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ファンタシースター計画11

 ミカンをなんとかせんと。

 アタシらに丸投げした将軍も、監視してますよアピールがうざい最高法院も、特になにかしてくれるわけじゃない。

「いやです! 私なんてどうなったっていいんです」

 ミカン娘は布団にうずくまって、ささやかというか、めんどくさい抵抗をしている。
 抵抗する元気があるだけマシっていうかなんというか。


「どうなってもいい人なんかいない。人は理由なく存在はしない」
「気休めを言わないでください!」
「不合理な人。気休めではなく、事実なのに」

 魔女っ子とミカンがぎゃーぎゃーやりあってる。
 えらく魔女っ子のやつがミカンに肩入れしてやがる。
 たぶん、何か思うところがあるんだろう。
 少なくとも、アタシに対する態度とは違う。
 もっと、こう……。
 切実な感じだな。

「適応しなければならない。人は、思っている以上に、適応できるの」
「うるさいですよ、パステルさん……優しくされたって、どうしていいか私わかんないんです!」
「適応するかしないか、それだけ。どうするか思考する必要はない。それは思考経済に資さない」

 魔女っ子がひたすら真顔で言葉を積んでいく。
 それに対してミカンはがむしゃらに感情をぶちまけてる。
 ほんと、どっちもどっちだよ。
 言葉のドッジボール状態。

「人はいつも記憶に支配される。だけど、記憶は真実とは違う」
「そんなんどうだっていいです! わたしは疲れたんです」
「何もしていないのに? 何かを始める前にすべてが終わるのはおかしい」
「どうして、どうして、あなたは正論ばっかりいうんですか!」
「正論とは違う。心のままに、言葉を伝えているだけ」
「思いやりとか、ないんですか?」
「思いやりは人類を救わなかった。誤解と話し合いと妥協が、人を前進させた」
「……」

 ミカンは完全に押し黙った。
 そりゃそうだろうな。
 薄暗い魔女っ子にひたすら指弾され続けるなんて耐えられない。
 しかも、ミカンはハイスクールに通ってたらしいじゃないか。
 そんなやつに、インスティチュート修了してる魔女っ子を倒せるはずがない。

「おい、魔女っ子。そのへんでいいだろ?」

 とりあえず仲裁してやらないとな。

「よくない」
「あん?」
「世界は躊躇しない。構造は猶予を与えない。いまを生きるには覚悟がいる」

 魔女っ子が、えらい確信めいたことをいってやがる。

「だから、ミカンには早く世界に適応してもらわなければならない」
「いやいや、そんな焦んなくても」
「適応できなければ、世界にすり潰される」
「は?」

 おいおい。どうして今日の魔女っ子はこんなに饒舌なんだ?

「すり潰されるって……」
「あなたは強いから気づいていないだけ。弱いという事は、奪われるという事」
「そんなこといったってなぁ。そいつハイスクール行ってるやつだぜ?」
「関係ない。どこにいようと、搾取される人間は搾取され、力を持つ人間はそれを使う」

 言い分は、わかる。
 アタシらにもっと力があれば、もしかしたら世の中を少しくらいマシにできるかもしれない。
 立場が弱いから、正規軍だのARKSだの最高法院だのF機関やらに翻弄される。

「力は常に振るわれる。権力がシステム化された現代において、弱いことは権力システムの最下層に組み込まれることを意味する。そうなると、生きることそのものを、生きる目的とせざるを得なくなる」

 そうなんかね?
 アタシはアホだからそういう、【世の中論】みたいなのは分からん。
 だけど、弱いことは不利だってのだけは、わかる。
 だって、アタシは戦いを仕事にしてるからな。
 人生が戦いなら、弱いことは死んだり、負けたりと損な役回りを引き受けることになる。

「あのさ、魔女っ子」
「なに?」
「なんで、お前そんなガチなんだよ? ミカンはまだガキだぞ?」

 ほんのしばらくだけ、魔女っ子が沈黙する。
 そして、アタシをじっとみつめて、こういった。

「わたしは13で大学に入って、その年にレイプされた」

 ……なにもいえねぇ。
 不条理なことがいっぱいある世界で、そのうちの一つを友達が食らってたなんて知って、どうしろと。
 ただ、それをアタシに伝えた真意を推察するしかない。
 信頼されてるから、傷ついた経験をそのまま話してくれてるんだと思っておく。

「……ゆるせねぇな」

 そんな当たり障りのない言葉しか送れない。

「気が付いたら、お酒のまされて、裸にされてた。世の中なんて、そんなもの」

 魔女っ子の、あまりにも真剣で必死さがあふれるまなざしに、アタシは口をパクパクさせるしかない。

「今のミカンは弱者。過去からやってきて、時代に適合できていない。弱い者を狙う連中は、彼女の弱さを皮膚で感じ取る。だから必ず、彼女は搾取される」

 ベッドの中で丸まってるミカンをじっと見据えながら、魔女っ子が言った。
 アタシはうんざりだ。
 どれだけ時代が進んで、科学が発展して、宇宙を旅できるようになったって、社会は誕生する。
 その社会はいつもユートピアには程遠くて、ディストピアってほどには絶望的じゃない。
 良くも悪くも、力と運があれば、不幸になりにくいようにはできている。
 
 そんな世の中で、過去から飛んできたミカンがどうやって生きればいいのか。
 受けた教育だって、この時代のものとは違うだろう。
 教育が違えば、考え方も違う。
 考え方が違えば、生き方だって変わる。
 だけど、与えられたもので解決できることなんて、この世の中少なすぎるから、力が要る。
 能力。
 努力。
 体力。
 知力。
 引力。
 斥力。
 なんだっていい。
 とにかく力がないと、生きていくことはむつかしい。
 誰かに頼るのも悪くない。
 だけど、頼った相手だって、いつまでも助けてくれるわけじゃない。
 かならずこういうはずだ。

――前に進め。

 簡単じゃないことを要求してくる。
 アタシは前に進んでるのか?
 レイプされたっていう魔女っ子のやつは、前に進んでるのか?
 
――前って何だよ! ファック!

 だから、アタシはミカンに前に進めなんていうアドバイスはできない。
 魔女っ子にそんなこともいえない。
 



 結局、アタシと魔女っ子が仕事に出てる間に、ミカンは消えた。

「おい、魔女っ子、探しにいくぞ!」

 アタシは慌ててバイクのキーを捜しながら魔女っ子を呼ぶ。
 だが、魔女っ子は淡々とコーヒーを淹れ始める。
 豆はマンデリンらしい。

「……てめぇ、なにやってんだ?」
「コーヒーをいれてる」
「そうだな。落着くにはコーヒーも悪くない。だけど、早く探さないと手遅れになるぞ」
「手遅れって?」

 魔女っ子がまじまじと訊いてくる。
 おい、なにいってんだ? お前、あれほどミカンを心配してたジャン。

「手遅れは手遅れだよ! 行方不明とか、誘拐とか、下手したら強殺とか……」

 ろくに新しい世界を知らないミカンが、悪い男に連れて行かれてどうこうされるなんざ、許せない。
 少なくとも、アタシがやつに与えた衣服代とメシ代分くらいは生きていてもらわないと困る。

「それがどうしたの?」
「どうしたもこうしたもねぇだろ!」
「あなた、もしかして人の人生を変えられると思ってる?」

 コポポっと湯が注がれて、炒ったコーヒー豆がやわらかい香りを立てる。

「……あん?」
「あなたは、人の人生を変えられると信じてる?」
「そりゃそうだろ。人ってのは互いに影響を受けてだなぁ……」
「あなたのいう人って何?」
「え?」
「そこにわたしは含まれてる? ミカンは?」

 イラッときた。
 この馬鹿は、勘違いしてやがるんだ。
 ずっと一人でいたから、くだらん勘違いに染まってるに決まってる。
 
 だから、アタシはコーヒー豆がふやける様をみてる魔女っ子に歩み寄る。
 そして、思いっきり胸倉をつかんでやる。
 案の定、魔女っ子はキョトンとかわいいおめめを開いてくれる。

「パステル! てめぇはアタシの大切な友だちだ! だから強引に、ズケズケとテメェを心配するんだよ!」
「コーヒーが……」
「知るか! 良いか、覚えとけよ? アタシは傷つくこと、傷つけることを四の五の考えて、距離を考えるやつなんざ友だちじゃねぇって考えてる」
「――」
「だから、めんどくせぇこと言ってないで、ミカンを探しにいくぞオラァ! あいつもアタシからみりゃ友だちなんだよ!」
「どうして? 知り合って日も経ってない」
「時間なんてどうでもいい! アタシの名前を覚えてくれりゃ、そいつはアタシの友だちだ!」
「友だちの範囲が広すぎる。定義に修正が必要」
「うるせー! いくぞ!」
「でも、コーヒーが」

 ぱたぱたと、お遊戯みたいな抵抗をする魔女っ子を脇に抱えて、アタシは部屋を出る。
 すれ違ったどっかのおばさんがおどろいてる。
 だが、そんなのはどうでもいい。

「ヒマワリ、わたし恥ずかしい」
「旅の恥はかき捨てっていうだろ」
「わけがわからない。あなたのインテリジェンスが心配」
「インテリジェンスはインテリに任しときゃいいんだよ」
「むー」

 ふにゃふにゃと抵抗を続ける魔女っ子をぐっと強く抱えながら、アタシはミカンを心配する。

 あのバカ。辛いからって逃げるんじゃねぇ!
 戦って砕けろよ!


 ミカン探しは難航した。
 挙動不審なやつを、ききこんでいけば何とかなると思ってたけど、やっぱ駄目。
 この世界、挙動不審なやつは多すぎるから。
 たとえば、ARKSだって、その待機ロビーで奇怪なダンスを踊ってる連中や、受付カウンターによじ登るマナーのなってない奴らがいる。
 そういう特段オカシイ奴らをARKSが全部吸収してるわけないから、市井にはもっとオカシイのが一杯いるわけだ。こういうの、困るよ。

「見つからん!」

 アタシはバイクをコンビニの駐車場にとめる。

「探し方がおかしい。情報は広く、それでいて密度が必要」

 魔女っ子がお得意の個人端末を駆使して、広く、密度が濃い情報を探してる。
 だが、それだってろくな効果がない。
 ある意味、魔女っ子も理屈倒れな状況だ。

 しばらく、コンビニで買ったアイスを食いながら、作戦を考える。
 だが、アイスが融けていくように、アタシらのアイデアも全部融けていく。
 
――もしもーし。ヒマワリ・ヒナタさまですか?

 いきなり直接通信が入った。
 声の主は、奴だ。
 あの、最高法院のあじゃじゃしたーとか言うやつ。

「アタシだよ。なんか用?」
「どうも。アジャン・プロヴォカトゥールです。ご無沙汰しております」

 あーそうそう。
 この、女を落とすための声色を駆使するイケメンの名前はアジャンだ。

「つきましてはヒマワリさん、ミカンお嬢さんをこちらの検索班が保護しましたけど」
「マジか!」
「ええ。お一人で公園にいるところを、別件で捜査活動中の検索班員が発見。武装憲兵で保護しました」

 おいおい。
 なんでそんな武装憲兵なんていう法院お抱えの実力部隊を投入してんだよ。

「まったく。保護を引き受けられたのに、囮に使用ですか?」
「は?」
「キァハ准将からの指示で、単独行動をさせたのでは?」
「ちげえよ! 勝手にそいつが飛び出していったんだ! アタシら必死で……」

 しばらく、アジャンの野郎が沈黙する。

「裏が取れました。本当にあなたという人は、スマートさが足りない。聞き込みが乱暴すぎて、通報が来てましたよ。あなた、不審者扱いです」
「うるせー。必死だったんだよ」
「それでいて、服の露出が多いですからねぇ、あなたは。あのけしからん娘の住所を教えろという、被害者ヅラした犯罪者予備群みたいなのまで出てきてます」

 うへぇ。
 ちょっとカンベンだな。

「――まさか、教えたとか?」
「どうでしょうか。あなたが我々にとって都合が悪い存在になったとき、お家の戸締りは役に立たないことをお約束いたしますよ」
「――クソ野郎が」
「おやおや。せっかくお友だちを保護したのに、その言い草は困りますなぁ。報告書に、凶暴性人格と付け加えなければなりませんね」
「で、ミカンはどこにいるんだ? アタシはどこに引き取りに行けばいい?」
「それなりにVIPなんで、自治政府官庁街の『フロウウェン通り』にある法院庁舎で保護していますよ。武装憲兵がいると思うんで、今から送るゲストパスをですね――ん、どうした?」

 いきなり通信がザーッという隔絶音に変わる。
 切れたわけじゃない。
 暗号回線に切り替えが行われて、アタシには聞こえなくなっただけだ。

「おい! アジャン、何とかいえよ!」

 沈黙。

「――申し訳ありませんが、ヒマワリさん。現地には武装して向かってください。委細は後ほど」
 
 より柔らかい口調で、アジャンが言い残す。
 それで、通信は切れた。

「訊いてたか? 魔女っ子」

 勝手に二本目のアイスバーをくわえてる魔女っ子に訊く。

「もちろん。良くない状況というのは理解した」

 理解したんなら、アイス食うのやめろよ。
 さっさと、奴を迎えにいくぞ。
 

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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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