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ファンタシースター計画14

 ぞろぞろと建物内に残っていた連中が、立派な正面玄関から出て行く。
 巣を追い出されたアリみたいに死んだ顔してるやつも多い。
 おそらく、歴史上久しぶりの大事件だったんだろう。法院にとっては。

 アタシは気を失ってるミカンを武装憲兵の医務班にあずけて、お偉方の集まる本部に向かう。
 訊きたいことは山ほどあるし、言いたい文句は星ほどある。

「実に嘆かわしい。と、いいますか、正直失望しましたよ」

 アジャンのやろうが、笑顔をヒクつかせながら苦言をたれてる。
 それは、アタシの台詞だっての。
 でも、それに対して、キァハ准将は机の上に足を投げ出してだらけている。
 どんだけ態度悪いんだよ。
 その傍らに控えるニック大尉のほうも、返り血を乾くままにしてる。 
 こっちは、態度というより平常の感覚が麻痺してるんだろうな。

「キァハ准将閣下に事件解決をお頼み申し上げたのに、このザマとは」

 あきらかにアジャンの兄ちゃんは不満らしい。
 言葉の端々に、怒りをなんとか噛み潰してるのがでまくり。

「――だ・か・ら、命令を優先コードで上書きされたんだって。あたしだってねぇ、ここは一つ監察局さまに恩を売っておいて、持ちつ持たれつ、WINWIN体制を作りたかったわけ」

 キァハ准将は表情を変えず、声色だけで文句をぶちあげてる。

「内密にお願い申し上げたではありませんか。何ゆえ優先コードの保持者が秘匿された現場に現れたのですか? あなたがたの情報保守管理がいいかげんだったのでは?」

 法院のイケメン野郎はかなり頭にきてる。
 責任追及したくなるほど、余裕がない状況なんだろう。

「限界まで秘匿したわよ。部隊動かせないから、仕方なくニックを投入したのよ? しかも非武装で。部下の命を危険に晒したのに、あたしらに責任とばそうって腹積もり?」
「こちらは犠牲者を出した。上の階での射殺体は、私の大切な検索員たちだ」
「仇はとってあげたじゃない」
「生かして捕らえてくれれば、情報を聞きだせました」
「無理ね。ニックを武装させられれば出来たかもしれないけど、素手じゃ原始的不能よ」

 あー。あれは潜入した敵とかじゃなくて、アジャンの部下達だったのか。
 ってことは、ニック大尉がエグい殺し方でやっちまった連中が、先に階を制圧してたってこと?

「検索員たちの死は日常ですが、しかし、手際が悪すぎた」
「検索員? 秘密捜査官をそうやって誤魔化して呼ぶから、法院ってキライなのよね」
「法院には、秘密捜査官などおりません。訂正していただきたい」
「はいはい。検索員ね。探し物を見つけるためには暗殺だってするんでしょ?」
「いいえ。対象が不幸にも事故死したり病死するだけです。とても痛ましいことです」
「おー、こわいこわい。自分たちの警備体制の甘さを、あたしらになすりつけようっての?」

 キァハ准将が冗談めいた口調で言ってるが、ニック大尉は臨戦態勢を解いていない。
 アジャンの後ろには、武装憲兵が何人かいる上、この不毛な会談の場から人を遠ざけるためによくわからん私服の連中が周囲を警戒してる。
 まずい。
 なんだかんだで一触即発なんじゃねえのか?

「なぁ、こっちはミカンのやつを保護できたからいいんだけどさ……。お前らさ、いったいナニを揉めてるんだ? 確かに犠牲者がでたのは痛ましいことだし、犯人の一部を逃がしたとかなんとかってのも痛いけど、まだ自治政府警察レベルの事件だろ?」

 アタシは当たり前の感想をいってるだけ。
 内情はどうであれ、検索員の死は法院が誤魔化すだろう。
 そうすると、今回の事件は警備用マシンが暴走しただけの簡単な事件だ。
 とすると、本件は管轄が自治警察あたりの適当なところに回されて、円満解決だ。

「そうですよ。ヒマワリさん。あなたがた一般市民からすればそうでしょう」
「なんだよ、その言い方は」
「――我々の目的は別でした」

 どういうことだ?
 すこしアタシはことの流れを整理してみる。
 たしかにアタシはアジャンから法院に行けといわれた。
 理由はミカンを保護してもらったから。
 引渡しを受けるための、簡単なもののはずだった。
 しかし、結局なぜか武装憲兵と突入して、死体を見て、正規軍と法院の監察局が手を取り合うという意味不明な状況に飛び込む形になった。
 しかも、アタシは幻覚をみた。
 
 つまり、ここから導ける答えは一つ。
 また、アタシは陰謀屋どもの策謀につき合わされてる。

「また、アタシを利用したってことかい」
「いいえ。むしろ今回はそちらの、パステルさんですね」

 否定するでもなく、アジャンがぬけぬけと応える。
 たしかに、システム関係はアタシよりも魔女っ子の仕事だ。

「ミカンじゃねぇのか?」
「本件はどちらかといえば、政府機関同士の揉め事です。主導権争いといってもいいでしょう」

 おいおい。
 仲間内で殺しあってるってのか?

「おなじ政府組織同士で凌ぎ削って意味あんのかよ?」

 あえて、どこのナニがどう争ってるかは訊かない。
 首つっこみすぎるのもアレだからな。

「統合政府だからって、一枚岩じゃないのよ。いろんな思惑を持った連中が、いろんなところで妥協だの脅しだの実力行使して、ケイオティックなコスモスを作ってるだけにしか過ぎない。万人の万人に対する闘争が権力というリヴァイアサンを生み出すってのはよく言ったもんね」

 でたよ。めんどくさい話が。

「社会契約なんてのは、神殺しの物語にしかすぎませんよ。あんなもの、学問でもなんでもない。むしろ、権力がシステマティックになっていること事態に着目すべきです。システムとして整備されればされるほど、権力は人から隔絶されて、独自の存在になる。人類の歴史が証明していることは、権力がいかに人の手に余る代物か、ということです」

 アジャンの兄ちゃんがキァハ准将に反撃してんのか?

「つまらない人たち。社会科学なんてオタクの趣味」

 さんざん黙ってきいていた魔女っ子が、とんでもない一撃を放った。
 そういうこと、平然といっちまうから、こいつは周りから疎まれるんだろうな。

「――痛烈ね。たしかに再現可能性もない。わけのわからん仮説を平然と立てる。たとえば、そう、経済学なんかでいう消費論とか? 人間は効用を最大化するために行動するとか、そんなのありえないでしょ?」

 わけわからん。
 こいつらいつも意味不明だ。
 アタシからすりゃ、ごちゃごちゃ言ってないで、今後どうすりゃ良いか決めりゃいいのにと思う。

「法律学なんてクソですしね。気がつけば解釈ではなく、謎の比較法学だとか文献学みたいになっている。○○説だとか△△説とかいって、権威ある学者が言ったことを、妥当である、妥当でないとかいって争ってる。こう言っては何ですが、法学者というものが全て死んだとしても、世界は平然と回るでしょう」

 あれ? こいつ法院に勤めてるんじゃないのか?

「あんた、法院に勤めてる立場でしょ? もうちょっと司法府ってのを尊重したら?」

 そうそう。
 准将とアタシの思考がかぶったことはイラっとくるけど。

「職業としての重要性と、学問としての存在意義は別物ですよ。法は役に立つし、統治の技術であり、紛争解決の手段です。だが、学問としてはクソ以下です。偉い先生が何を言おうと、お子様同士のプリンの取り合いすら解決できない」

 確かに。ケンカして勝ったほうが食うか、より強いやつが勝手に決めるとか。
 少なくともも理屈の出番はない。

「力ある者が勝つのは、原始的な力関係じゃ普遍なのよね」

 そのとおり。
 だから、ARKSには階級がない。
 強いやつ、よく働くやつ、効率がいいやつが偉い。
 つまり、力関係が優越するやつが、勝手に主導権をにぎれるようになってる。

「すべては事実と事象によって構成される」

 魔女っ子がいきなり口を挟む。
 こういう話題なら、すぐ食いつくんだよな。
 アタシはむしろ寝てしまいたい、というか退屈。

「科学分析の手法は道具にしかすぎない。社会科学、自然科学、人文科学、いずれもツール。道具に優劣はなく、使いどころと使い方だけが問題になる。古代では文系と理系に峻別し、道具の優劣を争う愚か者がいた。本当に考えるべきことは道具の優劣ではなく、問題に対して適切な道具を用いていたかどうかだったのに」

 魔女っ子、お前、そんなこと言ってるから友だちいないんだよ。
 いまだっているんだぜ? 理系と文系にわけてるやつとか。
 そう、アタシのこと。
 ついでに、アタシは体育会系なんで、そのへんヨロシク。

「じゃ、話はまとまったみたいね」
「え?」
「良いでしょう、今回はキァハ准将に一任ですか」
「は?」
「異論はない」

 まてよ。
 何かいま話し合ってたのか?

「おい! いったいなにがどうまとまったって? アタシにはさっぱりだぞ。体育会系に分かるように説明しろよ。頭でっかちどもが!」
「――失礼ですが、ヒマワリさん。お話を聞いておられましたか?」
「体育会系ってあんた……こっちはゴリゴリ正規軍よ? 体育会系の極限なんだけど」

 なぜだろうか。
 みんながアタシを可哀想な子みたいに見てる。
 アタシがおかしいのか?
 いや、それはない。
 だって、こいつら事件について何一つ話し合ってないだろ?

「耳の穴はあるっ! だから聴いてたんだって」
「なにがわからないの?」

 魔女っ子がアタシを馬鹿にしてるのか? それとも、素直な親切心からか?
 助け舟になってねぇぞ、それ。
 全部だ。誰がナニをどうするか、ぜんぜんわかんねぇ。
 こういう、面倒な会話は大きらいなんだよ!
 だけど。
 でも。
 あまりにも、連中がアタシに向ける視線に哀れみが含まれていてイライラする。
 なんだか、分かったようなツラしておいたほうがいい気がしてきた。
 だから、アタシはアタシのネタをふる。

「……アタシがわかんないのは、なんでアタシが幻覚をみたかってこと」

 どうだろうか。
 さらに、アタシに向けられる視線が痛々しくなる。
 アタシ、もしかして空気読めてない?
 バカな!
 魔女っ子に劣るわけないだろ、そこだけは。

「ヒマワリさん、大変申し上げにくいんですが……」
「――言えよ、アジャン」
「幻覚とは、なんのことで?」
「ガルムのことだ」

 アタシがこういうと、また連中は気の毒そうに顔を見合わせる。
 マジ、ファックだな。
 こんな嫌味な連中と付き合いがあるってだけでいやになってきた。

「あんた、ミカンみたいに原始人なわけ?」
 キァハ准将が、ミカンに大変失礼なことを言う。
 謝れ! 地球暦のみなさんに謝れ!
「あん?」
「我々に投与されてるナノマシンは、脳関門障壁を透過する」
「魔女っ子、わかるように話してくれねぇか? アタシは学がないんだ」
「幻覚はありえない。ARKSの神経活動はORACLEによって恒常的に記録されてる」

 だから、分かるように言えと。
 仕方なく、アタシは分かってない感じを伝えるために、くちびるを尖らせる。

「私とあなたの観測記録は正常。脳の活動電位、神経についても異常は見当たらない」

 ピッピと端末をいじりながら、魔女っ子がさらりと宣言する。
 つまり、やつが言いたいのはこうだ。
 お前、アホか? と。

「幻覚なんかみてないわよ。あんたがみたのは全部事実。まぁ、脳が無意識的に遮断した情報は別だけどね。ニックの記録もある。これ、なかなか恥ずかしいわね」

――お前が好きだった

 大尉がガルムの声を出した。

――お前が好きだった

 ニヤニヤしながら、キァハが繰り返させる。
 おい、大尉、お前さんボイスレコーダ機能がついてたのか?
 いや、そうじゃない。
 あれは現実? 
 わけがわからん。
 死んだやつが、生きてる?
 生きてるはずないやつが、死んでいるべきであって……。
 あれ? だんだん混乱してきたぞ。

「ガルムは、死んだっ!」

 思わず声を荒げる。
 だけど、キモい二人は、飄々と聞き流すだけだ。

「……いいですねぇ、ピュアな心が残ってて」
「羨ましいわぁ。アタシも数千年前はこんな感じだった気がするわ」

 キレそうだ。
 こいつら、人が困ってんのに、なんら手を差し伸べるつもりはないらしい。

「魔女っ子、わけがわからん。助けろ」
「実は、わたしも分かってない」
「は?」
「わたしの信じる教義でも、死は別れに近い。なのに、二人は死を冒涜している」

 ここだけは魔女っ子とアタシは意見が一致してるようだ。
 だったら、やることはタダ一つだ。

「帰るぞ、魔女っ子。ミカンを連れてな。こんな連中といたら、心が腐っちまう」
「心があるかどうかは争いがあるけど、ミカンをつれてかえるのは賛成」

 それでいいさ。
 それでこそ魔女っ子だ。
 四の五の言わず、ARKSらしく、勝手気ままにやらせてもらう。

「おやおや、嫌われましたね」
「あんたさ、最初から好かれてないって」
「それは貴方もですよね? 准将」
「あたしは人に好かれるために造られたわけじゃない。人を守るために造られたの」
「いっぱい人殺してるじゃないですか」
「殺したやつよりも、救ったやつのほうが多いの。計算上は」
「命って、数なんですかね?」
「知らないやつの命なんて数字上だけの存在よ。ニュースで人の死を知って、自分が生きてることを確認するのが人生。デジタルなのよ、命って」
「その意見には同意いたしかねます」
「あたしも、監察局のやり口には同意しかねるわね。人を『対象』とか『目標』とか呼んで、罪悪感を希薄化させてるくせに」
「――この辺でやめときましょう。あなたを事故死させたくない」
「そうね。お互いの持つ力を、市民のために使うってことで」

 まったく気にいらねぇ。
 こいつらは一日中、めんどくせぇ謀略ばっかりだ。
 言葉一つはコミュニケーションじゃなくて、腹の探りあい。
 対人関係は利害関係だけ。
 そんなんで人生楽しいのかよって文句を言いたくなる。
 だから。
 アタシは気に食わない陰謀屋たちを放置して、ミカンの元に向かう。
 ミカンはこんな連中と接触させ続けたらだめだ。
 ちゃんと、アタシと魔女っ子で、このORACLEに溶け込ませてやるんだ。
 TLPT特異体なんかじゃねぇ。
 人として、安心して生きさせてやらなくちゃいけない。
 それが、小難しい理屈以前の、人の権利ってやつだからな。

 
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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