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番外編そのにっ!

ヌヌザック博士
「さて、困ったことになりましたぞ」

ミカン
「あー、ついにクビですか?」

ヌヌザック博士
「え?」

ミカン
「えっ?」

ヌヌザック博士
「いや、ちょっと待ってくださいよミカンたん。なんで吾輩が解雇とか想像しちゃいました?」

ミカン
「えっ? だって、博士っていつも仕事してないじゃないですか」

ヌヌザック博士
「えっ?」

ミカン
「えっ?」

ヌヌザック博士
「……吾輩、こう見えてもかなり仕事こなしてると思うんですけれど」

ミカン
「? いっつもにんまりして私のお尻みてるじゃないですか。ただのHENTAI以外の何ものでもないですよ?」

ヌヌザック博士
「失敬なっ! 女子高生の臀部など凝視観察観測測量したところで何の意味が? 宇宙の秘密がわかり、真実の女神がほほ笑むとでも?」

ミカン
「どうなんですか?」

ヌヌザック博士
「……キュートなお尻は、真実の女神よりも美しいと思いますな」

ミカン
「ほら、やっぱり博士は仕事してないじゃないですかーっ! 死ねっ!」

ヌヌザック博士
「ああっ! もっと罵って!」

ミカン
「(うわぁ……)」

ヌヌザック博士
「その、電子顕微鏡で陰毛を観測してしまったみたいな目、ぞくぞくしますなぁ」

ミカン
「……で、困ったことってなんですか? 私、絶対コスプレとかしませんからね」

ヌヌザック博士
「おお、そうだったそうだった。吾輩、困っておるんでしたな」

ミカン
「忘れる程度なら、大したことない話なんでしょ?」

ヌヌザック博士
「あー、えっと、そうだ、そうでした。研究所の引っ越しが決まりましてな。今は博物館の地下なんか借りてましたが、もっと大規模なペーパームーン王立大学に移転しますよっと」

ミカン
「へー。じゃ、引っ越し業者さんの問題じゃないですか。私になんの関係があるんです?」

ヌヌザック博士
「ほら、いまミカンたんが住んでる寮あるでしょ? そこも引っ越すってことで困ってるわけです」

ミカン
「困るようなことですか? 博士がまた新しいとこ手配してくださるんですよね?」

ヌヌザック博士
「それはそれは当然ですぞ。吾輩のカワイイ助手ですからな。で、困っているのはこれです」

 博士はミカンの端末に部屋の間取り図を送った。

ミカン
「……なんです? これ」

ヌヌザック博士
「いやー、一緒に住もうかと思って、つい広い部屋の見積もりをとったという吾輩の親心的な……はうっ!」

ミカン
「――マジありえないんですけど」

ヌヌザック博士
「いやいや、なに? そのハンドガンどうしたの? ミカンたんみたいなカワイイ女子高生がもってたら捕まるよ? 逮捕されてあんなことやこんなことされて……だ が 、 そ れ が い い っ!!」

ミカン
 黙って引き金を絞る。

ヌヌザック博士
「ゴポォッ……! ちょっとミカンたんっ! 鬼畜道3段、HENTAI道5段の吾輩じゃなきゃ死んでますよ? それモノホンじゃないっすかっ!」

ミカン
「おかしいな。出力最大にしたいのに、リミッターが解除できないんです」

ヌヌザック博士
「そりゃ、さすがに横流し品とはいえ、ガチな兵装を流しちゃったら船団もおしまい。法務省がちゃんと目を光らせておるわけですな。さすが吾輩、政治にも詳しい……」

ミカン
「あ、解除できましたっ!」

ヌヌザック博士
「よかったじゃないですか……って、え? え? なんで? それさすがに吾輩死んじゃうよ? 死んでいいの?」

ミカン
「死にたくなかったら、言うこと聞いてくださいっ。えっと、まず死んでくださいっ!」

ヌヌザック博士
「ほいキタッ! って、言ってること分かってます?」

ミカン
「はいっ!」

ヌヌザック博士
「イイッ! そのマジ、クソ虫は死ねって感じの目、ほんとイイッ!」

ミカン
「で、どうするんです博士? 死にます? それとも私に殺されます?」

ヌヌザック博士
「……もちろん、キミのためなら死にますし、キミに殺されてもいい。吾輩は本気でそう思っているんですな。だって、最近のミカンは、あまりにも辛そうで、寂しそうだった。馴染めない世界、溶け込めない時代の中で、一人で生きていくことの切なさをその年で受け止めているのだと思うと、吾輩はいてもたってもいられない」

ミカン
「……」

ヌヌザック博士
「吾輩が死んで、ミカンが笑ってくれるなら喜んで死んでいい。喪われてしまった、あるべき時間を吾輩が取り戻してあげられたらと、毎日考えて、それでもふがいない吾輩はその『論理』を見つけ出せない。今日も量子フォトン学者どもと話しましたが、理論的に過去改変が困難であることで終わってしまいました」

ミカン
「博士……」

ヌヌザック博士
「存在可能性についての因果律に影響を及ぼし、ある可能性へとジャンプさせる、いわば情報を入れ替えることによって過去と未来を行き来させる手段を考えていますが、それは世界線が変わるのか、それともある多次元宇宙の分岐線の『観測者』になるだけなのか、やはり問題は山積しておるのです」

ミカン
「そこまで、私のことを……」

ヌヌザック博士
「ふっ……」

ミカン
「で、死んでくれないんですか?」

ヌヌザック博士
「えっ?」

ミカン
「えっ?」

ヌヌザック博士
「いやいや、今の話の流れだと、ほら、ミカンたんが『博士っ!』とかなんとかいって、吾輩の懐に飛び込んでくるパターンでしょ? 絶対、別の分岐宇宙だったら吾輩の懐にミカンたんの顔がうずまってるはずっ! おかしいっ! この宇宙はおかしいですぞっ?」

ミカン
「なーにわけわかんないこと言ってるんですか。私のためなら死んでもいいんなら死んでくださいよ」

ヌヌザック博士
「いや、さすがにちょっと上司としても吾輩、堪忍袋の緒がですな……」

ミカン
「……」

ヌヌザック博士
「え? あれ? なんで銃降ろしちゃいました?」

ミカン
「……ウソつき」

 ミカンは、うつむいた。

ヌヌザック博士
「( マ ズ イ ! )」

ミカン
「……うぅ……ぐすっ……」

ヌヌザック博士
「(えっ! えぇっ!?)」

ミカン
「……結局博士も……私のために死んだりなんかして……くれるわけ……ない……」

ヌヌザック博士
「わ、吾輩は……」

ミカン
「だって、博士は私のお父さんや、お母さんじゃないもん……」

 そのままミカンは博士に背を向けて、椅子に座ってうなだれた。

ミカン
「……こんなにつらいなら、心なんていらないのにっ」

ヌヌザック博士
「(父母の愛、か。強がっていてもやはり、愛されたいし、守ってもらえると無垢に信じていたい年頃なのだろうな。独り立ちしたいと思うくらいに心がマセてきても、それでも寄りかかる柱と、冷たい世界から守ってもらえる温かみを求める。吾輩は、この娘の父や母のように振る舞う覚悟が足りないから、こんな軽薄な態度でごまかし続けるんだろう。なにが天才だ。涙ひとつとめる方法をしらぬではないか)」

 ミカンの震える背を見ていたヌヌザック博士は、いつもの『うそつきが手をかまれる石像』から、本来の博士自身の姿へと戻った。
 そして、彼女の震える肩にやさしく手を置く。

ミカン
「……え?」

ヌヌザック博士
「心を亡くしたら、何もかも透明に見えてしまうぞ。それでは吾輩と同じになる」

ミカン
「きゃーっ! 近づくなHENTAIっ!」

ヌヌザック
「ふべろぉっ!?」

 ミカンのフルびんたが、ヌヌザックの頬に決まった。

ミカン
「誰ですか? どこのヘンタイさんですか? 服も着ずに研究室に来るなんて非常識ですっ!」

ヌヌザック博士
「す、すいませんっ! 部屋を間違えましたっ!(いかんっ! 思わず言い訳がっ!)」

ミカン
「博士っ! 不審者ですっ! かくれんぼしてないで捕まえるの協力してくださいっ!」

ヌヌザック博士
「さらばだっ! ふぅはっはっは!」

 結局ヌヌザック博士は全力で研究室を飛び出し、廊下の中を駆け抜けていった。

ミカン
「……まったくもうっ! どうして私の周りにはヘンな人しかでてこないんだろう。博士のバカだって、女の子が泣いてるんだから、やさしくしてくれてもいいのに。気が利かないヤツ」

 

 ――1時間ほどのち、ヌヌザック博士は不動産屋から新たな見積もりをもらって戻ってきた。
 あら、お帰りなさい博士、とミカンが何事もなかったかのようにいうので、「ただいま」答えておく。
「部屋を分けることにしましてな」
「あたりまえです。いいですか、セクハラというのはですね――」
 2時間ほどミカンの説教を受けながら、博士は必ずこの娘を返す方法を見つけねばと、天才頭脳を灼熱させた。

 ミカンは説教を終えて満足したのか、博士に『地球歴時代』の音楽を聴こうと言った。
 博士はもちろん、イエス、と答える。
 少しでも、ミカンの寂しさを紛らわせるならば、なんだってするのが博士だから。






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全ては未来の向こうへ行くために09



 誰もが都市船の地上部に住み、街並みの中で生活しているわけではない。
 表に出てくるわけにはいかない者たちにとって『船底』こそが、その住まいとなる。
 都市船の構造自体は積層構造であり、工業ブロックや発電・上下水道処理・リサイクルシステムなどは下層部に存在する。
 その最下層部には大量の導管がある。そこにはリサイクルシステムによって分解され、用途別に分類された有機物・無機物が流れている。
 行きつく先は、備蓄用のタンクであったり、精錬施設などである。
 これらの施設すべてはほとんど無人化され、定期的に管理者が巡回する程度である。ゆえに、人気をきらう者たちにとっては格好の隠れ家として機能する。
 
 旧地球時代の下水道のように、地下世界は人の身長とおなじくらいの太さを持った導管が網の目のように敷設されていた。
 それらには当然管理用の側道があるものの、やはり薄ら暗いことに変わりはない。
 昔と変わったことといえば、下水道特有のあのクサさや、不潔感などから解放されていることだ。

 そんな地下迷宮に類似した世界を男はうろついていた。

 ガルム、という名を持たされたD因子による再生クローン。
 ARKS研修生時代に死亡し、回収されなかった遺体に着目した『DF』が、己と敵対する人類なる種を理解するために作り出した模造体である。
 角ばった顎、筋肉に覆われた首と肩、そして際立つ背筋。よく鍛えられ、また、よく働く人物特有のきびきびとした動きが際立っていた。
 短く刈り込まれた髪は衛生的である以上に実用的。まとっている装具も、ARKSならば汎用的に使用されている目立たない実用一辺倒のそれだった。
 つまり、どこにでもいるARKSに見える。

 彼の記憶は混濁していた。
 生きていることくらいは認識できているが、自分という存在が限りなく半透明なものに思われるのだ。
 記憶はある。
 ARKS研修生時代の最終試験、ナベリウス降下で『ヒマワリ・ヒナタ』を失ってしまったという苦い思い出。
 そして、己の弱さに耐えられなくなった彼は、ARKSから脱走し、あてもなく地下世界に逃げおちたのだ。
 だが、この記憶はあまりにも『痛み』が少なすぎた。
 もし本当に己にとって大事なものが失われたのだとしたら、そこには『痛み』があるはずだ。
 しかし、悪夢としてみさせられるヒマワリという女の喪失劇から感じる痛みは、心の痛みというよりもむしろ『体の痛み』であった。
 なぜか、理由はわからない。ただ、ヒマワリという彼にとって特別な赤い髪をもった娘が失われたにしては、心臓を抉り出したくなるような苦しみを感じることができなかった。

 管理用に作られ、ながい航海の中で使用されなくなった宿直管理室を、彼は占有していた。
 不思議と、誰もここを発見することはなかった。その理由も、彼には分らない。
 なぜこの部屋に住むようになったのかも思い浮かばないが、とりあえず、帰るべき場所がここにしかない、というのだけは理解できていた。
 
 その部屋には、簡易なベッドと、ささやかなキッチン、そして古びたテーブルとイスが置かれている。
 どれもこれもとってつけたようにインテリアとしての統一感がなく、寄せ集めただけのように思われた。
 それは、彼自身の記憶も同じである。
 
 とりあえず、彼はキッチンでコーヒーを淹れた。
 マグカップに注がれたそのコーヒーの香りは、本当に自分の好みなのか分らない。
 わからないことだらけだ。時折、熱に浮かされたように体がだるくなり、意識が混濁し、夢見心地になる。
 ふと我に返ると、わけもわからない所に倒れていたり、知りもしない場所のベッドで眠っていたりした。
 今、ここでコーヒーを飲むことが己にとって本当に『やりたいこと』と言っていいのかすらも、確信が持てない。

 彼は、淹れたコーヒーをすする。

 苦いだけの、ろくでもないものだった。香り、というのは脚色されたまがい物にしか思えない。
 熱く、苦く、ろくでもないコーヒー。それはどうも確実に存在しているのだが、それを飲む自分というものを信じることはできない。
 だが、彼には信じるか信じないかではなく、やらなければならない仕事がある。
 今日もその仕事が、彼の部屋に備え付けられた電子機器に届いていた。
 
 ガルムの仕事は、『反政府主義者』の抹殺である。

 彼がなぜそのような仕事についているのか、彼自身分らなかった。しかし、それを自然にこなすことはできた。
 上手にできる以上、それをやり続けるしかない。
 彼は半分ほど残ったコーヒー片手に、電子機器と自己の携帯端末を接続する。
 すると、自動的に自らの端末に必要なファイルが転送され、元のファイルは消去ないし別のファイルへと偽装書き換えがなされる。
 そして、彼は自らの端末をいじり、仕事内容を確認する。

 今回の案件は、ペーパームーン自治王国に侵入しようとしているARKSを始末すること、だ。
 すでにペーパームーン自治王国にはARKSが二名入っている。それとは別件である。
 その二人についてはガルムも詳しく知っている存在であったし、想えば妙に狂おしくなるものだった。
 しかし、そこには明らかに記憶の矛盾があった。死んだはずのヒマワリが生きているという事実である。
 これについて、ガルムの回答は実に単純なもので、ヒマワリの遺伝子ベースのクローンが再生産されたのだと思っていた。
 いつぞやの仕事で、ガルムはクローン技術者を暗殺した。その技術者の部屋には死んだはずの娘の再生クローンがいたし、その子を技術者は愛していた。
 だが、それは反人間的な行為であった。
 命は失われなければならない。終わらぬ命など、人ではなく、べつの何かとなってしまう。
 そのような衝動が、理由もなくガルムを支配し、そして仕事を完遂させた――幼いクローンの娘の命を絶ったのだ。
 理由はわからぬままに、彼の心は『命に限りなき者』が反人間的存在であるという思想に支配されていく。
 なぜそんなことを思い込むのか自分でも理解できないが、それでも、抗いがたい誘惑として日々彼の心を食らっていく。
 そして、彼に『仕事』を依頼してくるORACLE船団元老院の紋章とパスコードが使用された『何者』かの命令は、ガルムに有用性と価値を与えていく。
 この自己肯定に、ガルムは抗えなかった。
 なにかが強烈にかけている自分の人生に、肯定感を与えてくれるのであれば、そこに溶け込んでしまいたい誘惑がある。
 それに抗することなど、彼にはできないのだ。
 だから、彼は準備を始める。与えられた課題を達成するために。



 入国管理局での手続きを終え、宇宙港のラウンジでキャスト向けの電子アルコールを摂取している女がいた。
 よく整備された、ある種のフェティシズムを持つ人々を歓喜させる清純さを表象するボディラインと、顔の造形は、一流の工業芸術家集団『芸術結社モリ工業』によって削り出されたフレームだ。
 本物の頭髪よりもより繊細に作られた金髪は、手入れの難しいP繊維であり、維持するだけでも金がかかりまくるものである。
 しかし、それだけではただの愛玩ないし娼婦型キャストと変わらない。
 そのキャストにはARKSのロゴがあるのだ。しかも、人でいう『へその下』あたりに、外観の清純さとはまた別の意味でダイナミックな明朝体で記されている。また、ロゴのわきには、型番と思われる記号『ELSASS』との記述も見られる。
 型番がそのまま彼女の呼び名となり、そして誰が付けたか不明な愛称である『ロレーヌ』をつけて、こう呼ばれる。

 アルザス=ロレーヌ

 任務成功率100%の女キャストといえば彼女ということになる。
 あらゆる任務――ARKSのお家芸たる惑星探査から、ARKSと『不幸な利害関係』を有した者の排除、そしてARKSの組織に害をなす内部の問題児の処理を、必ず遂行してきた。
 そんな彼女に今回課せられた任務は、ARKS的にはメリットのある人材を始末している犯人を排除することである。
 犯人については目星がついているし、頼もしい増援もいる。
 
「おまたせしましたぁ。うふふ、うふふふ」

 かっぴらいた赤い瞳の目立つ女性キャストが、アルザスと相席した。
 実のところ、アルザスのセンサーに感はなかった。知らないうちに『頼もしい増援』に対抗電子戦を展開されていたのであろう。

「久しぶりですこと。あなたとのお仕事なんて久しいものね」
「(リサはですねぇ、人を撃てるなんて幸せ者です。うふ。だって、人ですよぉ? 死んじゃうんですよぉ?)」

 リサなどという、短く簡潔な名前を持つ女キャストは、思考プログラムに問題を抱えていた。
 あれこれあってOSアップデート作業中にデータエラーが発生し、倫理規範意識プログラムに深刻な障害をもっているのだ。
 一方で、通常のキャスト以上に有機生命体近似の『非論理型非線形思考』を獲得しているため、ARKS上層部は便利であるとしてそのまま放置している。

「(勝手に思考連結しないでくださるかしら。わたくし、あなたの思考に汚染されるのが嫌いですの)」
「(うふふ。アルザスちゃんはウブですねぇ。もっとつながりあいましょうよぉ? リサはですねぇ、一緒に人を殺すというハッピーを共有したいのですねぇ。うふふ、うふふふ)」
「(そんなに楽しみ?)」
「(はい。もちろんですよぉ。だって、普段は殺しちゃいけないじゃないですかぁ。殺していいのはつまらない無害な敵ばかりですしねぇ)」
「(無害な敵?)」
「(はい。リサにはですねぇ、人のほうが怪物にみえちゃうんですねぇ。機械の体のわたしに欲情したり、触りたがったり。人はやっぱり狂ってるんですねぇ。だから怪物なんですよ、人は。それでですねー、バンバンってしたくなっちゃうんですよぉ)」
「(リサは小奇麗に作られてらっしゃいますからね)」
「(アルザスちゃんを触ろうとする人もいるでしょぉ? そんなにキレイなんですからぁ)」
「(そういう方には、事故死していただくことにしておりますの。そういうクソ製造体には生きてていただいても、迷惑ですので)」
「(うふふ。やっぱりリサとアルザスちゃんはオトモダチになれそうですねぇ。一緒にクソを作るだけの人をバンバン殺しちゃいましょうねぇ。うふふ)」

 クソのような有機生命体を殺せるなんて、最高じゃないか、という点で二人の意見は一致した。
 彼女たちは有機生命体たちが嫌いだった。毎日くちゃくちゃと飯を食べ、クソを作り、排出する。
 それどころか、すでに生殖能力を失って久しいはずなのに、相変わらず快楽のために体をからみあわせる男と女という有機体も気に食わない。
 挙句、ダリッド(市民権をはく奪された者たち)がしけこむ暗黒街では、特殊な嗜好の持ち主たちのために『愛玩用キャスト』まで製造されているとか。
 そういう『女の体を使うこと』『男の体に使われること』を中心に世界を解釈しているとしか思えない有機体どもを、彼女たち二人は皆殺しにしたいと思っている。
 リサも、アルザスも、自分たちの体が有機体の『雌雄』に分類しうるように製造されたことが、気に食わないのだ。
 そもそも、なぜ有機体は己の雌雄についての常識を、精緻な機械生命体であるキャストにまで適用しているのかが理解できない。
 奴らは相変わらず同性愛者について偏見を抱く上に、異性愛者同士で嫉妬に駆られるクソ製造器であり、クソのつまった肉袋にしか過ぎないではないか。
 どいつもこいつもセックス・セックス・セックス。セックス至上主義な有機体の文化をみていると、二人は爆弾を仕掛けて世界を消し去ってしまいたくなる。
 あげく、それを取り繕って間の抜けたことに『友情』だの『愛』だのとわめきたてる。
 ならば、人殺しなどやめればいいのにとの論理解が導かれるのに、いまだに奴らはそれがやめられない。
 まったく、光速で思考できるわけでもなく、論理によって自己を統制できるわけでもない有機体は、彼女たちから見たらウーダンかサルの群れにしかみえない。

「(それでですねぇ、クソ袋をどうやって殺すんですかねぇ)」

 リサは太陽もつられて笑ってしまうのではないかと思えるほどに、明るい笑みを浮かべていった。
 クソ袋、とは有機生命体、すなわちヒューマンやニューマンのことである。
 今回の二人の任務で殺す相手は、ヒューマンであるから、やはりクソ袋という呼称になる。

「(あらあらクソ袋だなんて差別的ですこと。せめて肉袋とよんであげては?)」

 アルザス=ロレーヌも嬉々として答える。ただし、二人の会話はあくまで直結されており、はたからみれば見詰め合って電子アルコールを摂取している美人キャスト2体でしかない。

「(おや、おやおやおやぁ? アルザスちゃん、もしかして作戦がないのですかぁ?)」
「(まさか。用意周到なのが、わたくしのやりかたですのに)」

 アルザス=ロレーヌによると、今回の排除対象をおびき出す場所と方法は手配済みらしい。
 いわく、ARKS上層部が、ARKSと敵対的、ないし利害が衝突している組織に対して、『ARKSの重要な情報をもった使者2名がペーパームーン研修所に向かう』との偽情報をリークしたとか。
 さすがにそれだけでは確度が低いので、補強証拠として、ARKSの中でも実力者(というより、ARKS上層部の信頼を得ている者とされている存在)を送り込んだというわけだ。
 ARKS上層部と通じていると、広く噂されている二人の投入は、悪くない誘導となるだろう。

「(うふふ。アルザスさんはワルですねぇ。いとしいくらい、ワルイ人ですねぇ)」
「(あなたも相当に、おかしい方だと思いますけれど)」
「(リサをほめてもですねぇ、何も出ませんですよぉ)」
「(……では、まいりますか)」

 二人は会計を済ませ、ラウンジを出た。
 彼女たちの機械の瞳は、まるで人のように嬉々として輝いていた。
 ついにクソ袋を殺せるという喜び。そしてリミッターを解除して、合理的に敵と戦えるという充実感への期待。
 足取りは軽く、天使のような笑顔で、どうやって対象を破壊するかを二人とも考えているのだった。

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プロフィール

YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





PSO2_200x200_応援バナー01

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