スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ファンタシースター計画18


 灼熱の洞窟、この世界の暑苦しい赤をかき集めたらこうなりました的な洞窟で、リハビリがてら、殺す。
 殺されていくのは龍族の連中。
 殺すのはアタシら。
 それが倫理的に正しいかどうかはしらねぇけど、体の調子を取り戻さないとARKS稼業じゃ死んじまう。
 だけど、この任務はいけ好かねぇ。
 好かない任務だけどこなす。
 なぜなら、アタシはARKSだから。
 こうやって、言葉を交わせる種族のハラワタかっさばいて、ギャーギャー言わせるのが仕事なんだ。
 だから、出来るだけ速やかに殺す。
 無駄に傷つけるのは、アタシの信念に反するから、斬って、撃って、さっさと止めを刺してやる。
 だけど。
 龍族のディーニアンとかいうのは、人型だ。
 おまけに言葉が通じて、独自の文化を持ってるんだぜ?
 それを殺せって任務を出して、報酬で釣ってるんだから、ARKS本部ってのは信用ならない連中だよ。
 それにしたがうアタシは、もっと信用ならんかもしれないけどね。

「片付いたな、魔女っ子」
 
 アタシはブラオレットの刀身をずぶぶと引き抜いて、血を振り払った。
 龍族の戦士なんだろう。このソル・ディーニアンは死んでも剣を離さない。まさに、戦士の中の戦士だよ。

――任務達成、お疲れ様ですっ!

 アタシの通信デバイスに、底抜けに明るいオペレーターの声が聞こえてきた。
 たぶん、オペレーターの女は、アタシらのレーダ上の観測データだけみて、任務の成否を判断してるんだろう。
 だから、底抜けに明るく振舞える。
 でも、この状況であかるく、お疲れ様なんて言い合えたら頭狂ってるに違いねぇ。
 アタシと魔女っ子で、龍族の戦士たちを三十人は殺したぞ?
 そこかしこに、剣を握ったまま倒れている死者の列を見て、お疲れ様なんてありえない。
 かける言葉はただ一つだ。
 FUCK。

「不満なら、きくけど」

 魔女っ子は、殺したディーニアンの杖を調べている。
 たぶん、そういう文化的な装具に興味があるんだろう。

「不満だよ。何もかも不満だ」
「そう」

 ここいらで、アタシは溜め込んだ不満を愚痴っておく。

「大体おかしいんだよ。アタシは惑星アムドゥキアやらリリーパやらの降下資格なんざもってなかったんだよ!」
「それは何回もきいた。記憶障害ってかわいそう」
「いや、絶対そうだった!」
「それで?」
「だけど、気がついたときには資格を持っていた。けど、これはARKS資格というよりも、正規軍の資格じゃねぇか」
「仕方ない。キァハ准将からの依頼に応えるために発給してもらったんだから」
「だけど、あの冷酷女将軍は行方不明、だろ?」
「報道では。本当は何してるかわからない」
「でも、以前のアタシは相当心配してた、そうだな?」
「そう」
「以前のアタシは、もしかして惑星リリーパの何かを知っていたかも!」
「そうかも。だけど、それは失われた」
「まぁ、あの女が簡単にくたばるはずがないから、とりあえずおいとくとしても」
「ミカンとマトイ?」
「そうだ! あの二人のことが腑におちねぇ」
「どうして?」
「だって、アタシは何度も言ったとおもうけど……」
「デコヒーレンスと観測者?」
「それそれ」
「確かに興味深いけど、わたしの日記にはそんなこと書いてない」
「――日記かいてるのか?」
「昨日の自分が存在したことを確認するために」
「は?」
「古典的量子論と、現代のフォトン理論が融合すれば、未来が過去を改変する因果律収束や、特異デコヒーレンスもありうる」
「よくわからんが、アタシのいってることは認めてくれるんだな?」
「理論上は。だけど、マトイが絶対的観測者であるという見解は理解できない」
「どうしてさ?」
「調べた。マトイは時空接触したり、並行存在していたりしない」
「は?」
「フォトンポテンシャルもクォンタムポテンシャルも、所定の閾値だった」
「?」
「不安定ではないということ。つまり――」
「ためなくていいから。早く言ってくれよ」
「因果律収束がすでに生じた。本来出会う予定のなかったあなたが、マトイと接触したことで、全てのものとの関係性が調整された」
「……ようわからん。が、何でアタシにはその収束やらが起きてないんだ? ロビンソンクルーソーみたいに、異文化の世界に来たみたいなんだけど」
「さあ? あなたが『偽装人格計画』で生まれたプレーン・ボディだからかも」
「結局、そこかよ」

 アタシはアタシの生い立ちを忘れても、問題ないとおもっていた。
 確かに愛したような気がする『パパ』や、なんとなくあったような気がする幼少期の思い出なんかが、焼付け記憶だと知ってから、意図的に考えないようにしてた。
 だけど、その特殊なアタシの生い立ちが、こんなわけのわからん状況を作る現況だとしたら、ちょっと困る。
 まったく。
 どこの、どんな機関が偽装人格計画を推進して、プレーン・ボディを……

「なにか考えごと?」

 魔女っ子が伏目になりつつも、アタシを心配してくれる。

「え、ああ。偽装人格計画の首謀者について考えてた」
「考えて、どうにかなるの?」

 たしかに。
 下手な考え休むに似たりってのはよく言ったもんだ。
 アタシが足りない情報で事態をこねくりまわしたって、なにか真相がポロリしてくれるわけではない。
 大事なことは、適応することだ。
 いつぞや、ミカンがこっちの世界に来ちまったとき、魔女っ子はよくそう言ってた。
 それは正しい。
 適応してから、考えれば良いだけなんだ。

「――考え事はオワリだ。帰るぞ」
「待って。龍族の死体からサンプルを採る」
「へ?」
「研究所からの個人的依頼」
「あ、そ」

 魔女っ子はいそいそと死体から組織を切り取る作業を始める。
 アタシはなんだか、戦士の尊厳ある死が汚されてるような気がした。
 けど、魔女っ子はぶつぶつ祈りの言葉を唱えてるから、彼女も敬意をもって接しつつ、自分の仕事をやってるんだ。
 それに文句をいうなんざ、ダチのやることじゃない。


 アタシは、魔女っ子を後ろに乗っけて、愛用のモーターサイクルを飛ばす。
 宇宙船がワープする時代に、なんでこんな古くさい移動機械が存続してるのか、だれも分からない。
 ただ、人々はなんとなくモーターサイクルを捨てられなかったんだろう。
 だから、いまだにコツコツと作られているし、好きな奴は好きで乗ってる。

「……飛ばしすぎ」

 後ろのほうで、タンデムバーにつかまってる魔女っ子が文句を言ってくる。
 飛ばしてなんかいないんだけどな、
 単に、体が露出してるから体感速度が速いだけなんだ。その証拠に、周りの車と同じ速度だろ、といいたい。

「バイクなんて、人類の乗り物じゃない」

 そういいながら、バイク乗るときには、かわいらしい革ジャンを着る魔女っ子の気持ちが理解できない。
 教義でそうなっている、というわりには、いつも中々良いものを使ってるし。
 なんだかんだで、バイクに乗ることが嫌いってわけじゃないんだろう。

「次の交差点、左。それで看板が見える」
「へいへい」

 アタシがバイクを飛ばしてるのは、別に魔女っ子を連れてどこか旅に出ようってわけじゃない。
 単に、ミカンの勤めてる職場を覗きに行くだけだ。
 まぁ、迷惑って事はない。
 なぜなら、ミカンは大学付属の博物館で働いてるから。
 見物客が来たら、雑用的に案内業務もさせられてるらしい。
 つまり、アタシらは物好きな見物人になりに行くわけだ。


 付属博物館の建物は、さっすが研究機関と驚きたくなる偉容だった。
 箱物に金をかけるってのは、いつの時代も変わらない。

「デザインの基礎は、地球歴のころ、中心的存在だったUSAという国の大統領府」
「なんたらハウスだろ」
「それ」

 アタシの地球歴時代の知識なんざ、いいかげんなもんだ。
 まぁ。魔女っ子は理解してるみたいだけど、いちいち説明するのが面倒なんだろう。
 
「ところで、入館料とかは?」
「わたしは入館許可証持ってるから」
「かぁーっ! エリート博士様は違いますねぇ」
「あなたはあっちでチケット買ってきて」
「博士様の助手ってことで、入れないのか?」
「助手って顔じゃない」
「おい」

 アタシはしぶしぶ、暇そうにしてた受付のおばちゃんに金を払って、チケットをもらった。
 ついでにパンフレットも手渡された。展示物の概略が書いてあるあれだ。
 それの記載によると、常設展示は『地球の歴史』『パイオニア計画』『グラール太陽系史』の三つがあるらしい。
 その他、期間限定で『脅威! 惑星リリーパ・メカニクス』なるものがやっている。

「魔女っ子、リリーパ・メカニクス観ようぜ」
「なにいってるの? ミカンに会いにきた」

 ミカンは地球の歴史部門で働いてる。
 
「地球の歴史って面白いのか?」
「人類を面白いと思う?」
「全然」
「なら、面白くないと思う」
「えー」


 エアコンがよく効いた館内は、よくある博物館そのものだった。
 ガラスケースやら展示場を薄暗くともす証明。
 物静かに展示物を見る爺様婆様に、学者肌っぽい若造。
 アタシみたいな、昨日は龍族三十人殺してきました、みたいな野蛮人は少ない。
 そう、少ないだけだ。
 よくよく見てみれば、ARKSっぽいやつだって何人かうろついてる。
 たぶん、こういうところが好きなんだろう。

「パステルさんっ、ヒマワリさんっ、お待ちしてました!」

 とことことティーンエイジャーがよってくる。
 よう分からん、ふるくさい格好をしてる。

「なんだ、その格好は?」
「えっとですねー、セーラーを博士が見つけてきたんです! 似合います? 似合います?」
「まぁ、なんというか、自然だな」

 アタシは適当な評価をする。
 だって、そのセーラーだとかいう服装が、何なのかよくわかっていないし。

「それは三種の神器の一つ。セーラー服、スク水、ブルマー。神よ、わたしは畏れ多いものを拝めました」
「……魔女っ子、おまえ何言って」
「ヒマワリ・ヒナタ。あなたはいま神の辺縁にふれているの」
 
 魔女っ子が神妙な面持ちで、語り始める。
 なんでも、その三つを同時着用すると、特定の脳波を持つ男性の脳を直接破壊できるらしい。
 特定の、という連中がどんなやつかは知らんが、脳を直接攻撃するとはすごい兵器だ。
 正直、感心する。

「見た目の割には、とんでもねぇ兵器を着用してるんだな、ミカンは」
「おそろしい子」

 アタシたちは、少しだけミカンから離れる。
 このまま日ごろと同じ距離をとっていたら、確実にやられるだろう。
 ARKSとしての戦闘経験が、全身の筋肉を緊張させる。
 魔女っ子も、杖をいつでも召還できるように身構えている。

「パステルさんほどの人でも、地球文化って誤解なさっているんですね……」
「誤解ではない。ドージンシーという薄い古代の文献資料ではそうなっていた」

 魔女っ子いわく、ドージンシーというのは、オフセット印刷なる特殊な加工が施された書物らしい。
 性的描写を含むものや、そうでないものなど、多様で猥雑な特殊文化を表現したもとか。
 恐ろしい文化もあったもんだ。
 わざわざペーパーに絵を書いて、配布するなんて狂気の沙汰だ。

「……ドージンシーじゃなくて、同人誌です。それに、セーラー服は三種の神器じゃありません。ただの制服です」
「制服だって? 地球時代の軍の正式採用品だったってことか!」

 アタシはますます警戒を強める。
 だって、いまのARKSが装着している防具だって、ある種の制服だ。
 拡張型フォトンリアクターによって、不可視の防御場を形成する最新鋭モデルをアタシや魔女っ子は着用している。
 たとえ一見露出が多いように見えたって、それはあくまで稼動域を極大化するための合理化でしかない。
 柔肌が出ているように見えて、流体フォトンが防御層を形成しているのだ。
 だったら……。
 そのセーラー服とかいうのも、ただならぬ機能を備えているかもしれない。

「確かに、元々は海軍の制服でしたけど」

 海軍か……。
 今では軍は完全に統合運用されているから、何をしていた連中か知らないが。
 ただ、海というのは聞いたことがある。
 それは巨大な塩水の世界。
 スペース・ツナみてぇな巨大な魚がうようよいて、オルカだとかジョーズだとかいう知的な海洋生物が熾烈な生存競争を繰り返しているとか。
 でっけぇイカが防空戦艦みたいなのを飲み込んでる映像資料も魔女っ子に見せてもらった。
 ホホジロザーメとかいう怪物が、ヒューマンどもをデンデンデンデンとかいう音楽とともに食ってる資料もあった。
 そこに投入された軍なんだと考えると、相当な猛者たちだろう。
 いまで言えば、ARKSの戦闘狂連中とか、正規軍の宙間機動打撃兵、強行偵察兵なんかを想像すれば良いのかもしれない。
 そんな連中が採用していた制服だとしたら、マズイ。

「でも、なぜか女子中高生の制服として普及しちゃうことになっちゃったんですねー。戦前ですけど」
「戦前?」
「第二次世界大戦です。国家総力戦。学徒動員と勤労奉仕で、セーラー服はまた戦場を走ることになりました。ひめゆり部隊とか」
「国家総力戦?」
「はい。男女中高生は、戦争のために学業を中断して、工場で兵器を作ったり、戦場の医療を支えたりしました。あの頃は小学生だって空襲に備えてバケツリレーしてたとか。男子大学生や専門学校生は学徒動員で軍に入って、たくさん亡くなったそうです」
「戦場になったのか? あんたの国は?」
「第二次世界大戦のときは。主戦場になったのは沖縄でしたけど」
「そのとき、セーラー服は砲弾の下を走ったんだな?」
「沖縄、本土の空襲なんかでは、そうだったみたいです」

 アタシと魔女っ子は何も言わない。
 実際に、船団を守り、殖民惑星を保護するというARKSは、今まさに種族存続のための絶対生存戦争の最前線に立っている。
 そして、そのセーラー服とかいうのも、国家総力戦とかいう戦争の形態の中で、戦場となった場所を走る少女が着ていたものだとすると――
 アタシらは、敬意を持って接さなくちゃいけない。
 何千年前、何万年前か知らないけど、けっして古代の遺物としてバカに出来るものではない。
 なぜなら、それは戦士の装束だからだ。
 我々ARKSは頭のおかしい連中も多いが、全員、戦士だ。
 だったら、戦士の装束をみたとき、独特の感情が芽生えるのが当然だ。

「ミカン、あんたも、戦士の末端に列されていたんだな。アタシ、見直したよ」
「へっ?」
「神のめぐり合わせに感謝を」

 アタシと魔女っ子は、ミカンの服装に頭を下げた。
 なるほど、兵器としての機能は失われているが、戦士の装束としての伝統をなんとなく感じるよ。

「と、とりあえず、案内しますね!」
「ああ、さっきは無礼な態度をとってすまんかった。その服が最高に似合う女になってくれ」
「応援する」
「え、あの、え?」
「さぁ、案内してくれ。地球の歴史に興味を持ったんだ」
「お願い、ミカン」

 戦い続けた地球文化の遺物を学びたいという熱い気持ちがみなぎる。
 魔女っ子のやつも、知的好奇心が相当に刺激されたらしい。
 まさか、博物館でこんな厳かな気持ちになるなんて思ってもいなかったぜ。
 まいった、まいった。
スポンサーサイト

テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。