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ファンタシースター計画10

 ミカンをもう一度ベッドに寝かせる。
 そして魔女っ子が鎮静剤の点滴を設置する。
 ミカンの顔色は、鎮静剤と魔女っ子のレスタのおかげか知らないが、比較的健康そうな色合いにもどっていった。
 すうすう寝息を立てる彼女の看病は、ハーブの手入れに満足した魔女っ子に任せる。
 アタシは准将に問い合わせて、今後を決めなくちゃいけない。

2 
 自室にもどり、准将のコードを入力する。

「――はーい。あたし今、部下と飲み会なんだけど?」

 久々に通常の映像通信をしてみたら、なんだか楽しげに飲んでやがる。
 どこのサラリーマンだよ。
 理由もなくパーツを外して露出を高めたキァハ准将を中心に、こないだのアルファ分遣隊の連中が好き勝手やってる。

「上官がいたら酒がまずいだろ? とりあえず席外して。あれが目覚めた」
「あー? あたしら4000年以上一緒に戦ってるのよ? あたしがいて酒がまずいやついるか?」

 すっかり酔っているらしい准将が、部下に訊いてやがる。アホかと。

「はーい。キァハは泣き上戸だからじゃまでーす!」

 どうやって飲んでるのか分からないニック大尉が通信に割り込んできた。

「あんたねぇ、死ねば?」

 ニック大尉が思いっきり殴り飛ばされて画面から消えた。
 おい、あんなの食らったらアタシ死ぬぞ。

「……大尉は無事なのか?」
「あん? あー、なんかバイザーぶち割れて装甲凹んでるわ。気にしないで」

 それ、まずいんじゃないのか。ニック大尉は人型フェイスじゃなくて、典型的なメカニカルフェイスだから……人間で言えば頭蓋骨骨折と水晶体破壊?

「そ、そう。で、こないだの女の子が目覚めたんだけど。サイタマがどうだとか電話がどうだとかいって話が通じないんだけど」
「そりゃそうでしょ。TLPT特異体なんだから」

 あっけらかんと准将がいってくれる。ぜんぜん分からん。

「だから、それ何?」
「えっと、あんた、一般相対性理論と特殊相対性理論の差異を説明するときに必要な数式理解できる?」
「できたらARKSやってないって」
「そう? お友だちの魔女っ子ARKSは理解できそうだけど」
「うるせー。アタシは理解できないってだけです。す・い・ま・せ・ん」

 どうしてこう、キャストってのはヒューマンの知力水準を直裁にきいてくるかね? デリカシーってのがないじゃん。
 そっちは頭にIvAIを搭載するスパコンで、しかも軍用SAIのMARSの支援まで受けてる。
 思考は光速だし、キャスト同士なら情報共有に言語なんて不要。いちいち話して説明する必要ない連中に、ヒューマンが勉強で勝てるわけねぇだろ!

「分かりやすくいうと、そいつタイムスリップしてきたの」

 ……まっさかぁ。そんな童話みたいな話、あるわけないって。
 今どきの大宇宙航行時代にタイムスリップとか言われたってねぇ。

「またまたぁ。准将が冗談言うのは似合わないぜ」
「――ヒューマンってさ、時間について問われるまで、時間について理解しているつもりになってるから面倒なのよね。分かってないけど、時間は存在する、みたいな。もうね、アホかと」

 あん? どういうこと?

「確かに賢くないのは認めるけど」
「とにかく、あんたに一から説明するには大学院で博士論文くらい書いてきてもらう必要があるから、大雑把に説明したげる。『存在するものには、全て理由がある』」

 は?
 いや、ぜんぜん説明になってないけど

「まさかデカルト的存在証明もわかんない?」
「だれだよ、それ?」
「哲学者。役に立たないものにも存在理由があるっていう、ありがたい見解を残した。おかげさまで無価値な人間は存在してはいけないっていう妄言が否定される。あんたにはこれがお似合い。じゃね」

 ……きりやがった!
 あの女、面倒なこと全部他人に任せてるくせにこの態度かよ?
 だいたいだな、アタシは扶養家族を抱えられるほど豊じゃないっての。


 どうしよう。かなり危機的だ。これはマズすぎる。
 スーツの良く似合う野郎が、招かれざる客としてやってきたからだ。

「はじめまして。アジャン・プロヴォカトゥールと申します」

 気に食わないイケメン野郎が、アタシに颯爽と名刺を差し出してくる。
 今どきペーパーの名刺を使ってるやつは政府機関の怪しい連中だけだ。
 その名刺にはこう書いてある。

――船団最高法院 監察局種族問題対策課課長補佐

 うーん、課長補佐ってなんぞ? 
 偉いのか? 大したこと無いのか?
 まぁいいさ。
 アタシはその名刺を後ろでこそこそしてる魔女っ子にさっと渡す。
 魔女っ子がこの名刺の主の裏を取るってわけ。

「で、アジャ……」
「アジャンです。ヒマワリ・ヒナタさん」

 アジャンとかいうやつは、爽やかな笑顔をアタシに放り投げてくる。

「あーはいはい。で、アジャンさんは何しにここに?」

 このイケメンニューマンは、タダもんじゃない眼光全開で、アタシのマイルームの玄関先に突っ立ってやがる。

「大したことではございません。この部屋の奥に不法滞在者がいるとのことで」

 げ!
 やっぱり?
 もう早速バレた?
 たしかにミカンっていうタイプスリップした少女一匹飼ってますけど……。

「――証拠は? 令状とか、そういうのは?」
「滅相もない。ただ、私には貴女の悩みを解決することができます」

 にこやかな笑みをアジャンの野郎が浮かべる。

「悩みなんかないぜ?」
「そうなんですか? 不法滞在者のパーソナル登録がないとイロイロ不都合かと思いましたが」

 痛いところをつかれる。
 たしかにミカンはどこにも登録されていない謎の物体Aだ。
 このままじゃ、船団のメセタカードだって作れないし、保険登録だってできない。
 つまり、生活が不可能ってこと。
 いつまでも家の中に閉じ込めておくわけにも行かないし。

「……追い返したら?」
「別件逮捕だって出来なくはないですよ?」

 なるほど。やっぱイケメンは信じるなってな。
 立派な脅しじゃねえか。

「どうして調べがついた?」
「我々は船団内の質量データを掌握しておりますので。他にもNシステムは常に稼動しております、はい」

 なるほどね。
 プライバシー権もくそもないわけだ。
 精密機器のカタマリである長距離航宙船で生活するやつには、そんなもの保障されない。

「入りな」
「話が早くて助かります」

 アジャンはいそいそと丁寧に靴を脱いで、どこかに転送した。
 わざわざ脱がなくたっていいんだけど、なにやらそういう風習らしい。


 とりあえず、魔女っ子がいれてくれたコーヒーを飲みながらテーブルで向かい合う。
 安物のソファのすわり心地はわるくなかった。

「では、早速本題に入りましょう。不法滞在者と面会させてください」

 アタシは魔女っ子に頼んでよんでもらう。
 しばらくすると、泣きつかれた顔をしたミカンがやってきた。

「ついに……私、売られちゃうんですね」

 ミカンはなにやらあきらめた様子だ。
 こいつなんか勘違いしてるぞ。

「はじめまして。私は監察局のアジャン・プロヴォカトゥールです」
「なんでもいいです。私の人生なんてもう終わりなんですから」

 悲観に支配されたミカンがぼやく。
 まぁ、確かにどっかの時代から飛ばされて、もう帰れませんとか言われたら悲観するわな。

「おやおや。これはお可哀想に」
「で、監察局ってなんなんですか?」

 ミカンがぶっきらぼうに訊く。

「まぁ、貴女の時代で言えば警察ですかね」
「警察!」

 ミカンの表情がぱっと晴れる。

「聞いて下さい、おまわりさん! この人たち私をこんなところに監禁してるんです! 助けてください! 私、さらわれたんです……」

 そういってミカンはアジャンにすがり付いて泣いた。

「おやおや。それは怖かったでしょうねぇ」

 アジャンがイケメン的微笑でミカンをよしよしと慰める。

「私がお助けしますよ」
「ホントですか! はやくこの人たち逮捕してください!」

 ミカンよ、お前はほんとうに恩知らずだなと言いたくなる。
 飯だって、代えの服だって買ってやったじゃん……。

「まぁ、落着いてください。私は貴女をお助けしますが、貴女の協力が必要なんです」
「え? 協力ですか?」
「まず、貴女がここに来た一件を話してください」

 そして洗いざらい虚実交えたミカンの話が始まった。
 アタシらが宇宙人で、サイタマとかいうところからミカンを誘拐したんだとさ。
 おまけに、ロボット兵士がいたとか言いやがった。
 おい、ロボットは差別用語だぞ!

「キャスト兵士が?」
「はい。キァハがどうのこうとって兵隊さんたちが言ってました」
「ほほぅ」

 にっこりとアジャンの野郎が深く頷く。
 そして、やつはこっちに向き直る。

「ヒマワリさん」
「あ?」

 さて、アタシはどうやってキァハ准将のことを誤魔化すかと頭を回転させる。

「第44宙間機動打撃旅団をご存知で?」
「さぁな」
「まぁまぁ。そう警戒なさらずに」
「警戒するだろ」
「ではご安心を。我々は連中とは敵対しているんです」

 さらりと言いやがった。
 政府系の組織ってことはかわりがないだろ?
 なんで敵対するんだよ。
 ――あ、でもアタシもなんかこいつ警戒してるわ。
 一応、ARKSも政府系組織だもんなぁ。

「全然安心じゃねぇな」
「ですが、それは目的は同じなのに手段の相違があるからでして、はい」
「何がいいたい?」
「我々は敵ほど信頼しているのです。むしろ味方を信用しない」
「はぁ?」
「現在、キァハ准将の旅団はどうも船団統合政府(SPQO)の意思から離れ、独自に行動をしているようなのです。我々監察局はそのような集団を監視するのが任務ですので、その意味でかの部隊は敵なのです。しかし、一方で――」

 やつはコーヒーをすする。

「我々は独自行動をとった理由をも調査します。すると、どうでしょうか。かの部隊はどうも時間並列事象の生じた地域に独自に兵員を送っているようなのです。従来は失敗していたようですが、今回は違った」

 おいおい。
 アタシなんかよりずっとやつらにくわしいじゃないか。
 こっちはキァハ旅団なんて眠ってるだけの暇人だと思ってたぞ。

「あん?」
「見事、救助に成功したということです」

 救助? まぁ、たしかにそういう目的とかあの女将軍が言ってたような。
 ただ、助けてやってよと頼まれたのはこっちだけど。

「TLPT特異体について、我々は『F機関』という組織が常に回収を行っていた事実を確認しました。どうやら今回はF機関より一足はやく第44旅団が動いたようです」

 そして、アジャンは端末を取り出し、ぽちぽちと操作する。
 すると、テーブル一杯にグラフィックが現れた。

「これは?」

 アタシは机どころか部屋一杯に拡大していくグラフの渦を見渡す。

「我々監察局の急襲部隊が回収したF機関の研究室です」

 グラフィックには、数多くの試験管みたいなのが移っていた。
 その試験管の中には、なにやら臓器チックなものがいろいろ収まっている。
 原生生物のやつかなにかか?

「こちらはTLPT特異体の解体資料です。捕獲された資料は完全解体され、様々な実験に使用されていたようです」

 解体?
 おい、それって問題だろ。

「あのーどういうことですか?」

 ミカンがのんきに口を挟んでくる。

「あなたの先輩たちは、皆解剖されたってことですね、はい」

 イケメンが気遣いのない台詞をはきやがる。
 ミカンのやつはみるみる青くなる。

「いや……私、死にたくない」

 そりゃそうだ。
 アタシだって、解剖されて死ぬなんざ願い下げだ。
 つまり、アタシ的にはF機関ってやつは気に食わない組織認定だね。

「貴女は運がいい。死にませんよ。私とここの二人が守ってくれますから」
「え?」
「ですから、貴女は誘拐されたのではなく、保護されたのです」

 アジャンがそういっているのに、ミカンは納得できないようだ。
 なかなかなんでも素直に飲み込むことができるやつなんていないよな。

「でも……」
「あ、できたようです。これが貴女のパーソナルカードです」

 ポンッとアジャンの手の内に、カードキーが現れた。
 たぶん、役所的転送が行われたんだろう。
 どうやってミカンの生体データを取ったかはきかない。
 どうせさっき抱きつかれたときに、抜け毛なりなんなりを勝手に採取したんだろう。

「あと、ご家族の記録についてですが、とりあえず旧世紀の日本という国にいたことまではつかめました。没年については残念ながら、幾つもの大戦争のせいで記録が散逸してしまったようです」
「そんな……」

 ミカンが力なくうなだれる。
 アタシにどうこうできる問題じゃない。
 こういう世界に来てしまったんだから、自分なりになんとか折り合いをつけてもらうしかない。
 
 一応、協力して欲しいって言うんだったら、いくらでも力を貸すつもりではある。

 一人ってのはキツイからな。
 記憶がウソだったことを知ったときから、それがより分かるようになった。

「私、これからどうやって……これは、夢じゃないんですか?」
「狂気に逃げ込むのもわるくない選択です。ですが、一つ思い切ってここの世界で生きてみるのもありだとは思います」

 おい、全然アドバイスになってないぞ。

「そのパーソナルカードがあれば、精神科医にかかるのも容易ですので、そこらへんはご自由になさってください」

 そんなこと言われてもどうしようもない気がするけどね。
 ミカンのやつはボーっと市民登録されたカードをみてる。
 どんな気持ちなんだろうな。しばらくほっとくしかないか。

「大丈夫。わたしはあなたを見捨てない」

 突然だったが、魔女っ子がボーっとしてるミカンに毅然と言った。
 アンタ、そんな格好いいこといっちゃうわけ?

「誰も、信じられません……」
「信じなくていい。信じさせるのは、わたしのほうだから」

 まいったね。
 魔女っ子にそういわれたらアタシも黙ってるわけにはいかない。

「困ったことがあれば何でも相談しな。何だかんだで、アタシは顔が広いんだ」

 適当なことを言ってしまった。
 本当は大して広くない。
 というか、そもそもアタシという存在が勝手に誰かによって作られたものだし。

「おやおや。皆さんいい人でよかったですね。では、人助けは終わりましたので私は帰ります。ではでは我々最高法院監察局は、『全てをみている』ことをお忘れなく」

 やつは立ち上がると、にこやかに胡散臭い笑みをうかべて、玄関へ向かう。

「おい、まてよ! アンタ結局何しに来たんだ?」

 アタシはあわてて尋ねる。

「あぁ、それはですね――」
「もったいぶるなよ」
「あなたがたは、見たいものしか見ていないとお伝えしにきたのです」
「あん?」
「あなたの認識は無意識に支配されています。本当は存在するものを、無意識は排除する」

 言いたいことがわからねぇやつだ。

「何が言いたい?」
「人の五感など当てにならないということです。カフェお友だちと楽しくお話しているときは、店員の足音など気にも留めないということです」

 そりゃそうだろ。
 いちいち気にしてたら楽しくないだろ。

「つまり、我々は存在する事実を排除するシステムを内在しているのです。いわゆる、脳の判断排除機能というやつです」
「それがどうしたっていうんんだ?」
「それ、とても利用価値がある機能だとおもいませんか? 貴女の実在を左右するときに――」

 言い残して、奴は玄関扉の向こうに消える。
 なんてこった!
 あいつは、アタシの何かを知っている!

――待ちやがれ!

 あわてて立ち上がり、玄関の扉の向こうに消えた奴を追う。
 だが、ありきたりな廊下がそこにあるだけで、奴の姿は失われていた。
 もとから、そんな奴は世界に存在していなかったかのように。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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