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ファンタシースター計画09

 襲撃から数日がすぎて、やっとこさ復旧のめどがついてきた。
 だけど、それはせいぜい街並みのお話。
 都市というシステムは、それぞれが機能に細分化され、しかもつながっている。
 どれか一つの細胞が死ぬことは、他の細胞の機能まで阻害する。
 そして、そのシステムを動かしているのは、紛れもなく人だ。
 そう。
 問題はここだ。
 死んでしまった市民に代替はない。
 だから、街並みがその秩序だった景観を取り戻したところで、システムとしての都市が蘇るわけじゃない。
 こういうのは、どうしても時間がかかるんだ。

 だけど、食い物に関しては、システム面での復興も早かった。
 アタシは安いバイクに乗ってやってきたピザ配達の兄ちゃんに金を払いながら、感心する。
 悲しかろうが、悔しかろうが、腹が減る。
 体は、望んでるんだ。
 四の五の言わず生きたいってな。

 で、おかげでこうしてデリバリーのピザにもありついてる。
 部屋の壁にかけてあるディスプレイには、ニュースキャスターと政治評論家が、紛糾する議会の映像をみながらなにやら当たり障りのないことをいっている。

――以後、政権に対する責任追及の声は非常に大きくなることでしょう

 あっそ。そりゃ幼稚園児でもわかるって。なんで評論家ってこういう当たり前のこといってお茶を濁すのやら。

「あの子が起きた」

 魔女っ子がうれしいのかうれしくないのか分からん口調で言った。

「起きた? 意外と落着いてるな」
「まだ状況を把握できてないだけ」
「翻訳機は?」
「つけた。設定はジャポン語。寝言でわかった」

 さすが魔女っ子。
 ちゃんと手を打ってくれる。
 どれどれ、面会といきますか。
 食べかけのピザをそのままにするのは気が引けるけど。
 


「あの、助けていただいてありがとうございます」

 中々礼儀のなっているやつだ。
 ただ、どうもこう、子どもっぽい顔っていうか、やっぱ混血が進んでない黄色人種って童顔にみえんだよな。

「勝手に翻訳機をつけさてもらったぞ。それ、外すなよ」
「私、ピアスつけるの初めてです……」

 そうかい。えらく寂れた青春おくってんだね。

「で、自分の名前くらい言えるか?」
「あ、はい。一之瀬蜜柑です……」
「え?」
「みかんです。変な名前ですよね、よく言われます」

 ふーん。みかん? それってあの甘いオレンジのことか?

「へー、ミカンね。確かにオレンジって顔じゃないわ」
「……変だと、思わないんですか?」
「アタシは他人の名前を馬鹿にしないよ。今どき意味分からん名前が主流だからね。フォヌカポゥとか」
「そうなんですかぁ。知らなかったです」
 
 妙に素直なやつだな。
 その意味で、たしかにミカンみたいに愛嬌のある女の子だけどね。
 ただ、やっぱりこう、グラマラスさっていうか、筋肉っていうか、いろいろ足りないよな。
 良くも悪くも普通すぎる少女だよ。コイツ。

「あの、ここは病院ですか? 私、家に連絡しないと。えっと、ケータイ……」

 どっこいしょと立ち上がろうとするミカンを、アタシは制する。
 制した彼女の肩は細かった。
 やっぱり、鍛え方が足りない。
 女は今どきタフじゃないとね。タフネス! ってCMでもやってるだろ?
 で、ケータイってなんだ?

「ケータイ? 魔女っ子、こいつの荷物は?」
「そこ」

 魔女っ子はキッチンでコーヒーを入れてるらしい。
 どうも手が離せないみたいだ。
 全部オートにできるのに、信仰上の理由で手間をかけないといけないらしい。
 ホント大変だなぁ。信仰は試されるんだねぇ。
 アタシは魔女っ子が指し示したとこからエラくオールドルックな鞄を取ってくる。

「はいよ。あんたの荷物だ」
「すみません、何から何まで」

 そういって、ミカンは鞄の中から妙な形のものをとりだして、ぽちぽちいじり始めた。

「なんだ、それ?」
「え? ケータイですけど」

 ケータイ? もしかして携帯端末のことか?

「あれ、おっかしいな。電波が無いです」

 電波? そりゃ量子物理学時代の概念じゃね?

「すいません、あのお電話お借りできますか?」
「電話? おい、魔女っ子! 電話って何だ!」

 電話といえば魔女っ子が以前話してくれた教義の中にそんな言葉があった。

「もってない。それは神器の一つ」

 魔女っ子のやつは、ぷるぷるふるえながら、慎重に湯を注いでる。
 コーヒー淹れるのに手間かけるなんて面倒だねぇ。

「神器だなんて……あちらのかたは冗談がお上手ですね」
「まぁ、あいつがいうならそうなんだろう。で、電話って何だ?」
「あ、そうですか。外国の方ですものね。えっと、テレフォンです」

 テレフォン? ますます分からんな。
 まぁ、なんたらフォンつながりってことで、ビジフォンかなんかのことだろう。
 ってことは、やっぱビジフォンと同期してる個人携帯端末をいっているに違いない。

「これでいいか?」

 アタシは個人端末を実体化させる。
 ぽんっと、アタシの手にそれが現れる。
 フォトン工学お得意の、クラスタ・トゥ・クラウドシステムの恩恵だね。

「すっごーい! 手品師さんか何かなんですか?」

 ミカンが子どもっぽく驚く。
おいおい、お前はどうやって今まで生きてきたんだと訊きたくなる。

「ま、使いなよ」
「ありがとうございます」

 だが、ミカンは薄っぺらなフォトン板を持ったまま黙る。

「あの、すいません。文字の形式が特殊でして読めないんですけど……」

 どれどれ、こいつの言語はジャポン語だから……これか?

「あ、どうもです。えっと、それで電話番号ってどうやって?」
「電話番号? 連絡とりたいやつの名前を入れればつながるよ」
「へー! すごいですね、これ」

 そしてピッピと文字列を入力していく。

――おかけになったお相手は、地球暦時代のみ該当。エラーです

 しばらく沈黙が続いた。

「あの、すいません。ここ埼玉ですよね?」
「いや、そんな船はないと思うんだけど」
「え?」
「え?」


 アタシらがあほ面さげてお互い見詰め合っていたら、魔女っ子がコーヒーを持ってきてくれた。

 そして、やつは今まで光学調整していた窓を、透過モードに変えた。
 人口太陽光の光で、サーカディアンリズムをもどしてやろうってわけだ。
 すると、ミカンは外を見たまま固まっちまった。

「魔女っ子、どうしたんだこいつ?」
「バイタルサインに乱れ。心拍上昇、血圧が不安定化している」

 魔女っ子は、ミカンの治療目的でナノマシンを投与したんだろう。
 そのログが魔女っ子の端末に刻々と表示されてるらしい。
 そして、ごそごそとお得意鎮静剤の準備を始めた。

「ま、まぁ、コーヒーでものんで落着いたらどうだ?」

 アタシはこういうときどうすりゃいいのか知らないので、適当なことをいっておく。
 だってそうだろ?
 パニック状態の人間を冷静にさせる技能なんてねぇよ、アタシは。

「あの、ベランダに出てもいいですか?」

 どこかミカンの心ここにあらずだ。
 アタシはその目の焦点の定まらなさに、気味悪さをおぼえる。

「あ、ああ、構わないけど」

 アタシはわざわざ、手をとってミカンをベランダに案内する。
 手は、えらく冷たかった。

 我等がベランダには、魔女っ子のやつが信仰上の理由で栽培してるハーブの類のプランターがずらりと並んでいる。
 そして、そこから見える光景はいつもと変わらない。
 青空を演出してるくせにうっすら星がみえるドーム天井。
 人工の大地に、計画的かつ合理的に作られた設計都市。飛び交う車両。何とか目を凝らせば、豆粒大のヒューマンとかキャストとかが見れるだろう。ニューマンについては魔女っ子がそのまんまだから分かりやすいと思うけど。

「予報どおりいい天気設定だな。だけど、午後から第111地区だけ雨らしい。なんでも晴れが続いても心理ストレス溜まるやつがいるらしいぜ。この時期は雨が降らないとだめってな」

 そう説明しながら、『バショー』は梅雨っていうものがあって、やたら雨が降る設定の時期があることを思い出す。

「こ、こ、こここ……」
「こここ?」
「ここ、埼玉じゃない!」

 なにおどろいてんだよ。
 そりゃさっき説明しなかったっけ?

「あー、ここはARKS艦隊2番艦『ウル』だ。ARKS艦隊なんてご大層な名前ついてるけど、単にARKSの指定居住艦ってだけさ。一般市民も大勢住んでるし、魔女っ子が好きなヌードルだって買える」

 アタシはできる限りくわしく説明してやる。もしかしたらこないだの事故で頭を打ってるのかもしれないし。

「わ、わ、わ、私、宇宙人に捕まったんだ!」
「おいおい。宇宙人って何だよ」

 アタシは震えるミカンを落着かせようとして、彼女の肩をポンと叩く。
 すると、ミカンが突然ビクッとして、部屋の中に逃げもどった。
 そして、出口を見つけようとあっちこっちの扉を叩いたりひっぱったりしてる。
 やべぇ、あれ明らかにパニックだろ?

「魔女っ子、なんとかならないのか?」

 平然とハーブの手入れをしてる魔女っ子に、アタシは軽い頭痛を覚える。

「あと5秒」

 魔女っ子はそういって、ぷちぷちとプランターの雑草を抜いている。
 5秒? なんのこっちゃと思っているうちに、5秒すぎた。

 そして、部屋の中で錯乱してたミカンが、ころんと倒れこんだ。

「おい、何したんだ?」
「酸素抜いた」
 ……アタシ、部屋の中でこいつと喧嘩しないようにしよう。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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