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ファンタシースター計画15

 アタシに生きる目的があるとすれば、一つしかない。
 以前はダーカーを殺したり、F機関がどうのこうのってのがあったけど。
 正直、自分の記憶が嘘であることについてうんぬんより、ミカンを助けたい。
 いや、助けるってのは語弊があるよね。
 助けなくていい。ただ、奴が独り立ちするための踏み台にさえしてくれればいい。
 
「あなたのやさしさは、ミカンを救うと思う」

 魔女っ子がアタシに一杯のジャポン酒を進めてくる。
 惑星の夜を再現したドーム天井の下、回転スシ屋で一杯ひっかけてる。
 つまり、アタシらは『バショー』で久々の休日を謳歌してるわけだ。
 周囲の客は、家族連れとか恋人同士。
 みんな週末の幸せの欠片みたいなのを食べてるんだよ。

「……本当に、すいませんでした」

 ミカンがハマダイをつまみながら謝る。
 その言葉には多少の気まずさと、十分なほどの反省があった。

「私が勝手に公園にお散歩に行ったりしたから、あんな事件が起きたんですよね?」

 ミカンがそういうのに対して、アタシと魔女っ子はきょとんとする。

「お前、勘違いしてるぞ?」
「え? でも、あれは私を狙った事件なんじゃないですか? 法院の人たちは、わたしの存在は特別だから、危険が及ぶかもしれないって言ってました」

 ま、最高法院の連中がどう考えてるか知らない。
 けど、キァハ准将のほうは、ミカンの利用価値は喪失の傾向にあるといってた。
 その理由は聞かなかった。
 アタシは、できるだけミカンをそういう策謀の渦から離してやりたいとおもってる。
 そのためには、首を突っ込まないことだ。
 
 
「お前を狙ったわけじゃないさ。あの事件はな、法院の持っていた【ブラックペーパー】とかいうのに絡む事件らしい。それが情報なのか、紙なのか、はたまた組織なのかは聞いてない。ただ、確実なのはあんたと関係はないという事実だ」
「……そうなんですか。私は自分のせいで法院の憲兵さんたちが亡くなったと思ってました」
「誰かのせいで死んだって考えるのはやめておけよ。心はそういう負荷に耐えられるほど強くはできてないんだ」

 特に、ミカンの心は。
 アタシは作られた存在で、ミカンは望まれて生まれた存在だから、心の強度が違う。
 いや、仕組みが違うんだろう。
 愛されて育った奴の心と、計画に沿って作成された心の違いがあるとすれば、あきらめの速さの違いだろう。
 愛されたことが確実な奴は、心の仕組みがとても複雑だ。
 センシティブといってもいい。いや、センチメンタルかもしれない。
 家族とケンカしたりもしただろう。
 親に生意気な口をきいたりもしてたんだろう。
 それでいて、一緒に飯食ったり、花火見たりしてるはずだ。
 だとしたら、そういう心は自然に豊かになるだろう。
 だけど、もう二度とそんなことはかなわない。
 ミカンは本当の意味で天涯孤独になってしまった。
 それに比べて、アタシはパパと呼んでいたやつの記憶は、どっかの誰かのもので、アタシ自身の記憶ではなかった。それはとても悲しかったけれど、割り切りはできる。

「ヒマワリさんは、そういうふうに考えたことがあるんですか?」
「そういうって、どういう?」
「えっと、自分のせいで誰かが苦しい思いをした、って感じのを」

 何気ない様子で、ミカンがアタシに訪ねてくる。

「ブリとハマチ、あとカニの味噌汁」
――ヘイ

 魔女っ子が、たんたんと勝手に注文をしまくる。
 今日はアタシのおごりだ、と言ってしまったことをちょっと悔やむ。
 この黒髪女には、遠慮という概念が存在しないようだ。
 そんな様をみながら、アタシはしずかにミカンに声をかける。

「あのさ、ミカン」
「はい」
「アタシは、初めての実戦で友達を死地に導いたんだ。そこでスシ食いまくってる魔女っ子も、そのときアタシのせいで重傷を負った。でも、アタシと一緒にいてくれる。それに救われてる」
「いつも一緒にいるわけじゃない。ヒマワリはホラー映画を観ない」
「そこはどうでもいいだろ」
「どうでもよくない。あなたはホラー映画を観るとバイタルサインが不安定になる」
「うるせー」
「事実は科学の第一歩」
 
そういう突っ込みはどうでもいいんだよ、魔女っ子。
 だけど、ミカンはくすりと笑う。
 なんだよ。何がおかしいんだよ。

「パステルさんとヒマワリさんって、仲がいいんですね」
「よくない。一緒に住んでるだけ」
「おい。アタシはお前を友達だと思ってたぞ」
「違う」
「……マジかよ」
「あなたは、わたしにとって最初の親友」

 オーケー。
 やっぱりお前は最高だよ。
 だからアタシは魔女っ子のグラスにショーチューを注いでやる。
 アタシと魔女っ子の関係を微笑んでみてたミカンが、職人にサーモンとマグロを頼む。

「うらやましいです。私はこっちにきてから、混乱してばかりです」
「だからさ、アタシらが協力してやるって言ってるだろ」
「でも、ご厚意に甘えるだけでは……」
「なんだ? サイタマ人は礼儀とか儀礼とかを重視するのか?」
「サイタマ人?」
「お前はサイタマってところ出身なんだろ? 国なんだ?」

 魔女っ子がずいっとガリを勧めてきたので、中断される。
 ガリの甘辛いさわやかな香味で、アタシの舌が心地よくしびれる。

「ヒマワリ・ヒナタ。サイタマは国家じゃない。一国家の一地方」
「へー。公爵領か何か?」
「……すいませんけど、ヒマワリさんの地球暦の認識って、どんなのなんですか?」
「え? なんか戦国時代だったんだろ? 国とか地方とかがしょっちゅう戦争とか反乱とかしてて、革命とか、天災とか、愛とかそういうの全部あったロマンチックな時代」
「ヒマワリ、それ『テラ・ラ・テラ』の話」

げ!

「それ、なんですか? パステルさん」
「ヒマワリが読んでるコミック。ベッドの下に隠してるの」
「なんで知ってるんだよ!」
「秘密はよくない。女同士、恥ずかしがる必要ない」

 いやいやいや。てめぇのほうが秘密が多いだろ。

「ヒマワリさん、私、頑張って独り立ちしてみます」

 ミカンの瞳には強い意志が感じられた。

「いいことだな。手は貸してやる」
「そこで、お願いなんです」
「なんだよ? 金はあんまりないぞ」
「職場を、紹介してほしいんです」

 なるほど。
 それは確かに重要なことだ。
 なんとかどこかでメセタ稼ぐ方法がないと、この船団で生きていくことなんかできない。

「職かぁ。で、お前、何が得意なんだよ?」
「えっと、小学校のころからずっとフェンシングやってます。国体にも出ました」
「なんだそれ?」

 アタシの知らない競技だ。
 こういう時は魔女っ子の出番だ。

「ずっと昔の騎士の剣術だったもの。地球暦のいつからか、それはスポーツになった」
「騎士か。ちょんまげ結ってネクタイして、鎧をまとってるんだろ?」
「たぶんそれ」
「全然違いますよ!」
「あれ? 違うってミカンが言ってるぞ」
「よく知らない。地球暦の研究をしている人はかなり少ないし、文献もない」
「――いいですか、騎士ってのはですね」

 それからミカンは騎士がいかに礼儀正しく、残酷で、わけのわからん連中だったのかを説明してくれた。
 すくなくとも、語尾にござるを付けるわけではないことくらいは理解できた。

「ってことはミカンは剣技が得意なのか?」
「……人殺しとか、動物を殺すのは嫌です。だから、そういう仕事はしたくありません」
「贅沢な奴だなぁ。嫌なことやると金を稼げるってのは世の中の一つのルールだぞ」
「研究能力はある?」

 魔女っ子が無茶振りをする。

「研究なんてできません。夏休みの自由研究でよく飛ぶ紙飛行機作ったくらいです」
「わたしのハイスクール時代の自由研究は『群集行動の研究』だった。蜂や蟻などの社会性を有する昆虫の研究は興味深い。七歳のころ、そればかりしてた」

 はいはい。
 七歳でハイスクール行ってるような奴の話は参考にならんよ。

「ってことは、ミカンはマジでこの世界では役立たずなんだな」
「皿洗いとか、飲食店とかはないですか?」

 すがるようにミカンが聞いてくる。

「自動化と機械化が進んでる」

魔女っ子がミカンの希望を粉砕した。

「あ!」
「どうしたんですか、ヒマワリさん? もしかして心当たりが?」
「いや、接客業があるぞ」

 アタシがそういうと、魔女っ子が睨みつけてきた。
 なんだよ。
 事実を言っただけじゃねえか。

「なんでもします! 是非紹介してください!」

 ミカンが頭を下げる。
 だけど、頭を下げられるような仕事じゃないんだよなぁ。

「いや、その、水商売なら紹介できるぞ」
「――!」

 ミカンがしばし逡巡した様子をみせる。
 そりゃそうだろう。
 サイタマとかいうところでハイスクール通ってたやつだ。
 いきなり男の相手をする仕事なんざ困るよな。
 あ、でも女の相手をするところもあるな。

「まぁ、いろいろ種類はある。ひたすらダンスを踊り続けるようなところ、おっさんの酒の相手をするところ、セックス産業だってある。いずれにせよ愛嬌と知恵と精神力の世界だな」
「嬌態と悲哀。ミカン、あなたはバージン?」
「……」

 ミカンが完全に押し黙っちまった。
 回転スシ屋でする話題じゃねぇ。
それにティーンエイジャーに推薦する仕事でもない。
ああいう仕事は経験がものをいう仕事だ。世の中の仕組みってやつを理解してるやつはちゃんと稼いで、店くらいすぐかまえるようになる。だけど、ティーンエイジャーで世の中がわからん奴がやると、搾取される一方の仕事だ。
 あの世界は、相当に知的じゃないとな。しかもその知性は限りなく実践的でなくちゃな。
学校でオベンキョすることが役に立つわけじゃない。

「魔女っ子、おまえに伝手はないのかよ?」

 あるわけないが、聞いてみる。

「ある」
「え?」
「え?」

思わず言っちまった。
 だって、こいつ、社会的とは言いにくいところあるだろ?

「宗教関係はナシだぞ?」
「ちがう。博物館で地球暦の調査員を募集してる。地球暦の遺物や遺跡は意味の分からないものが多い。無駄が多くて、理解不能。手つかずのまま放置されているそれらにケリを付ける調査員が必要なの」
「――研究活動みたいですね」

アタシもそう思う。

「研究というより、残務処理かも。給料は知的労働者としては最低。家賃と、食費と、光熱費を引いて残るのは、贅沢という概念から20光年くらい遠い」

 なるほどね。
 つまり、暮らしていける程度ってことか。

「やります! やらせてください!」

 ミカンが興奮して立ちあがる。
 アタシはあわてて奴を席に座らせる。
 ここはスシ屋なんだ。しかも行きつけ。
 二度とこれなくなるような騒ぎは避けたい。

「ほんとうに? 上司は天才で変態だし、調査業務の下請けARKSも変わってるけど」
「――変態ってどの程度ですか?」
「会えばわかる程度に。変態は体験的なものだから、言葉にするのは難しい」
「――ちょっと自信なくなりそうです。多少のセクハラはなんとか頑張れます」
「セクハラとかパワハラはない。そういう意味ではクリーン。だけど、変態」
「わけがわかりません」

 ミカンが戸惑う理由はわかる。
 変態だが、いわゆるHENTAIではないといわれると、混乱するだろう。

「とにかく場をセットする。しばらく待って」
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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