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ファンタシースター計画08

 やっぱりだ。

 魔女っ子の姿をみて、交戦中のARKSどもがおどろき、そして憧憬の表情をうかべる。
 この子が歩いていく先にいるダーカーどもが、まるで川を割るみたいに殲滅されていくからだ。
 アタシは誤魔化し程度に射撃しているから、あんまり誰の注目も浴びない。

――本物の、魔女だ

 どっかの誰かがそういった。

 追い詰められてピンチだったARKSの男の子なんて、すっかり魔女っ子に心奪われたみたいに、地面にへたりこんでいる。

「――少々目立ちすぎです」

 通信機に、アルファ分遣隊長のとげのある言葉がとんできた。

「いいじゃん。こういうときは偶像が必要じゃない?」
「なるほど。キァハ司令とよく似ていらっしゃる。あなたは」

 似てる? アタシが? 
 そりゃないっしょ。あっちのほうが数千倍嫌なやつだし、数万倍知能が高い。
 戦いに関しては……二倍くらいかな。そうしておく。そう思ってないとイヤだし。

 あ、やば。
 なんか後ろに一杯ARKSがついてきてるし。どうしよ?
 でもまぁ、魔女っ子がモテモテになるのはこれが最初で最後だろうし、いいんじゃない?


 アタシらについてきたARKSを、アルファ分遣隊の連中が催眠ガスで片付けた。
 キャストのARKSに対しては、ハッキングしたらしい。
 明らかに違法だろ、それ。
 電脳に直接アクセスするとか……
 でもまぁ、この船団は得体の知れない組織が多いからな。
 法律が有名無実化しているか、もしくは特別法によって違法性が阻却されるのかもしれない。

「ARKSの安全は保障します」

 そういって、くたばってるARKSたちは敵が排除された隔壁区画に放り込まれた。
 で、隔壁閉鎖。これでアタシらとあいつらは断絶したわけだ。

「えぐいねぇ、やり方が」

 アタシはひょいひょいと運ばれるARKSたちを一瞥する。

「こういう事態を招いたのは、あなたですが」

 アルファ分遣隊長はそういうつまらない事実を言ってくる。
 確かに、ここまで人がついてくるとは思ってなかったけどさぁ。

「で、どこにその宝物が?」

 そう。
 とにかく将軍の依頼を片付けないとね。
 アタシはべつに市民の救助活動とか、そういう大層な目的はやっぱ向いてない。
 どっちかっていうと、ただ気の向くまま?

「もうすぐです。時空並列の観測予定時刻まで40秒」

 ふーん。
 なにそれ?

「おい、魔女っ子。時空並列ってなんだよ?」

 魔女っ子は、上半身だけが残った女の死体を見ていた。
 あまりにもまじまじと見るその様は、いつも以上に得たいの知れない妖しさを醸す。

「おい、魔女っ子、きいてるのか?」
「きいてる」

 きいてんのかよ。

「時間並列ってなにか聞いたんだが?」
「知らない。確実なのは死は不可逆。それでいて可能性は重なり合ったまま」
「は?」
「わたし、専門は工学と医学だから」

 そして、やつは見開かれた女の死体のまぶたを閉じてやる。
 それだけじゃなく、やつなりの祈りの言葉を唱えている。
 このあたりの死体全部にそういうことをするつもりなんだろうか?
 弔ったところで、死者は蘇らない。
 それに、人の死はこの世界に物理的な影響を与えない。
 死のうが、分子量が減ったり増えたりするわけじゃない。
 だけど、魔女っ子。
 あんたは優しいんだな。
 知らないやつの死を悼んでやれるほど、アタシは強くないよ。


 アタシは時空並列やらに興味をそそられてるから、アルファ分遣隊の連中と一緒にそれを観測する。
 だが、魔女っ子が興味なさそうに、近くのベンチに座る。
 あいつ、ホント興味ないことには何の関心も示さないよな。

「3,2,1、今」 アルファ分遣隊長が時計を秒読みする。
 キャストって便利だよな。体内時計が精確だもん。

 いきなり商業ビルが一棟、『裏返し』になった。
 アタシはみたんだよ。明らかに外側にオフィスの中身が暴露するのを。
 それだけならまだしも、ビルはそのまま半透明になり、次第に色を薄くしていく。
 挙句の果てに、ビルはどっかに行っちまった。
 
 かわりに、妙な格好の人影が跡地に横たわる。

「現認。生体サンプルを回収するぞ」

 姿を隠していたアルファ分遣隊の連中が暴露し、医療担当らしい奴が人に接近する。

 だけど、アタシは寝てるやつの指先がぴくっと動くのをみた。

 どうやら見間違いじゃないらしい。分遣隊の兵たちも銃を構え始める。
 医療担当も接近をあきらめて、他の兵のもとにもどる。

――目標が目を覚ます。ヒマワリ・ヒナタ、君の出番だ

 分遣隊長からとんでもな通信が入る。
 そのためにアタシをつれてきたんかい。


 すぐに、その寝てるやつは立ち上がった。
 普通の、どこにでもいる、冴えないティーンエイジャーだ。

「……え! ここは?」

 妙な格好の女の子だな。あれだ、昔トーマが言ってたやつだ。なんだっけ……セーラー?

「ここは危険なの。だからそこのキャストたちとアタシがあんたを迎えに来た」
「えっと、ジエータイの人ですか?」

 おいおい。なんだよそれ。

「それとは違う。ARKSとそのお友だちさ。とにかく危険なんだ。回りをよく見ろ」
「あの、外人さんですか? 言葉がわからないんですけど……」

 あ? 翻訳デバイスぶっ壊れたのか? 
 しゃあない。アタシはそこらへんを指差してやる。
 女の子はあたりをきょろきょろ見渡す。
 そして、急に青ざめて、そのまま倒れこむ。
 おい! アタシはあわてて駆け寄って、抱きとめる。
 そして、すぐに医療担当兵がその女の子を全身走査し、採血した。

「――簡易分析ですが、危険な病原体を保有しているなどはありません」

 おい!
 あんたらはキャストだからいいだろうけど、アタシはヒューマンだっての。そういうの警戒しなくちゃいけないんなら事前に言えよ。そうならフィルタくらい装備したのに。

「で、この子をどうすんのさ?」

 おきがけに死体と破壊の山をみて耐えられるティーンエイジャーなんかいないはず。
 もしそれに歓喜したり、興奮したりしたら……
 そいつは狂ってるだろうな。

「それはARKSに任せる。我々の任務は血液サンプルの回収と、時空並列の観測だ」

 アタシは唖然とする。軍は狂ってるのか?

「ちょっとそれ迷惑じゃん。アタシらがこいつの面倒みろっていうわけ?」
「拒否しても構いません。そうであれば、対象は処分するだけです」

 おい。処分ってなんだよ。

「処分ってまさか」
「分子レベルまで分解し、隠滅します。それが何か?」
「なにかじゃねーよ! 民間人殺すのが正規軍かい?」
「この戦域には正規軍は存在しません」

 そういうことか。
 戦闘力的にもARKSなんか要らないのに、アタシをここにつれてきたのは、こういうことのためか。

「キァハ准将と通信させて」
「いいですよ。おい、通信兵」

 なんじゃらでっかい通信キットを背負っていたキャスト兵が駆け寄ってくる。
 そして、アタシに無骨な通話機を渡す。
 アタシはイラついてるから、ちょっと乱暴にそれをつかんだ。


「あたしだけど、なに? あたしの可愛い部下と揉めてんの?」

 ぶっきらぼうな准将の声がきこえてきた。

「違うって。確認させて。キァハ准将はサンプル処理をどっか上のほうから命令されたが、それはなんとなく面白くないから、ARKSに奪われたって筋書きを作りたいわけ?」
「わかってんならいちいち連絡しなくていいでしょ。やればいいだけ」

 簡単にいってくれる。

「だ・か・ら、助けたらアタシ他の連中に狙われるんじゃないの? 奪われました、ごめんなさいなんて言い訳通るほど正規軍って甘くないはずだけど?」
「たぶんWORKSかブラックペーパー、あとF計画関連の連中が動く」

 おいおい、シラネェ組織が一杯でてきたぞ?
 ヤバイ案件に首つっこんじまったか。

「おい! アタシ消されるのはごめんだよ?」
「その辺は手打ってあげるからさ、何とかソレ助けてよ」
「あんたの旅団で助けられないのかよ?」
「旅団長なんて大した権限ないんだって。あたしの階級知ってるでしょ? 上が一杯いるし、横も一杯いるわけ。干渉、統制、要請なんて日常茶飯事。そんな組織で匿いきれるはずがない」
「まてまて。じゃなにか? 別組織のARKSだったらOKってか?」
「それを狙っているのよ。ARKSのほうで保護すれば、少なくとも表立って正規軍が干渉することはできなくなる」

 いけない。やつのペースになってる。
 だから、アタシは一呼おいた。

「――それも変じゃん。アンタには子飼いのARKSがいるように、他の連中だっているはずだ。表立ってできなくたって、裏道があるんなら危険にかわりはないし」

 そう。世の中誰かだけが特別な方法を持ってるわけじゃない。
 それを必要とする組織には、それが用意されるものなんだ。
 どんな世界だろうと、需要があれば供給はある。

「……あんたならそれを守れるはずよ? だって、あんたプレーン・ボディなんだから」

 プレーン・ボディ。それはあの計画書に書かれていたキーワードの一つだ。
 アタシの動悸が早くなる。

「おい! 准将、アタシのルーツを知ってるのか? 今すぐ教えろ!」
「その子を無事救ったらね。じゃ」

 通信がきられた。

 ファック! きたねぇぞ、あいつ! 切り札なしで交渉する女じゃないとは思ってたけど、ここまで手段を選ばないとは思ってもいなかった。

「お話がついたようですね。では、我々は撤退しますのでよろしく」

 分遣隊長はさっさと部隊をまとめ始めた。
 しばらくすると輸送機が一機着陸して、連中を回収していった。

 まいったな。

 アタシは腕に抱えたティーンエイジャーをみる。
 戦いなんざしらなそうな、典型的な黄色人種の少女だ。
 混血の極みに達した今どきじゃ、ここまで原始的なのは逆に珍しい。

「やっぱりあなたは、人を助ける」

 魔女っ子が思い出したかのようにとことことこちらに近づいてくる。

「助けたわけじゃないさ。押し付けられたんだよ」
「一緒。あなたは、知らない人の命をつないだ」

 魔女っ子が、あたしを読めない瞳でみつめてくる。
 なにか言いたいのかもしれない。

「おい、言いたいことがあんならいいな。アタシとあんたの仲だろ」
「お告げがあった。あなたはその子の救世主になる」

 ありがた迷惑なことを告げられる。
 救世主? 空とぶスパゲッティの神様からそういわれても、ため息しか出ないけど。

「あと、わたしとあなたの仲って?」

 おい、そういう細かいとこ聞くなよ。
 めんどくさい小娘だなぁ。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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