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ファンタシースター計画13

 なるほど。
 どうしてこんなへっぽこな事件に武装憲兵だの、正規軍のキァハ旅団が関わってるか分かった。
 アタシが飛んだ先には、微笑ましいくらいに死体が転がってた。
 死体はヒューマンやニューマンが多かった。
 
――どれも精確に額に一発、左胸に二発撃ち込まれている。

 アタシは死体をさっと検分する。
 どの死体も、所属は分からない。
 どこにでもある私服を着てるのもいれば、ARKSの装備を着ているやつもいる。
 ARKS品を横流ししてるやつも多いからな。
 防具に限っては、当局の連中もけっこうお目こぼししてるみたいだし。

「魔女っ子、大尉の反応は?」
「わからない。さっきまではここだったけど」

 まったく。
 デルタだか三角だかしらねぇけど、連絡員くらい残しとけっての。

「じゃ、魔女っ子、さっさと――」

 アタシが魔女っ子を連れて行こうと振り返ると、やつはバタバタしてた。
 顔が赤い。
 首しめられてやがる!
 でも、だれに?
 姿なんか見えないぞ!

「手を離しやがれ!」

 アタシはブラオレットの銃口を向ける。
 
 だけど、それよりも早く、魔女っ子が床に崩れ落ちた。
 どゆこと?

「ヒマワリさん、油断しすぎだよ。目に見えない、機器に反応しないときこそ油断しちゃいけない」

 空間が段々と半透明になる。
 しばらくすると、敵と思われる可愛いニューマンの女の子を『腕』で貫いている大尉が実体化した。

――アタシは、マジもんの殺しの手口を初めて見た。

 大尉の指先は、ふつうのキャストの指とは違って、鋭利になっていた。
 いわゆる『抜き手』ていうやつだ。
 対象をぶち抜く手という、勘弁願いたい武器。
 大尉は腕を、女の子から抜いて、引っ付いてきた大腸の破片とか臓器のようなものを、ビチャっと床に振り払う。
 あんまり見ていて気分のいいものじゃない。

「ステルス戦闘は初めてかい?」
「助かった、大尉。いったいこりゃどういうことだ?」
「どうって、簡単さ。敵が待ち伏せてる。でも大丈夫。僕がぜんぶ片付けてあげるから」

 また、大尉が透明になる。
 アタシはへたってる魔女っ子をずるずると、壁際につれてく。
 どうしてこいつは物理攻撃に弱いんだ、ちくしょー。
――待ち伏せ? 敵?
 勘弁してよね。
 アタシは人同士が殺しあう場なんて初めてだっての。
 その間、天井とか、壁に血とか、なんか肉とかそれに類するものがビシャっと飛びまくってる。
 どうやら、敵もメタマテリアル技術を用いてるらしい。
 そりゃそうだよな。
 対人戦闘なんだから、いちいち姿見せ合って殺しあうわけない。
 そういう意味で、ARKSって仕事は見えてる敵を倒すだけでいいから、まだマシだ。
 しかも、相手は人間じゃない。

「クリア。いやー、時間切れしちゃった。数が多くて」

 再度、こっちの世界にもどってきたニック大尉は、返り血とそれに伴う臭さを思う存分アタシらにぶつけてくる。
 メタマテリアル機能を失陥したのか、あちこちに死体が実体化する。
 相手を逮捕するとか、そういう類の戦闘の結果じゃないのは目に見えて明らかだ。
 殺意全開の、急所ばかりをエグる攻撃が、大尉の手によって行われていた。

「素人ってわけじゃなかったみたいだよ。僕を足止めできたんだ。それはそれで有能さ」

 返り血を拭くでもなく、肩に乗っかった肉だか臓器だかを払うでもない。
 ただ、戦闘の感想を大尉が語る。

「お、おい、ミカンは? 他のデルタ分遣隊員が追ってるのか?」

 アタシはなんとか気を持ち直し、大尉に尋ねる。
 なお、魔女っ子のやつはモノメイトをちゅーちゅー吸ってる。

「デルタ分遣隊は僕だけだよ? 僕一人で分遣隊一個分の戦闘能力があるからね。キァハは予算に厳しい人だから、節約ってことで。だけど、変なんだよね。僕の給料はみんなと一緒なんだよ? 予算申請書には30人分の人件費計上するくせにさ。残りの29人分の給料はどこにいってるんだろう?」
「てめぇの給料のこたぁいい! ミカンは? 状況を説明しろ! 空気くらい読め!」
「え? さっきキミたちが救出したってキァハから通信があったけど?」
「アタシらは今来たばっかりだっての!」
「――キァハ、聞こえる?」

 大尉が通信を試みる。
 アタシも自分の端末を調べる。

「おい! 魔女っ子、通信が途絶してるぞ! テメェ、ちゃんと仕事したんだろうな?」
 
 アタシはモノメイトを吸ってた魔女っ子を問い詰める。

「わたしの能力の範囲では。システムの解析はしてないから、何か仕込まれてたかも」
「そういうとこまで気を配れよ!」
「無理。わたしはキャストみたいに、ダイレクトに自己と電子媒体を接続できない」
「先に言えよ!」
「あなたは聞かなかったし、説明しても理解できないはず」

 わたしはヒマワリ・ヒナタはバカであると思ってますって告白されてもなぁ。
 落ち込むしかないだろ。

「こっちも駄目だね。軍用の帯域に干渉されてる。キァハならカウンタージャマーできると思うんだけど、メタ認知が必要だね」
「は? 魔女っ子、翻訳しろ」
「指揮官は、ジャミングに気付いていないということ。知らないということを知ることがメタ認知」
「まずいじゃねぇか! どうすんだよ! ミカンは?」
「うーん、どうし――」

 いきなり、ニック大尉がその場に崩れ落ちた。
 電源切ったみたいに、ぐにゃりと、受身すらなく。

「おい! 大尉!」

 あわててぶっ倒れた大尉に駆け寄って、介抱を試みる。
 魔女っ子が端末を大尉の頭部に有線接続する。

「――最優先停止命令。主席執政官コードで割り込まれてる」
「はぁ?」
「キァハ准将を飛び越えて命令が上書きされた」

 わけわからん。
 あの准将のやつも、今頃地上でぶっ倒れてるってことか?

――太陽が沈むと、なぜ人々は発狂するのか?

 声がした。
 アタシは魔女っ子を背中にかばいながら、あたりに気を配る。
 殺意はどこだ?
 敵意は?
 とにかく、アタシに向けられるものを感じ取らなくちゃ。

――もう一度問う。太陽が沈むと、なぜ人々は発狂するのか?

「おい! くだらねぇこと言ってねぇで、姿を現せ!」

――狂わねばならぬほどに、太陽が沈んだ後の世界は悲惨なのか?

「なにを! 魔女っ子、どこに敵がいるかわかるか?」
「わからない。声は頭の中に直接ひびいてる。テレパスかなにかかも」

――ならば、太陽が沈んだとしても、人々が狂気にとらわれぬ世を作ろう

 そして、男が姿をあらわした。
 知っている。
 アタシは、それを知っていた。
 髪型は違うけれど、あごの形、瞳の強さ、鍛えてある大柄な体、そして大槍。
 
「……ガルム?」
――ヒマワリ。お前に会えて嬉しい

 幻覚だ!
 ぜったいそうに決まってる!
 死んだやつは絶対に蘇らないって世の中決まってんだよ……。

「アタシの友だちの幻覚みせるなんて、サイテーだね!」

 ブラオレットの銃口をガルムの幻に向ける。

――幻覚か。お前にはそう見えるかもな
「うるせぇ! 知ったような口をきくな!」
――現実は、あまりにも曖昧になった。信じるか、信じないか。事実に価値はないぞ
「ガルムは、そんな小難しいこといわねぇんだよ!」

 アタシは幻影に向かって、弾丸を撃ち込む。
 タネガシマ社謹製、フォトンリアクターによって圧縮されたフォトンが亜光速でガルムに向かう。
 だけど。
 アタシの弾は届かない。
 やつの大槍が、それを切伏せていたから。
 信じられねぇ。
 おかしいだろ?

「幻のくせに!」
――人は幻だぞ、ヒマワリ。認識されるまで存在しない。観測者なくして人は存在しない
「お前は死んだ! アタシのせいでな」
――お前は、俺の死を観測したか?
「ダガンのクソ虫どもに、バラされたのを見た。忘れねぇよ」
――それが、俺の死か?
「は?」
――MEMENTO MORI だな。お前は、死を知らなすぎる

 アタシの頭のなかの、うんたら袋の緒が断裂した。
 思いっきり息を肺一杯に吸い込む。
 そして、いっきに間合いをつめて、最高の速さで刀身をふるう。
 前のガルムなら、絶対に止められないはずだ。

 だけど、ガルムのやつはそれをなんなく受け流した。
 それどころか、体勢を崩したアタシを、そのまま抱き寄せやがった。
 ファック!
 誰にも抱かれる予定なんざなかったのに、幻覚に思いっきり強く抱きしめられる。
 正直、最悪だ。

――俺はお前を抱きしめられる。それでも、幻覚だというのか、ヒマワリ

 ああ、そうだよ。
 あんたは、死んだんだ。
 そいつが、こんな風にアタシを抱いちゃいけない。
 しかも、あんたの死の原因はアタシにある。
 だから、アタシをこんな風に抱いちゃダメなんだ。

――お前が好きだった。死んでから気付いた。俺は、お前に惚れてたんだな
「は?」

 幻覚のくせに!
 アタシの心をもてあそぶんじゃねぇ!

「魔女っ子! アタシをぶん殴れ! さっさと夢から目を覚まさせろ!」
「夢じゃない。その人は存在してる」

 冗談じゃねぇ。
 魔女っ子まで、幻覚を見てやがるんだ!

――必ず、俺がお前を解放してやる。

「うるせぇ!」

 アタシはアタシだ!
 記憶なんざ嘘っぱちで、戸籍だって作りもんだ。
 だけど、いまこの瞬間の感情も、感覚も、全部、いまのアタシのものだ!
 それは、誰にも勝手にさせない。
 たとえ、ガルムの幻覚を使ったって、アタシは今のアタシが感じたことしか信じない。
 そして、アタシの感覚が全部ウソっぱちだって叫んでるんだよ! 脳髄でな!

「……消えろ、ガルム」

――愛してるって言えてよかった。もう、心残りはない

 ガルムはアタシを妙にやさしく離して、そういった。
 幻覚のくせに……生意気なんだよ。

 そして、やつは消えた。
 やっぱり、あれは幻だったに違いない。
 だって、やつの姿が消えるとともに、すやすや寝てるミカンがその場に残されたから。
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Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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