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ファンタシースター計画24


「大気圏内飛行にシステムを設定。以後、航路指定。自動操縦に切り替える」

 アルザス姉さんがてきぱきと機長になって、シャトルシップを操縦してる。
 魔女っ子は通信席のほうで、後続の研究チームのほうと定時交信を担当してる。
 アタシは――。
 何もさわるな、っていう厳命の元、副操縦士席でパックコーヒーをちゅーちゅー吸ってる。

「――定時交信終了。レーダー監視に移行」

 魔女っ子が対空対地レーダーのつまらん画面をじーっと眺め始める。
 まぁ、護衛任務って言うだけあるから、襲撃だってあるかもしれない。
 どんなやつかはしらないけど。
 何たら機関だとか、何じゃら局とか、そういう政府系かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 
「レーダーを機長のHUDに直結。ファイアウォールはずせ」
「機長了解。ファイアウォール、限定解除。クリアランスHUBを経由し、レイヤー7に送れ」
「バイパス完了。テストピング、伝達」
「ピングよし。セキュリティクリアランス確保。メイン送れ」
「メインデータ、送信開始。回線監視に移行する」

 なんじゃらほい。
 魔女っ子とアルザス姉さんはわけの分からんやり取りをして忙しそうだ。
 それに比べて、アタシはコーヒー飲んで昼寝してりゃ目的地に着くんだから気楽なもんだよ。

「――回線に干渉確認。周辺環境を走査」

 魔女っ子がちょっと驚いたみたいな声を出した。

「分子構造環境の変動を観測。ダーカー、実体化」

 おいっ!
 ここは高度いくつだよ?
 こんな高高度であのクソ虫どもが活動できるってのか?

「なるほど。研究チームが運んでいらっしゃるのは『零式観測デウス=エクス・マキナ』ですのね」
「オーケー! わけわからん話はいいから、アタシは何すりゃいい?」
「銃座をお願いいたしますわ。命綱とパラシュートを着用なさってくださいね」

 おいおい。
 外部銃座しかねぇのかよ。
 アタシのやわらかい肌まるだしで、銃座に座って撃ちまくれってか?
 だけど、出るしかねぇだろ。

「了解した。ハッチ解放してくれ」
「ハッチロック解除」

 魔女っ子がそういうと、操縦席とカーゴ部の連絡通路のロックが解除された。
 アタシは駆け足で連絡通路に向かい、備え付けのパラを背負う。
 ガイドレールに命綱を導縛して、準備よしってヤツだ。
 あとは、どうせ空気薄いだろうから携行エアロパックを咥える。おしゃぶりみたいで気に食わねぇが、なかったら死ぬだけだ。
 そして、梯子を上って、外につながるハッチを開放する。

 一気に、空気が抜けた。 

 アタシは流れる本流に押し流されるかたちで、外に放り出される。
 空からさらに空に放り出されるってのは、宇宙にでも行くって事じゃねぇの?
 などと、くだらないことを考える余裕を保ちつつ、伸びきった命綱を手繰る。
 なんとか、体勢に持ち直せた。
 そして全環境ブーツの底をマグネットに切り替えて、シャトルシップの外装を行く。
 ちょっと行けば、例の大型銃座が頼もしそうに鎮座していた。
 ありがたいことに、操縦席付だ。申し訳程度の防弾ガラスで覆われたキャノピーがある。
 アタシはどっこいしょとその中に入って、システムを立ち上げる。
 やっぱりこの銃座はあとづけされたものだったみたいで、船内のシステムとリンクされてない。
 まったく、航空戦力ってのを適当にしてるARKSの愚かしさを呪いたいぜ。

「魔女っ子、大型銃座にたどり着いた。FCSの認証コードは?」

 FCS認証がないと、撃てるはずがない。とりあえず魔女っ子に通信でたずねる。

「あなたの名前」
「そりゃどうも。バカでも分かる設定にしてくれてありがとよ」

 名前を打ち込むと、Microsoft社製のOSが立ち上がって、照準線、弾薬量、ロック限界、放熱状況が表示された。
 アタシは試しに、座席のペダルを踏んでみる。
 浅く踏めばゆっくり旋回。深く踏めば早く。
 右足、左足のペダルはそれぞれの旋回方向に対応しているらしい。

「……おい、これレーダーとリンクしてねぇじゃねぇかっ!」

 船内システムとリンクしていないということは、当然、レーダー情報も届かない。
 アタシに有視界戦闘やれっていうのか?
 ここは空だぜ?
 雲とか、太陽の照り返しとかで見えねぇって。

「魔女っ子、アタシのHUDにレーダー情報を送れるか?」
「全部は無理。敵の概算位置なら送れる」
「送ってくれっ!」

 魔女っ子の仕事の速さが発揮されて、アタシのHUDにぽんっと赤点が一杯表示された。
 一杯?

「おいおいっ! 近すぎだ、バカヤローっ!」

 思い切りペダルを踏み込んで、レーダーと照準線を重ね合わせて、適当にトリガーを引く。
 無反動20mmガトリングが火を噴いてくれる。雲に穴を開けて、弾丸が飛翔する。
 目視ではわからねぇが、赤点は一つ消失した。
 とにかく、近いやつから片付けていくしかねぇ。

「ヒマワリ。接近を許さないで。接近されると射界がないから、落とされる」
「アルザス姉さんに、やんちゃな操縦をしてくれって頼めっ!」
「もうやってる」

 いきなり、頭に血が上る感覚があった。
 どうやら上下反転したらしい。背面飛行とか言うやつか?
 とにかく、アタシみたいな素人じゃ空間失調を起こしちまいそうだ。

「――2番から6番、24番にSAM」

 アタシが口頭認識装置に叫んでやると、ミサイルが白煙たてて飛んでいった。
 レーダーを見てる限り、三つは落とした。
 あとはダメだったらしい。
 こりゃ正直、数が多すぎるだろ。

「研究チームの機体が襲われてる。この機体を盾にするって」
「冷静な声で何言ってるんだ! それ、カミカゼするってことだろ?」
「大丈夫。信じても、信じなくても、神はそこにいる」
「意味わかんねぇよっ!」

 機体が元の位置に戻り、一気に滑空を開始した。
 雲が流れる相対速度で分かる。ま、操縦は任せて。とりあえずアタシは撃ちまくるだけさ。


 ファック! 銃身が焼け付いちまった。水冷式じゃねぇのかよ、と思ったら、冷却水ポンプをエル・アーダのクソ虫に吹っ飛ばされたんだっけ。
 ぱっと見渡したところ、船体にダーカーどもが結構張り付いてる。
 このままじゃ、アタシがバラされるのも時間の問題じゃねぇか。

「おい、アルザス姉さん、さっさと高度上げるとか急旋回して振り払えっ!」
「無理ですわ。エンジンの片方をやられましてよ。まったく。なにをやっていらっしゃるの、銃座は」

 いやいやいや。
 ここで咎められてもねぇ。
 数が多すぎるんだって。そんなに接近を許せないんなら、護衛機とか飛ばしてもらえばよかったんだよ。

「どうすんだよっ!」
「――機を放棄しますわ。では、ごきげんよう」

 アタシは信じられねぇものを見ちまった。
 操縦席のある部分から、脱出筒が地上に向けて発射されたのを、見ちまった。

「アタシを見捨てやがったな、あのクソアマどもがぁ!」

 アタシは絶叫して、そのままキャノピーの扉を蹴破って外に出た。
 そして、さっさと命綱をパージする。 

 体が一気に軽くなった。
 これが、『わたしは、風になりたい』とかいう言葉の真実だよっ!
 敵だらけのどことも分からぬところに向かって落ちていく、それが風になるってことだ。
 機体が一気に遠くなって、点になっちまう。
 そして、数秒で炎の固まりになりやがった。
 自爆装置発動ってこった。
 ああ……アタシの万能バイクが。アタシの高級トレーニングキット……あと、12年物のワイン。
 ぜんぶ燃えちまった。
 せめて、せめて一部のコンテナがポロリと地上に落ちてくれやしないだろうか。
 ちくしょー。

 って、おい、まずいぞ。高度計がレッドだ。
 アタシはあわてて導索を引く。
 しゅるしゅると絹すれ音がして、パラシュートが開く。
 一気に降下速度が落ちる。
 だけど、着地するときはビルの三階くらいから落ちる衝撃を体験するハメになる。
 ここで一つ重要なことは、アタシは空挺トレーニングなんて受けてないってこと。
 ああ、神様でもスパゲティモンスター様でもいいから、アタシを無事着陸させてくれ。


 素人ながら見事な着陸だったと思う。
 少なくとも、左腕骨折で済んだのは、アタシの神業的運動神経のおかげかもしれないし、単に神の御業かもしれない。
 粉雪を、小麦粉ぶちまけるみたいにふっ飛ばしながら着陸したわりには、損害は軽微かもしれない。
 と、このように自分を褒めまくっておく。
 
 正直、最悪だ。
 何が一面の銀世界だ。
 酷薄なだけの、寒くて、冷たくて、ひたすらにアタシの体温を奪うだけの世界じゃねぇか。

 環境フィールド発生装置は落下の衝撃であえなく死亡。
 いまは、もこもこエスキモーファッションだけが頼りだ。
 が、寒すぎるだろ。
 というか、痛い。
 寒さは過ぎれば痛みになるなんて、初めて知った。

 とりあえず、アタシは寒波を防げそうな岩陰を見つけて。そこにへたり込んだ。
 腕の治療を最優先しなくては。

 とにかくアタシは、ARKS携行のサバイバルキットから局所麻酔の注射器を取り出して、さっさと腕に極太注射をする、つもりだった。
 しかし、極寒と粉雪のおかげで、針が機能しない。
 なんてこった。
 だけど、応急措置なしで生存可能状況までもっていくなんてありえない。

「やるしかないよな」

 口に出して、自分に言い聞かせる。
 今からやるのは、麻酔無しの外科手術だ。こっちのほうは粉雪の影響を受けるようなやわな注射器を使うわけじゃない。
 注射銃だ。
 釘打ち機みたいなもんで、筋肉をぶち抜いて、骨を割って骨髄にムーンアトマイザーを注射する頭のおかしい骨折治療法の道具だ。
 正直いうと、うめき声どころじゃ済みそうにない。
 下手したら、アタシは食いしばりすぎて、奥歯を奥歯で噛み砕くとかいう事態になりかねない。
 寒さのおかげで、感覚が鈍っているいまなら、もしやとも思えるけど、やっぱり心臓があばれる。

「勝手に骨折が治ったりしねぇかな……」

 そして、あるわけねぇだろ、と自分に終局判決を下す。
 やる。
 やるしかねぇ。
 とりあえず何か役に立つかもと引っ張ってきたパラシュートの太い綱を、転送したレイデュプルで切る。
 そして、手ごろなサイズの綱を、アタシは口に入れて噛んだ。
 ふが。食いしばれないことはない。
 さぁ、やるか?
 やるなら、一気にやっちまえ、ヒマワリ・ヒナタ。
 女は度胸と根性だろっ!
 アタシは注射銃にムーンアトマイザーを規定量いれて、患部に向けて打ち込んだ。
 釘打ち機みたいな異音がした。
 骨をぶちぬいた音がした。頭の中には、アタシの筋肉をぶちぶちと針が裂いていく音も聞こえた。

「――――っ!」

 声にならない悲鳴が聞こえた。
 ああ、そうか。
 アタシの声だ。
 ちょっと意識が飛びそうになって、離人的になっちまったんだな。
 あ、まずい、意識が、混濁して――
 不屈っ!
 耐えろ、アタシ! こんなところでくたばるお嬢さん育ちじゃねぇだろ。

 アタシはぶはっと、縄を吐き出して、注射銃を抜いた。
 傷のほうは、モノメイトでものんどきゃ何とかなる。
 
「やばかったー」

 ここで気を失ったら、凍死しちまう。
 とにかく、ビバーク拠点だ。
 どこかに凍土地帯には洞窟が多いと聞く。
 その中で、骨折部位の固定をしなくちゃならん。
 そう考えると、このパラシュートの布地や紐類は寝具や火種の変わりになるかも。
 とりあえず、まとめて担いでくか。

「行くか」

 アタシは萎えそうな自分の心に言い聞かせる。
 生き残らなくちゃ、任務は遂行できない。
 魔女っ子やアルザス姉さんたちは、脱出筒で降りてるから、損害はないだろう。
 今頃はアタシの捜索よりも、目標地点の第一次惑星探査計画の廃棄基地に向かってるだろう。
 アタシも、さっさと合流しないと。
 ARKSは任務を遂行する。
 それができねぇなら、ARKSの意味なんかねぇ。


 洞窟に入るんなら、火を持っていったほうがいいと、サルに近いころの人類は経験から学んでいた。
 で、サルくらいの知性かもしれないアタシの経験則はこういってる。
 洞窟に入るなら、武器を持っていけってな。
 やっとこさ、洞窟を見つけて、ビバークできると安心したら、底には目を光らせた大型オオカミさんの群れがいた。
 ガルフルどもがっ! 
 アタシは使い物にならない左腕をかばいながら、情けない戦い方で、こいつらと斬りあう羽目になった。
 一応、防御ユニットは機能してくれてるらしく、ガルフルの刃がアタシの柔肌をえぐることはなかったけど。
 でも、体力のほうが底をついた。
 アタシはぜぇぜぇ息をしながら、最後のガルフルの獣首に、レイデュプルの薄い刃を滑り込ませた。
 見事脊椎を絶ち、ヤツは絶命。
 アタシは生ぬるい血溜まりにひざをつく。

「火だ……火をおこさねぇと」

 くたびれて言うことを聞かない体を引きずって、洞窟の奥に行く。
 とはいえ、薪なんかがあるわけじゃない。
 アタシはサバイバルキットのなけなしの形態燃料の缶をあけて、付属のライターで火をつける。
 火の温かみを感じて、少しだけ安心感がやってきた。
 だけど。
 全然、だめだ。
 このままじゃ凍傷になっちまう。
 雪中行軍をするには、あまりにも手袋が貧弱だ。
 環境適応フィールド装置に頼りきってたARKSは猛省すべきかもしれない。
 これからは、ARKS事務局は緊急事態に備えて凍土に簡易シェルターくらい作るべきだ。
 カスみたいな航空支援やら、戦術的意味のない銃座の配置なんざヤメちまえ。

 さて、文句はこの辺にして、状況を確認だ。
 アイテムパックとのリンクはつながってる。アイテムパックに登録しておいた道具は、まあ使えるということだ。
 問題は、テレパイプが使えないということ。
 シャトルシップとリンクするシステムなのに、肝心のシャトルシップは花火となって消えた。
 自分で設定を変えられるような知性も技術もないから、あきらめる。
 飲料水と食料の点は、残念な結論しかない。
 アイテムパックにそんなもの登録する奴はいない。こういう任務でも、長年染み付いた癖ってのは抜けない。
 雪食って前進? ばかばかしい。そんなことしたら、体温が低下して早死にするだけだ。

「石器時代に戻りますか。この大宇宙航海時代に」

 アタシはぼやくだけぼやいて、洞窟の岩の質をみて、加工しやすそうなものを見繕う。
 あとは、地道に手を加えるだけだ。
 工作道具は、最新のフォトン技術満載のレイデュプル。
 このガンスラッシュを駆使して、生活に必要な石器を作るわけだ。
 一晩掛けてやってやろうじゃないの。
 日ごろから魔女っ子に野蛮人扱いされてるんだ。
 その意地、見せてやるよ。
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テーマ : PHANTASY STAR ONLINE2
ジャンル : オンラインゲーム

ファンタシースター計画23


 いつの時代もそうだけど、人類史ってのは持ってるやつが持ってないやつから奪う構造を変えていない。

「ヒマワリさん、お金返してくださいっ」

 ミカンのやつが、例のセーラー服だかを着て、アタシの部屋で借金取りになってやがる。
 どうやら、家賃の支払期限が近いらしい。そして、アタシはこの前、ミカンと飲みに行って、金を借りちまった。
 たまたまあの時、市場でいろいろ装備を買い付けていたら、金がなくなっちまってたんだ。
 それでいて、あの日は持ち合わせがないのに飲みに行っちまった。

「ああ、わりぃ。いくらだっけ?」

 すると、ミカンが領収証をずいっと差し出してきた。
 なるほど。
 博士のとこで働いてるミカンにとって、結構痛い出費だったみたいだ。

「あいよ。これでどう?」
「あ、振り込まれました。すごいですねぇ、コレだけのお金をポンって返せるなんて」

 ミカンは素直に感心してるらしい。
 さすがに飲み代を払えないARKSは仕事をしていないやつくらいだろうと、アタシは思うけど。

「ところで、パステルさんはどちらですか?」

 ミカンは魔女っ子の部屋を覗き込んで、不在を確認した。
 アタシらの借りてる部屋は、三部屋ある。
 玄関入ったら、すぐ居間兼ホームバーとなっている。バーカウンターを調達して、アタシや魔女っ子のお気に入りの酒を飾ってるわけ。
 魔女っ子のヤツは甘い梅酒だとか、果実酒を。アタシはワインとウィスキーさ。
 
 で、日当たりがよくて、ベッドと武器整備のための道具の入ったロッカーしかないほうがアタシの部屋。
 最近、近所に新しいマンションが出来て日当たりが悪くなった部屋が、魔女っ子の部屋だ。
 ヤツの部屋はよくわからん宗教上の秘密道具であふれているから、得体の知れない黒魔術的雰囲気になってる。
 そして、そこの主は本日不在だ。

「ああ、魔女っ子は教団の集会に行ってる」
「たしか、空とぶスパゲッティモンスター教団でしたっけ? 信仰のある人って、忙しいんですね」
「心の平安ってやつがあるから、いいんじゃないのか? アタシみたいに武器いじって心落ち着かせるよりも、よっぽどメンタルヘルス的にはいいだろ」

 たしかに、とミカンがうなずく。
 まぁ。ミカンのヤツも信仰を持ってないらしいから、何らかの形で心の問題を処理する方法を見つける必要があるだろう。
 
「ミカンはどうやって、心の問題を片付けてるんだ? いや、プライベートなことだから、答えなくてもいいんだけどな」
「え、あたしですか?」

 しばらく、ミカンのヤツは考え込んだ。
 そして、ポンッと手を鳴らた。

「たぶん、博士を撃つこと……」
「あ? なんだって?」
「あ、いえ、なんでもありません。たぶん、ヒマワリさんとかパステルさんと美味しいもの食べに行くことかなぁ」
「なるほどねぇ」

 確かに、旨い飯を食えりゃ、気分は最高だな。
 いや、むしろ気分がいいから飯が旨いのか? よくわかんないが。
 

 ミカンが帰った後、ビジフォンをチェックすると、ARKSの事務局から呼び出しの通知がきていた。
 緊急呼び出しってヤツではないけれども、放置しておいていい種類のもんではない。
 
(事務局の呼び出しって、大体、ろくな仕事じゃないんだよな)

 標準的な仕事なら、ARKSカウンターに掲載される。
 そこに載せられない仕事は、大体事務局呼び出しだ。
 そういう仕事が回ってくるようになったってコトは、ARKSとして口が堅く、手堅い仕事をするってコトが証明されつつある証拠でもある。
 だけど、ヘマをやらかしたらARKS生命は終わったといっていい。
 ま、普通はやらかしたら死ぬだけだけどな。

――ヒマワリ、きこえる?

 アタシの通信イヤリングに、魔女っ子からの通信が入った。耳骨を振るわせる不健康なシステムは、秘匿性が高いことからARKS標準装備になってる。

「ああ、聞こえるぜ。なんか用か?」
「事務局から呼び出しがあった」
「呼び出し部屋は?」

 魔女っ子が告げた呼び出し部屋の番号は、アタシと同室だった。
 つまり、同じ仕事を任されるってわけだ。

「オーケー、現地で落ち合おう」
「おねがいがあるの」
「あん?」
「コーヒーセット、忘れないで」

 まぁ、たぶんまた宗教的理由なんだろう。
 アタシは了解、といって通信を切った。
 そして、キッチンから魔女っ子愛用のコーヒーセットを引っ張り出して、適当な袋に入れて持っていくことにした。


 応接室に行くと、魔女っ子が妙な連中と雑談してやがった。
 ノーマルなコミュニケーションとれてるか心配になったが、心配して損した。

「――このように、惑星モトゥブの地質と、浮遊大陸の地質は土中の無機物の組成が近似していましてね」
「土中細菌や、微生物の生態は?」
「そこが微妙に違うのですよ。おそらく、保水力と何らかの関係がると私どもは考えておりまして――」

 つまり、同族同士のサイエンスとかいう共通語を用いた、コミュ力の有無に関わらず意思疎通が出来る素敵な会話をしていた。

「お久しぶりね、ご機嫌いかが?」

 アタシに話しかけてきたのは、暇そうにミルクティーを飲んでいた女キャストだった。
 そんな有機生命体の真似事して大丈夫なのか?

「ああ、確かあんた、任務達成率100%の――失礼、名前を失念した」
「アルザス=ロレーヌですわ。このたびご一緒させていただくことになりましてよ」

 ご一緒といわれても、アタシはどこに何しに行くのかすらまだ知らされていない。
 それにしても、アルザス姉さんは相変わらず、金髪のロイヤルガールだった。
 こっちが年食っていく中で、時間が止まってるみたいなのが、キャストって種族の特徴だよな。

「いや、まだ任務受け取りすら終わってないんだけど」
「あらあら。そのようなことどうでもよくてよ。どうせ拒否権はないのですから」

 済ました顔でアルザス姉さんが言った。
 一応、任務達成率100%とかいうのは驚異的だから、敬意を持って姉さんとつけておく。

「で、あの魔女っ子とサイエンス会話してる連中は?」
「あちらは、ARKSの惑星開発研究所の方々ですわ」

 なるほどね。通りでみなさん、賢そうなニューマンばっかりで構成されていらっしゃるわけだ。
 一応、ARKSってことだから、戦闘も出来るんだろう。
 ただ、どいつもこいつも体を鍛えてるってかんじじゃない。
 たぶん、フォースだろう。

――皆さん、おそろいですね。早速ブリーフィングを始めます。

 事務局のねーちゃんが、入室するや否や、さっさと議事進行を始めやがった。
 アタシは適当に壁に背を預けて、腕を組む。
 他の連中は椅子に座ったり、ソファのほうに腰掛けるとか好き勝手してる。
 ただし、全員ちゃんと情報端末は取り出して持っている。

「さて、皆さんをここに呼び立てた目的について説明いたします――
 目的は単純明快。護衛対象を一定期間護衛するだけでございます。
 問題は、その一定期間というのがこちらの都合により少々長いのです。
 通常のARKS任務での護衛はどんなに長くても1時間に限定されております。
 ですが、本件は一ヶ月間、対象を守り抜いてもらいます。しかも、惑星上で」

 アタシは端末に送られてきた資料に目を通す。
 一ヶ月の長期任務なんて初めてだ。しかも惑星上でそこまで長期間活動するとしたら、かなりのバックアップが必要になる。
 で、そのバックアップは誰がやってくれるのかな、と資料をスライドする。

 ない。

 どれだけ探っても、バックアップがどんな連中なのか分からない。

「おい、ちょっと質問させてくれ」
「どうぞ」
「アタシの見たところ、バックアップ連中が見当たらないんだが。誰がアタシらに水だの食料だのを届けるんだ?」
「兵站面については、あきらめてください」

 アタシは言ってることの意味が分からなかった。
 あきらめろ?
 補給を絶たれたら、どんな精鋭だろうが行動不能だって。
 正規軍の連中は戦闘正面部隊と支援部隊の比率は6:4もあるんだってキァハ准将も言ってたんだぜ?
 キャストでそういう比率だとしたら、有機体が活動するにはもっと支援ってのが必要なんだぞ。

「本件は、多数の組織の複雑な利害関係が絡み合っておりますので、関与者を極めて限定して行わざるを得ません」

 だからこの人数だってのか?
 そんなヤバイ仕事は、お強いことで名高い六芒均衡だかなんとかいう偉い人たちで勝手にやってくれよ。

「作戦地域は、惑星ナベリウスの『凍土』と呼ばれる地域です。あらゆる状況を考えて、こちらが選定させていただきました」

 ……限界状況じゃねぇかっ!
 極寒の地で護衛任務を一ヶ月だぁ?
 降りた方がいいってアタシの本能がビンビン警戒しろっていってるんですけど。

「これから12時間後に、ポータルから専用ドックにパスできます。出発そのものは72時間後。それまでに所要の準備を済ませ、任務を完遂できる環境を構築してください」

 今度は、アルザス姉さんが発言を求め、許可された。

「居住施設についてはどうなってますの? わたくし、雪洞で一ヶ月暮らせるほどには頑丈でなくてよ」
「その点はご心配なく。放棄された第一次殖民探査計画の宿営基地を使用します」

 おいおい。そんな古くさい施設、ちゃんと使えんのか?
 アタシは心配で仕方ないよ。

「では、護衛対象を紹介します。披検体0008です」

 映像資料は、アタシの女としての本能が激怒するものだった。

 デカイ試験管に入った、赤ん坊。
 いたいけなベイビーが、生きてるのか死んでるのか分からないまま、機械的に保存されていた。


「胸くそ悪いぜ」

 アタシはなじみのネオ・ウォルマートストアの店内で、魔女っ子にぼやいた。
 秘密保全ってのがあるから、任務内容についてはお互い語らない。
 ただ、感想を述べるだけだ。

「わたしも同感。神の差配に反する」

 ほらな。信仰もちなら、ああいうのは許せないはずなんだよ。
 でも、アルザス姉さんは顔色一つ変えず、「難しい仕事ですこと」とか言ってやがった。
 研究所の連中はいかなる機材が必要かをぶつくさ相談してたから、あいつらは人間の命なんざ研究対象としか思ってないんだろうな。

「ま、文句言っても気が楽になるわけじゃない。で、一か月分も何を買い込めばいいんだ?」
「ORACLEアーカイブに、そういうデータがあった」

 魔女っ子がちらりと、所要の装備品リストを見せてくれた。
 なるほど。人が一ヶ月凍土で暮らすには、こんなにエネルギーが必要なのか。
 普通の生活じゃ、体重が二倍になっちまうぜ。

「とりあえず、食い物と、防寒対策、サバイバルキット持って行けばいいのか?」
「あとは娯楽」
「娯楽?」
「そう。人間は本来的に娯楽を好むから」

 んなこと言われたって、アタシは趣味なんてないぞ。
 体鍛えることくらいか?

「あ、ファンタジー小説でもダウンロードしてくか」
「非生産的」

 魔女っ子がくすりとアタシの趣味を笑う。

「うるせー」

 小難しい話なんかより、断然ファンタジーだって。いちいち科学用語ならべるSFは最低だね、最低。頭が痛くなっちまう。

「わたし、ちょっとヌードル買ってくる」
「あいよ。一ヶ月間困らない量を買っとけよ」
「うん」

 魔女っ子はさっさと麺製品売り場に行っちまった。
 アタシのほうは、とりあえず緊急時の備えて、完全栄養食『カロリーメイト(豪)』を買い込んでおく。
 こいつは優れもので、一本1000キロカロリーで四本入り。
 驚異的なカロリーはダイエットの天敵だが、船団市民避難要領によると、緊急事態用に定量備蓄が推薦される代物なので、こういう大手の店には大体おいてある。
 なんだかんだでココは船の中なんだ。
 だとしたら、救命艇にのって宇宙空間をさまようハメになるときに備えて、こういうもんを備蓄しとこうって考えるのがむしろ当然と言える。
 だが、まさか任務としてコレを携帯する日が来るとは思わなかった。
 まぁ、生鮮食品やレトルトも買い込むから、これはそんなたくさんいらないか?
 適当に棚に並んでるだけ買い物かごに放り込んでおく。
 さて、あとは野菜やら肉だな。
 それに炭水化物。とりあえずこういうときは米袋を買っとけば何とかなるだろう。
 水と電気が必要だが、パンを焼くよりは効率がいい。

 とりあえず生鮮食品はカゴに入るレベルじゃなかったので、店員を呼んで自宅にトラック発注した。
 明日には届くだろう、とのこと。
 なお、魔女っ子のヌードルもトラック配送らしい。
 あとは、自宅でレンタカーのトラックに置き換えて、シャトルシップまで運べばいいか。
 トラック……あ、そうか。
 凍土で活動するなら、移動用の車両は必須だ。
 ありがたいことに本作戦予算はアタシが三回生きても使い切れない予算がついてるらしいから、好きなだけ買い込ませてもらう。
 明日は車両調達に行こう。即日納車系のディーラーで現金一括買いってのは、一度やってみたかったことでもある。
 ついでに武器も限界までカスタマイズしておこう。ドゥドゥにいくら貢いでも、所詮はARKSの帳簿上のからくりにしか過ぎないのだから。


 アタシと魔女っ子は、輸送機に積み込まれる大量の資材を眺めながら、買いそびれたものはないかと相談していた。
 やっぱり、最高級ベッドくらい買ってもよかったのではないかなどと、くだらない話を真剣にしていた。
 一生買えなさそうなものをいろいろ買ってしまった。
 他人の金だと思うと、遠慮なく使ってしまう本性に、アタシたちは本気で戦慄したもんだ。
 ま、実務的に必要な装備は全部購入済み。
 防寒フィールドシステムも更新したから、凍土でもまぁ、今の格好で活動できるだろう。
 ただ、これが壊れるという不安をごまかすため、魔女っ子に言われるまま、古くさい古典的な防寒着も買い込んでおいた。
 その防寒着が結構めずらしいものだったので、アタシと魔女っ子はそれを着込んでいる。
 普通に着ると、結構暑い。
 魔女っ子いわく、エスキモーなる古典的民族が装備していた服らしい。

「もこもこー」
「ああ、確かにもこもこだな」

 魔女っ子がもこもこー、とかふわふわーとかいってるのを横目に、アタシは作業が滞りなく進んでいるかを見守る。

「あら、装甲車があるのに、万能モトラッドも載せるの?」

 積み込みの荷物を確認していたベテラン、アルザス姉さんが一仕事終えて話しかけてきた。

「偵察とかに使えるから、便利じゃん」

 そうアタシは答えておく。本当は趣味と実益を兼ねました。

「そういうものですの? わたくし、二輪には詳しくなくて」
「ま、そういうもんってことで」

 任務終了後には、報酬代わりに頂きたいという腹積もりもある。
 アタシって結構、物欲の塊だと、分かった。

「研究所のチームも別機に資材を搬入中。あと一時間もすれば出発できてよ」
「ところで、この作戦のリーダーって誰なんだ?」
「資料をご覧になりましたの? わたくしですわ」

 アタシはあわてて資料を確認する。
 たしかに、リーダーはアルザス姉さんになってた。なお、副リーダーは研究チームの兄ちゃんらしい。
 おかげで、意味不明な責任を背負わされずに済む。

「あら、積み込みは終わったみたいね」

 全自動搬入機たちは、勝手に次の仕事に向かって移動していた。
 例の、赤箱、緑箱なんかに荷物を入れて、ICタグを貼っとけば、資材なんて勝手に搬入される。
 オートメーションここに極まれりってやつだな。

「いよいよですわね。準備は万全。これで失敗したら恥ですわ」

 おっしゃるとおりで。
 コレで失敗したら、アタシがせっかく買った万能モトラッドを手に入れるチャンスを逃しちまうじゃねぇか。

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YABUSAME

Author:YABUSAME
PSO2をプレイして、結構たちましたねぇ。
SEGAさんの公式サポーターになって随分たちました。

さて、ここにはテキストコンテンツしかありません。
華やかな画像やSS、イラストとは無縁ですのでご了承ください。
ななめ読みとかして楽しんで頂ければと思います。





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