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ファンタシースター計画03

 アタシはほとほと病院と縁があるらしい。
 目を覚ますと、アタシは全裸でみょうちくりんな培養ポッドにぶち込まれてた。
 いわゆる重傷患者ってやつだ。
 そして、包帯で頭をぐるぐる巻きにした魔女っ子が、あたしを見てる。

「元気?」と彼女が言った。

 元気だったらこんなポッドに入ってるわけないだろといいたくなる。
 が、言おうにも口が何じゃらよくわからん医療機器で塞がれていたせいで話せない。


 女性キャストの外科医のおかげで、アタシは一命を取り留めたらしい。まぁ、確かに医者はニューマンかキャストのほうがいい。精密だし、病理探求は合理の極みだ。

「――ということで、左肩甲骨は代替部品ですので、少々違和感があるでしょう。それもしばらくすれば慣れますので、何かあったらこちらにメールください」

 女性キャストの医者は、アタシに情報カードをくれる。あとで端末に読み取らせればいいやつだ。

「あのー、この病院って?」
「ここは軍病院です。とはいっても、兵隊さんたちはみんな冷凍睡眠かログオフ待機ですので、いまは一般の方に開放しています。えっと、あなたはキァハ准将の紹介で入院していたようなんで、治療費は軍に請求しておきます。じゃ、お大事に。次の方どうぞー」

 なにやら取り付く島もなかったけれど、とにかくアタシは退院らしい。
 
 診察室をでると、よりいっそう暗さをました魔女っ子が、うつむきかげんで突っ立っていた。
 どうやら、待っていてくれたらしい。

「あなたが生きてて、ほんとに良かった」

 そう、魔女っ子が言ってくれた。
 アタシはよくわかんないけど、その言葉が嬉しくて、仕方なかった。
 だから、魔女っ子を抱き寄せて、しばらくだまってることにする。
 生き残ったのは、ただ運が良かっただけだ。
 実力なんかじゃない。
 ただ、あの二人より運が良かっただけ。
 だけど。

「泣いてるの?」

 知らないよ。
 ただ、アタシは悔しかった。
 二人を死地に向かわせたのは、アタシの決断だった。
 アタシが通信を無視してりゃ、物事はもうちょっと簡単に終わっていたかもしれない。
 たぶん、自分の情けなさにうんざりしたから泣いてる。
 許しがたいよね。
 だって、自分のために泣いてるんだぜ?
 人のために泣けるやつが、最強だとしたら、アタシは惰弱なやつだ。 

「なんで、アタシ生きてるんだろ?」

 理由なんかないだろうけど、ここは魔女っ子の不器用なやさしさに甘える。
 だって、こいつ、アタシをよしよしってなでてるんだぜ?
 信じられねぇ。

「救助されたから。わたしは倒れる前に救助ビーコンをだした」

 魔女っ子が愛らしい無愛想な声で教えてくれる。
 だがな、それはお前、アタシが求めてる答えとはちょっと違うんだけど。
 ま、いいか。
 
 あれ?
 
 じゃ、誰が助けてくれたんだろ?
 まぁ、たぶんそいつはお人よしなんだろう。
 感謝するぜ、お人よしさん。


『星々を往く巨大艦艇の群れである外宇宙航行船団オラクルは、船団市民にとっては世界そのものといっていい。
 我等が世界樹たるマザーシップを中心に幾百も展開するアシモフ級ドーム型居住艦は、巨大な亀が、甲羅をゆりかごにして、人が想像できない数の命をはぐくんでいるかのようだ。それだけにとどまらず、規則的な距離をおきつつ、無数のHGウェルズ級航宙船が百万単位の人口を宿し、自治区を営むことで、惑星に居住していたか頃のような『社会』というものを擬似的に作り出している。
 これら船団の命を守るために、船団外周は、無人防衛艦隊のほか、軍関連の諸艦艇が、一糸乱れぬルーチンワークを日々行っていることは、最近忘れられつつある。
 なぜこの船団が生まれたのか。この船団の目的は何なのか。そんな自らの由来を忘れてしまいそうになるほどに、この船団は長く旅を続けている。
 このオラクル船団以外にも、幾つもの外宇宙航行船団があることを、人々は知っているし、それと接触することもある。だが、それも船団市民にとっていわばお祭り騒ぎ程度のものであり、そのことが何かを動かすことも無かった。
 つまり人々はもう惑星を必要としていない。
 人々の心は次第に日々の生活に向けられ、快適で管理された都市船を我が家のように感じはじめている。多くの人にとって、居住可能惑星の発見は、新しいフォトン粒子が発見されたのと同じくらいに学術的な話題にしか過ぎない』
 
 アタシはこのくそつまらない配信記事を、さっさと削除する。
 そして、安物のベッドのうえでごろりと転がる。
 床には魔女っ子が勝手にまた謎の秘術道具セットを入手したらしく、それを広げてなにかブツブツいってる。
 まぁ、こいつが変なやつなのは分かってるし、大丈夫。
 なにか宗教的な理由なのかもしれないからな。
 宇宙統一教とか、ラッピー真言協会とか。知らないけどさ。

 そして、アタシは壁際に飾ってある大剣と、杖をみる。

 退院した後、すぐにガルムとトーマの遺品を整理した。
 二人とも身内というか、家族というか、そういうのがちゃんといたらしい。部屋は武器をのぞいてすっかりきれいになっていた。
 
 で、エスメラルダ教官が言うには、武器は形見分けにしてくれといっていたらしい。

 あのとき、アタシは教官に食って掛かった。

「なんで、なんで、救援がなかったんですか!」

 今思えば、かなり甘えた台詞だ。
組織ではなく、己の身一だけを信じるのがARKSの基本だってのに、あたしゃどうかしてたんだね。
 その後?
 教官に殴られたよ。
 お前は、二人を侮辱したってね。
 それっきり教官とも連絡を取っていない。恥ずかしくて、とりようがないだけなんだけどさ。

「ねぇ、魔女っ子。あんたもアタシも正式にARKSなんだ。もうルームシェアの命令なんて無効さ。アンタも好きなように出て行っていい」

 アタシは妙な香を炊きはじめた魔女っ子にはなしかける。

「どうして?」魔女っ子は両手を合わせて、なにやらゆっくりと上下させている。

「いや、気にしにないで。アンタがいいなら好きにしてくれていい」

 そう。正直、救われてる。
 魔女っ子はいつもうつむきかげんで、アタシの目を見て話すことなんかほとんどないけれど、一人で鬱々としているよりはずっとマシだ。
 たぶん一人でいると、部屋のものめちゃくちゃにして暴れて、意味のない自己嫌悪につぶさていたと思う。

「お告げが、あった」

 魔女っ子が、こっちを向いた。
 お告げってあんた……やっぱなんか信仰してるわけね。

「なに?」

 魔女っ子の信仰心を馬鹿にするわけにはいかないので、ちゃんときいてあげる。

「晩ごはんは、カレーがいい」

 ……ほんとにお告げなのか、アタシにはまったく分からない。


 ARKSになることと、ARKSであり続けること。この二つには大きな違いがある。
 その違いのキモになってるのは、内的動機だ。
 報酬とか、惑星に降りられる特権だとか、そういうのは外的動機で、与えられるものに過ぎない。
 内的動機ってのは、それぞれが自分勝手に思い込んでいるもののこと。
 いわば、思い込みの力ってのが、ARKSであり続けるためにはもっとも重要なんだ。
 そして、アタシの動機は単純明快。
 復讐というか、敵討ちというか、そういうもの。
 1にダーカーを殺し、2に敵対する原生生物を殺し、3,4がなくて、5に敵を殺す。
 そもそもガルムやトーマが死んだのも、アタシがどっかのアホを救援に行くって決めたせいだ。
 後悔はあとからするもんだっていうけど、まさにその通り。アタシは後悔してる。
 ARKSの性質が極度化された個人主義で、指揮命令系統なんてほぼ皆無の点から、責任というのは自己責任主義に帰着する。パーティリーダーを信じて、それで死んでもリーダーの責任ってわけじゃない。
 信じたほうの責任なんだ。
 でも、それは社会的サンクション(懲罰)がないだけだ。
 心は、ずっと責め続ける。

――以上。要点をまとめますと、フォンガルフを討伐すればいいだけです。

 任務をARKSに按配する受付のお姉さんが、たんたんと概要を説明する。
 アタシは了解、といって受注のためにARKSの身分証をかざす。この身分証に、アタシの活動の履歴、成果、いわば戦歴が記録されていく。
 隣りの受付で、魔女っ子も同じ任務を受注している。
 べつに、二人で同じ仕事をやるって話し合って決めたわけじゃないんだけど、自然の成り行きでそういう流れになっている。
 
 アタシらは、この馬鹿デカイ移民船団から発進する発着場にむかう。
 結構なARKSとすれ違うけど、べつに知り合いって分けじゃない先輩連中が慣れた様子で行き来してる。アタシの力量じゃ、まだまだ使いこなせそうにない武器を持ってる奴もいるし、やたら仲良し集団みたいなパーティもいる。
 アタシと魔女っ子は、指示された降下艇『フライングスパゲッティ』を探す。

「なんだよ、フライングスパゲッティって」

 アタシはナンセンスな機体名にあきれる。

「神」

 とんでもないことを魔女っ子が言い出した。それ、他の神様とかに失礼じゃねぇの?

「スパゲッティが神様ってか? そりゃ傑作だな」
「わたしは、信じてる」

 じろりと魔女っ子がにらんでくる。
 いやー、マズイこと言っちまったな。世の中、信仰の形っていろいろだもんな。

「すまん。あんたの信仰心を傷つけた」

 アタシは正直にあやまる。オラクル移民船団は、文化が混在しすぎててわけのわからん状態ではあるが、いくつかマナーがある。そのうちの一つは、信仰の問題には口を出すな、というのがある。
 数えられない歳月を、いろんな考え方をする連中が共同生活するというオラクル文化において、どうにもこうにも、信仰問題はデリケートだ。だから、他人の信仰をどうこういわない。

「ってことは、あの降下艇が指定されたのは……」
「宗教上の理由」

 あ、そう。ま、アタシにはあんまり関係ないんだけどね。床一面が針山になってるとか、そういう奇怪なのじゃなければ、アタシはべつに何も言わない。

 降下艇『フライングスパゲッティ』の内部は、安心できることに普通だった。
 ただ、特徴的だったのは、ショップとのポータル購買システムに、空飛ぶスパゲッティを信仰してる連中向けのこまごまとしたものが売られていることだ。とくに、ヌードルの類が充実してる。
 「ラーメン」と祈りの言葉を唱えて、魔女っ子はもくもくとヌードルを食べてるので、アタシは彼女の宗教的儀式を邪魔しないように、コクピットで雑談することにする。
 パイロットの兄ちゃんは、航行大学を出て、民間軍事会社に就職したばっかりだそうだ。どことなくおっとりとしたやつで、操縦席にはアニメキャラのホログラフが飾ってあった。こいつ、ギークなんだろうな。ちょっとトーマを思い出す。

「じゃ、出発してくれ」
「いいんですか? 御同乗の方、なにか食べてらっしゃいますよ」

 オタクだかギークだかの兄ちゃんが、カーゴブロックのカメラ映像を見て言った。
 たしかに魔女っ子はなじみの座布団に座って、ヌードルをすすってる。うまそうだな。

「魔女っ子、出発していいか?」

 アタシが喉に当ててある声帯通信器で問いかけると、通信イヤリングから「問題ない」という声と、ヌードルをすする音が聞こえた。

「問題ないらしいぜ」
「了解。当機はこれより惑星ナベリウス指定座標に移動後、降下員を投下。所定位置にテレポーターを敷設し待機します」
「オーケー。じゃ、発進してくれ」

 アタシは空席になってる副操縦士席に座る。
 機器にさわらないなら、座っててもいい、と気のいいオタクな兄ちゃん許可してくれたしな。


 惑星ナベリウスの上空2万フィート付近には結構な数の降下艇が飛び交っている。
 アタシが覗き込んでるカーゴブロックの窓からも、行きかう航空機を肉眼で観察できる。

「いちいち地上部隊なんか送らなくても、空爆とかでフォンガルフなんてさー」

 アタシは魔女っ子にぼやく。

「環境被害が大きい。大規模で断続的な空爆は生態系を狂わせる」

 儀式を終えて、お香だか魔方陣だかを片付けてる魔女っ子が、お勉強のできるおつむを駆使した解答をくれる。

「ARKSの命より、環境が大事か」
「ハーヴィンジャー惑星環境改変法に基づいてARKSがある。法を超えることはできない」

 はいはい。おなじみハーヴィンジャー法ですか。おエライ科学者さんだかが、惑星入植を頑張って法制化してみたってのがそれ。ルール無用の入植者が出るのを防止すると共に、惑星環境を母星のように破壊しないためらしい。めんどくさい法だ。

「じゃ、降下するよ」

 アタシはめんどくさい勉強のはなしは締め出して、さっさと降下プールに飛び込んだ。
 原理? そんなのは知らない。寝てたから。
 ただ、感覚としてはウォータースライダーだな。でっかいプールとかにあるやつ。
 滑ってるときは楽しいけど、降りちまえば死とご対面。
 なるほどARKSってのは、やばい商売だよ。

 魔女っ子が支援してくれるおかげで、目の前の大猿ザウーダンだの、でかい狼なガルフなんかを、効率的に処理できる。アタシがバッサバッサと奴らの肉だの骨だのを切り裂きまくって、怒りの矛先をこっちに向けさせる。
 あとは魔女っ子がフォイエだのゾンデだのとかいう難しい理論が一杯なテクニックを使って一掃してくれるわけさ。
 で、後は担当区域に『特殊インセンティブ報酬契約』というARKS特有の労働契約に基づいてばら撒かれてる金だの武器だの道具だのの『データ』を回収する。
 そう。敵を倒したり、コンテナに入ってるのはあくまでデータ。実物が入ってるわけじゃない。地上で入手したデータは、ARKSを管理するセントラル・コンピュータに記録され、その道具なり装備なりはフォトン・クラスタ・コンテナに一括配送される。
 後は再置換型フォトンデータ体に変換されて、アタシらの個人装具として転送されるわけ。
 ま、とどのつまり、惑星上で拾う装備ってのは全部本当は母船の中にあるってこと。それを割り振ってるだけにしか過ぎない。
 だから、仕事をすればするほど回収品というか、配給品が多くなり、いい報酬になるわけだ。
 逆に働かなければ報酬はない。完全成果主義だ。
 保険とかそういうのは各自加入だし、なんだかARKSってのは軍というよりも個人企業みたいなあるんだよね。一応軍なんだけどさ。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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