞いたことがある。

「大変だね、正規軍も」
「まぁね。それぞれの組織にはそれぞれ違う悩みがあるわけよ。悩み事に乾杯」

 アタシらは、コップとジョッキをあわせる。
 こいつには殺されかけたけど、なんというか、悪いやつじゃないってことが分かった。
 それで十分っしょ。難しい話なんかどうでもいい。
 だって、それは偉い人が悩んでりゃいいことだから。こういうキャストの女将軍みたいにね。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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